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GemMed塾 DPC特定病院群への昇格・維持のために今やるべきこと

経産省検討会が、地域特性に着目した医療提供体制再編構想を提言―【連載】医療提供体制の再編はどう進むのか(1)

2015.4.17.(金)

 地域医療構想(ビジョン)の策定ガイドラインが固まり、構想策定に向けた検討が都道府県で進められています。メディ・ウォッチでは、病床機能報告制度から地域医療構想策定に至るまで医療提供体制再編の流れを振り返っていきます。

 今回は、医療提供体制再編の流れを概観するとともに、経済産業省の検討会報告書に盛り込まれた地域ごとの医療提供体制の在り方を見てみましょう。次回以降、地域医療構想策定ガイドラインの内容などをより詳しく見ていきます。

「急性期病床群」構想から病床機能報告制度へ

 今回の医療提供体制再編の動きは、2011年11月に社会保障審議会の医療部会で「急性期病床群」という考え方が浮上した所にさかのぼれます。これは、医療法の一般病床の中に「主に急性期医療を担うベッド」を都道府県が「急性期病床群」として認定するというものです。1992年の医療法改正で、当時の「その他病床」の中に「療養型病床群」が位置付けられ、現在の「療養病床」へとつながってきたことをほうふつとさせるものでした。

 具体的には、「状態が不安定」かつ「医学的管理や処置などの治療を日常的に必要とする」患者に対し、「比較的高い診療密度を要する医療」を提供する病床を「急性期病床群」として認定する仕組みが検討されました。

 しかし、医療部会では「病院の機能は急性期だけではない」「急性期病床群でないベッドでは急性期医療を提供できないのか」「国や都道府県が病院の機能を認定するのは、医療機関の自主性を阻害する」といった批判が強く、厚労省は「急性期病床群」構想を断念。別途、医療機関が自ら病床の機能を報告する仕組みとして「病床機能報告制度」が創設されました。

病床機能報告と構想のギャップを埋める

 病床機能報告制度の創設に向けた検討の過程では、「機能をどう設定するか」が中心課題となりましたが、紆余曲折を経て、(1)高度急性期(2)急性期(3)回復期(4)慢性期―の4機能に落ち着きました。今後、医療機能ごとの「定量的な基準」設定に向けた具体的な議論が厚労省の検討会で行われます。

病床機能報告制度では、自院の病棟が(1)高度急性期(2)急性期(3)回復期(4)慢性期―のいずれに該当するかを選択して報告する

病床機能報告制度では、自院の病棟が(1)高度急性期(2)急性期(3)回復期(4)慢性期―のいずれに該当するかを選択して報告する

 一般病床・療養病床を持つ病院・有床診療所は、病棟ごとに4機能のいずれかを選択し、都道府県へ毎年報告します。具体的な報告事項は次の通りです。

▽現在の機能(7月1日現在)

▽6年後の機能の予定

▽2025年時点の機能の予定(任意で報告)

▽構造設備・人員配置

▽医療の内容

 病床機能報告制度と地域医療構想との関係については、厚労省は下の図のように説明しています。毎年報告される病床機能情報と、地域医療構想との差異を「協議の場」(地域医療構想調整会議)を通じて埋めていくイメージです。地域医療構想については次回以降、詳しく見ていきます。

病床機能報告制度と地域医療構想(ビジョン)との関係

病床機能報告制度と地域医療構想(ビジョン)との関係

経産省検討会は、二次医療圏の特性に応じた提言

 医療提供体制の状況は地域によって大きく異なります。例えば東京では、急性期医療は充実していますが、慢性期のベッドは圧倒的に不足しています。また、北海道では住民が広範囲に分散して居住しており、長崎県では離島が多く、都市部と同じように医療提供体制を考えることはできません。

 経済産業省では「将来の地域医療における保険者と企業のあり方に関する研究会」を設置し、医療提供体制と地理的な特性を踏まえた上で、地域の医療提供体制を再構築していくべきだとの報告書をまとめました。

 そこでは、入院医療の需要の伸び方に着目して、二次医療圏を次の4タイプに分類。タイプごとに医療提供体制の再構築に向けた考え方を示しています。

(1)タイプI:10-40年にかけて目標とする病床水準を上回る(北海道・渡島など79医療圏)

(2)タイプII:タイプIに分類されず、40年までに入院医療需要のピークを迎える(千葉・香取海匝など117医療圏)

(3)タイプIII:タイプIに分類されず、40年まで入院医療の需要が伸び続け、高度急性期・急性期の病床への需要が40年以前にピークを迎える(千葉・君津など89医療圏)

(4)タイプIV:タイプIに分類されず、40年までに入院医療需要が伸び続け、高度急性期・急性期の病床への需要が40年まで伸び続ける(東京・医中央部など52医療圏)

経済産業省の報告書では、「将来の入院医療需要」と「既存病床数」を勘案し、二次医療圏を4つのタイプに分類する

経済産業省の報告書では、「将来の入院医療需要」と「既存病床数」を勘案し、二次医療圏を4つのタイプに分類する

タイプIVに分類される二次医療圏では、2040年以降も入院医療需要が増加し続けると予想される

タイプIVに分類される二次医療圏では、2040年以降も入院医療需要が増加し続けると予想される

都市部ではタイプIVの二次医療圏が多く、北海道や四国・九州では、すでにあるいは近く「病床が過剰」となるタイプIやIIの二次医療圏が多い

都市部ではタイプIVの二次医療圏が多く、北海道や四国・九州では、すでにあるいは近く「病床が過剰」となるタイプIやIIの二次医療圏が多い

 タイプIの医療圏では、何よりも「病床数の削減」を検討する必要があります。そのため、地域医療構想において「現在より少ない目標の病床数」を定めるべきだと報告書は提言しています。

 また、タイプIIの医療圏では、高度急性期・急性期病床を回復期・慢性期へ転換することを検討すべきです。そこで報告書は「地域医療介護総合確保基金の交付要件に、病床数の低減や介護施設などへの転換を盛り込む」ことを提言しています。

 タイプIIIの医療圏でも将来、高度急性期・急性期の医療需要が減少するので、その時点に向けて回復期・慢性期への転換を検討する必要がありますが、報告書は「その前に、入院受療率の低減を通じて、医療需要を適正化する必要がある」と指摘しています。

 一方、タイプIVの医療圏では、医療需要が増加し続けるために、まず「入院受療率の低減」に向けて保健事業を推進することなどが必要と報告書は強調しています。

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