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ケアマネ事業所の減少続き「ケアマネの処遇改善」求める声多数、処遇改善加算の要件弾力化の特例実施—社保審・介護給付費分科会

2024.12.24.(火)

2024年度の介護報酬改定前後の介護事業所状況を自治体にアンケート調査したところ、ケアマネ事業所(居宅介護支援事業所)が飛びぬけて減少していることが分かった。また、訪問介護事業所は、「休止・廃止」も多いが、「新設」がそれを上回り、事業所数は増加している—。

【介護職員等処遇改善加算】について、加算取得要件の弾力運用(職場環境等要件等につき『実施の制約』で良しとするほか、様式などの簡素化など)を行うことで取得促進をはかり、あわせて2024年度補正予算において「加算を取得し、さらに生産性向上・業務効率化や職場環境改善によって介護人材確保・定着の基盤を構築する事業所に対し、スタッフ1人当たり5万4000円のさらなる処遇改善が図れるような補助」を行う—。

介護報酬の「地域区分」について、2024年度の人事院勧告での「国家公務員の地域手当の見直し」を踏まえ、2027年度の次期改定に向けて、市町村の意見も勘案して見直しを検討していく—。

12月23日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、こうした報告が行われました。委員からは「何らかの手法によるケアマネジャーの処遇改善」を求める声が強く出ており、2027年度の次期改定に向けた重要検討課題の1つとなりそうです。

ケアマネ事業所の減少が著しい、ケアマネジャーの処遇改善が急務

2024年度の介護報酬改定がこの4月(2024年4月、居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハ・通所リハの4サービスは診療報酬と合わせて6月)から施行されています。

介護報酬改定では「前回改定で課題解決に向けて行った見直し(改定内容)の効果・影響はどうであったかを見極め、その結果を次期改定に活かしていく」プロセスが重視されます。2027年度の次期介護報酬改定に向けては、2024年度改定の効果・影響について、まず次の4項目の調査を行うことになっています(関連記事はこちらこちら)(2025年度、26年度にも別途調査が行われる)。
(1)高齢者施設等と医療機関の実効性のある連携体制
(2)福祉用具貸与に係る上限価格のあり方
(3)リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施および一体的取組
(4)地域の実情や事業所規模等を踏まえた効果的かつ効率的なサービス提供の在り方

このうち(4)は、介護人材確保が難しい中で、▼訪問介護の状況(とちわけ地方を中心に)▼訪問看護と他サービスとの連携状況▼ICT利活用の状況—などを詳しく調査するもので、介護事業所等に対するアンケート調査、自治体に対するアンケート調査、ヒアリング調査、介護関連データベースを用いた調査が行われています(本年(2024年)9月から調査実施)。

今般、「自治体に対するアンケート調査」の速報値がまとまり(都道府県・指定都市・中核市は100%、東京23区は73.9%、市町村は51.8%の回答)厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課の吉田慎課長から報告されました。次のような点が目を引きます。

(1)ケアマネ事業所の減少がとりわけ多く、改定前の2023年6-8月には290事業所の純減(新設274+再開19-休止240-廃止343)、改定後の2024年6-8月には283事業所の純減(新設307+再開25-休止283-廃止332)となっている

ケアマネ事業所等の事業所数増減(2024年度改定前・後)(社保審・介護給付費分科会1 241223)

ケアマネ事業所等の休止・廃止状況(2024年度改定前・後)(社保審・介護給付費分科会2 241223)



(2)訪問介護事業所は休止・廃止も多いが新設も多く、全体として事業所数は改定後も増加している(改定前の2023年6-8月には85事業所の純増(新設590+再開13-休止132-廃止386)、改定後の2024年6-8月には20事業所の純増(新設573+再開10-休止166-廃止397)

訪問介護事業所等の事業所数増減(2024年度改定前・後)(社保審・介護給付費分科会3 241223)



(3)訪問介護事業所廃止・休止の理由としては、「人員不足」が最も大きい

介護事業所の休止・廃止理由(社保審・介護給付費分科会4 241223)



(4)第8期介護保険事業支援計画(都道府県)・介護保険事業計画(市町村)に対する介護人材の充足状況を見ると、「あまり確保できなかった」「確保できなかった」が多い

介護スタッフの確保状況(社保審・介護給付費分科会5 241223)



まず(1)の「ケアマネ事業所が急減している」状況に多くの委員が衝撃を受け、▼ケアマネ不足の実態がデータにも現れてきている。ケアマネジャーと介護職員との給与逆転も生じており、人材確保・定着支援の総合対策をとってほしい(濵田和則委員:日本介護支援専門員協会副会長)▼ケアマネジャーの処遇改善が急務である(田中志子委員:日本慢性期医療協会常任理事)▼ケアマネ事業所は処遇改善加算の対象となっておらず、他サービスのとのバランスが悪い。喫緊の課題として対応を検討しなければならない(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)▼ケアマネジメントは介護保険利用の入り口とも言え、事業所減少は大問題である。早急に「ケアマネジャーの処遇改善」を考えないといけない(東憲太郎委員:全国老人保健施設協会会長)▼ケアマネジャーは業務量が膨大でありICT活用等による効率化を進める必要がある(奥塚正典委員:大分県国民健康保険団体連合会副理事長、中津市長)—などの声が出ています。

「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」でも「ケアマネジャーの人材確保・定着を図るために、何よりも『処遇改善』を優先検討・実施する必要がある」旨の提言を行っており、2027年度の次期介護報酬改定に向けて「ケアマネジャーの処遇改善」が重要検討課題の1つになってきそうです。



また(2)を見ると、心配された「訪問看護事業所の激減」は生じていないようにも思えますが、及川ゆりこ委員(日本介護福祉士会会長)や小林司委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)らは「通常の訪問介護事業所が新設されているのか、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などに併設の事業所が新設されているのか、状況を詳しく見ていく必要がある」と、江澤委員は「基本報酬引き下げの影響は1年後以降(2025年度以降)に生じる。今後、さらに状況を注視していく必要がある」と指摘しています。サ高住併設の事業所ばかりとなれば、自宅等でのサービス確保が困難になるため、こうした点の把握・分析も重要です。

このほか、▼介護事業所でのハラスメント対策マニュアル作成を進め、人間関係による離職防止に努めるべき(小林委員)▼自治体による人材確保支援策(教育研修、補助金など)の活用状況を見ていくべき。事業所が自前でできる対策には限りがある(田母神裕美委員:日本看護協会常任理事)▼高齢者増の状況などは都市部と地方では異なる点などに留意して対策をとる必要がある(奥塚委員)▼サ高住は一定程度質が保たれているが、未届けの有料老人ホームなどの状況を見ていく必要がある(江澤委員)—などの意見も出ており、今後の「人材確保対策」検討・実施において参考にする必要があります。

介護職員等賃金の「さらなる5万4000円アップ」を実施、加算取得要件を弾力化

介護人材の確保・定着を目指して、2011年度から「処遇改善」に向けた補助・加算付与が行われています。2024年度改定で「これまでの3加算(介護職員処遇改善加算、特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算)を【介護職員等処遇改善加算】に一本化し、加算率を引き上げる」などの大きな見直しが行われました。

【新加算I】(例えば訪問介護では加算率24.5%(現在の3加算合計22.4%よりも2.1ポイントの加算率アップ)、1か月の総請求単位数に上乗せする(以下同))
→下記の(新加算II-IV)の要件に加えて、「経験技能のある介護職員を事業所内で一定割合(例えば訪問介護では介護福祉士30%以上)以上配置する」ことを求める

【新加算II】(同じく訪問介護では22.4%加算率(現在の3加算合計20.3%よりも2.1ポイントの加算率アップ))
→下記の(新加算III、IV)の要件に加えて、「改善後の賃金年額440万円以上であるスタッフが1人以上」「職場環境の更なる改善、見える化」を求める

【新加算III】(同じく訪問介護では加算率18.2%(現在の3加算合計16.1%よりも2.1ポイントの加算率アップ))
→下記の(新加算IV)の要件に加えて、「資格や勤続年数等に応じた昇給の仕組みの整備」を求める

【新加算IV】(同じく訪問介護では加算率14.5%(現在の3加算合計12.4%よりも2.1ポイントの加算率アップ))
→「新加算IVとして得た収益の2分の1(1か月の総請求単位数×6.2%)を月額賃金で配分する」「職場環境を改善する(職場環境等要件)」「賃金体系等の整備、研修の実施」などを求める

処遇改善加算見直し概要1(社保審・介護給付費分科会(3)3 240122)

処遇改善加算見直し概要2(社保審・介護給付費分科会(3)4 240122)



事業所において「加算収益を原資に、介護職員等の賃金を改善する(引き上げる)」ことになりますが、依然として全産業平均と介護職員との給与差があり、厚労省は2024年度の補正予算に次のような「さらなる賃上げ支援」事業(介護人材確保・職場環境改善等事業)を盛り込んでいます。

▽【介護職員等処遇改善加算】を取得している事業所のうち、生産性を向上し、更なる業務効率化や職場環境の改善を図り、介護人材確保・定着の基盤を構築する事業所に対し、所要の額を補助する(積算上、介護職員等1人当たり「5万4000円の賃上げ」を見込んでいる)

▽介護事業所において、介護職員等が、更なる生産性向上・職場環境改善のため、自身の業務を洗い出し、その改善方策にも関与できる形とする等のための基盤構築を図る。補助は職場環境改善等の経費に充てるほか、介護職員等の人件費に充てることを可能とする

2024年度厚労省補正予算案4

介護職員と全産業平均との賃金比較(社保審・介護給付費分科会7 241223)



ところで、補助は上記のとおり「【介護職員等処遇改善加算】を取得している」事業所が対象となります。しかし、新加算の取得状況は必ずしも十分とは言えず、厚労省老健局老人保健課の堀裕行課長は、次のような「弾力運用」を行う考えも報告しています(要件弾力化は来年(2025年)2月の申請受け付けから適用する)。

介護職員等処遇改善加算の取得状況(社保審・介護給付費分科会8 241223)



(1)2025年度から新たに「職場環境等要件(職場環境改善)」が適用され、加算1・2では「6区分から2つ以上」、加算3・4では「6区分から1つ以上」の取り組み実施が求められる
→「2025年度中に要件整備を行うと誓約する」ことで、職場環境等要件を満たすと見做す(通知改正)
→「介護人材確保・職場環境改善等事業」(上記の2024年度補正予算事業)を申請している事業所は「職場環境等要件を満たす」と見做す(通知改正)

(2)加算1・2・3で適用される「資格や勤続年数等に応じた昇給の仕組みの整備」について、2024年度には「整備すると誓約する」ことで当該要件を満たすと見做している(経過措置)
→この経過措置を延長し、2025年度にも「整備すると誓約する」ことで当該要件を満たすと見做す(通知改正)
→「賃金体系等の整備、および研修の実施等」要件も同様の取り扱いとする

(3)加算1・2では「経験・技能を有する介護職員と認められる者のうち1人は、改善後の賃金見込額が年額440万円以上とする」要件を設けている
→「加算算定見込額が少額であること、その他の理由により、当該賃金改善が困難である場合は当該要件の適用除外となる」点について周知やQ&Aによる明確化を図る

(4)加算取得申請の事務負担を以下のように軽減する
▽「要件を満たしているどうか」の確認を可能な限りチェックリスト方式とする、など申請様式を簡素化する
▽▼処遇改善加算▼介護人材確保・職場環境改善等事業(上記の2024年度補正予算メニュー)▼生産性向上推進体制加算II—の申請様式を一体化する
▽訪問介護事業所について、▼処遇改善加算▼介護人材確保・職場環境改善等事業(上記の2024年度補正予算メニュー)▼訪問介護等サービス提供体制確保支援事業—の申請様式を一体化する

処遇改善加算要件の弾力運用(社保審・介護給付費分科会6 241223)



多くの委員が、こうした弾力化を歓迎していますが、▼生産性向上・職場環境改善も非常に重要である。そうした点につながる要件設定が必要であり、「誓約」後の実行状況検証を行う必要がある。さらに処遇改善の財源をどう考えるのかも今後の重要な検討課題である(伊藤悦郎委員:健康保険組合連合会常務理事)▼職場環境等要件などは極めて重要であり、弾力化をずるずる延長してはいけない。誓約後にきちんと取り組みを実施しているのかを検証する必要がある(小林委員)▼弾力化の趣旨は理解できるが、できるだけ早期に本来要件に戻すべき(清家武彦委員:日本経済団体連合会経済政策本部長)▼補正予算の実施状況を検証し、その結果を加算要件などに反映すべきである(長内繁樹委員:全国市長会、大阪府豊中市長)▼詳細な要件等を十分に理解・咀嚼できない事業所もある点を踏まえた支援が必要であろう(小泉立志委員:全国老人福祉施設協議会副会長)—などの声が出ています。

さらに、▼処遇改善と職場環境改善は分離して考えてはどうか。処遇改善加算からは「職場環境等要件」を削除し、職場環境改善は別途の加算で評価すべき(江澤委員)▼訪問看護は加算の対象外であるが、「処遇改善」に向けた工夫を検討してほしい(田母神委員)▼ケアマネジャーの処遇改善にも工夫を検討してほしい(濵田委員)▼介護福祉士や一定経験を持つ介護スタッフについて「年収440万円」がスタンダードになるくらいでなければ人材の安定確保は困難であろう。そうした点にも留意して処遇改善を検討すべき(石田路子委員:高齢社会をよくする女性の会副理事長、名古屋学芸大学客員教授)—などの提案がなされています。2027年度の次期介護報酬改定等に向けて、やはり重要検討課題の1つとなってくるでしょう。

2024年度人事院勧告による地域手当見直し踏まえ、介護報酬の地域区分も見直し検討

また2027年度の次期介護報酬改定に向けて「地域区分の見直し」も検討されます。

介護報酬の地域区分は、地域の人件費水準を勘案するものです。例えば都市部では人件費水準が高く、「地方と同じ報酬(→給与水準)」としたのでは他産業に介護人材が流れてしまうために、地域区分により「単価を高く」しています。

地域区分の考え方(社保審・介護給付費分科会9 241223)



この地域区分は、国家公務員の地域手当などに準拠して設定されますが、本年度(2024年度)の人事院勧告を踏まえて「国家公務員の地域手当」が来年度(2025年度)から段階的に見直されます。

国家公務員の地域手当見直し概要(社保審・介護給付費分科会10 241223)



こうした点を勘案して、2027年度の次期介護報酬改定に向けて「地域区分の見直し」も検討されるのです。

この点については、▼見直しにより地域手当が下がる地域もある。介護報酬の単価も連動して下げればさらに介護人材確保が困難になる。十分な経過措置・配慮措置などを検討すべき(長内委員、小泉委員、江澤委員、田中委員)▼介護職員は公務員ではない。国家公務員の地域手当などとは切り離して考えるべきではないか(東委員)▼単価引き下げを吸収できるほどの経営的余裕はない。その分を報酬で手当てすべき(濵田委員)—などの声が出ています。



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