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GemMed塾 大学病院本院群を取り巻く現況を解説 ~昨今の特定病院群・標準病院群の経営努力とは~

【2024年度介護報酬改定3】処遇改善加算率の引き上げ等を歓迎する一方で、「訪問介護や定期巡回の基本報酬引き下げ」を懸念する声多数

2024.1.22.(月)

1月22日に開催された社会保障審議会で、2024年度介護報酬改定内容が了承されました。近々に社会保障審議会から武見敬三厚生労働大臣へ答申が行われた後、1か月程度のパブリックコメント募集を実施。その結果も踏まえて、告示公布・関連通知等発出がなされます。

●新単位数表などはこちら
●改定内容の全体像はこちら
●改定内容の概要はこちら



改定内容は膨大なため、何回かに分けて見ていきます。本稿では「介護給付費分科会での議論」に焦点を合わせます。

▽訪問看護に関する記事はこちら
▽居宅介護支援(ケアマネジメント)に関する記事はこちら

訪問介護の基本単位数引き下げに委員から異論、改定後の状況検証が重要

2024年度介護報酬改定に関し、ついに介護給付費分科会の議論が終結しました。

介護報酬改定は、昨年(2023年)12月18日に審議報告をまとめており、その後、▼人員基準等の厚生労働省令改正見直し(いわば改定第1弾)▼単位数などの告示改正見直し(いわば改定第2弾)—の2つ分けて諮問・答申が行われます(改定内容の実施・施行は両者一体に行われる)。

前者(第1弾)の「人員基準等」改正(「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の改正」)については、すでに答申が行われており、今般、後者の「告示」改正(新単位数や加算見直しなど)について諮問が行われました。

改定の柱は(1)地域包括ケアシステムの深化・推進(2)自立支援・重度化防止に向けた対応(3)良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり(4)制度の安定性・持続可能性の確保—の4本で、詳細は何回かに分けて見ていきます。



ところで、昨年(2023年)12月20日の武見敬三厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣の折衝によって、「1.59%のプラス改定を行い、このうち0.98%は「介護職員等の処遇改善」に充てられ、残り0.61%が「実質的な本体プラス」部分となる。なお、この0.61%の中で「看護職員やケアマネジャーなどの処遇改善」対応を行うなどの方針が固められ、例えば「処遇改善加算の加算率引き上げ・加算の一本化」や、多くのサービスでの「基本報酬の引き上げ」がなされています。

処遇改善加算見直し概要1(社保審・介護給付費分科会(3)3 240122)

処遇改善加算見直し概要2(社保審・介護給付費分科会(3)4 240122)



しかし、例えば訪問介護では「処遇改善加算の加算率アップ」や「歯科医療機関等との連携を評価する口腔連携強化加算(1回50単位)の新設」などが行われる一方で、例えば次のように「基本単位数の引き下げ」が行われました。

【身体介護】
▽20分未満:(現行)167単位 → (改定後)163単位(2.4%減)
▽20分以上30分未満:(現行)250単位 → (改定後)244単位(2.4%減)
▽30分以上1時間未満:(現行)396単位 → (改定後)387単位(2.3%減)
▽1時間以上1時間以上:(現行)579単位 → (改定後)566単位(2.2%減)
▽以降30分を増すごとに算定:(現行)84単位 → (改定後)82単位(2.4%減)

【生活援助】
▽20分以上45分未満:(現行)183単位 → (改定後)179単位(2.2%減)
▽45分以上:(現行)225単位 → (改定後)220単位(2.2%減)
▽身体介護に引き続き生活援助を行った場合:(現行)67単位 → (改定後)65単位(3.0%減)

【通院等乗降介助】
(現行)99単位 → (改定後)97単位(2.0%減)

訪問介護の基本報酬見直しの概要(社保審・介護給付費分科会(3)1 240122)



また定期巡回・随時対応型訪問介護看護でも、例えば次のように基本単位数の引き下げがなされています。

【定期巡回・随時対応型訪問介護看護費(I)】(1月につき)
●訪問看護サービスを行わない場合
▽要介護1:(現行)5697単位 → (改定後)5446単位(4.4%減)
▽要介護2:(現行)1万168単位 → (改定後)9720単位(4.4%減)
▽要介護3:(現行)1万6883単位 → (改定後)1万6140単位(4.4%減)
▽要介護4:(現行)2万1357単位 → (改定後)2万417単位(4.4%減)
▽要介護5:(現行)2万5829単位 → (改定後)2万4692単位(4.4%減)

●訪問看護サービスを行う場合
▽要介護1:(現行)8312単位 → (改定後)7946単位(4.4%減)
▽要介護2:(現行)1万2985単位 → (改定後)1万2413単位(4.4%減)
▽要介護3:(現行)1万9821単位 → (改定後)1万8948単位(4.4%減)
▽要介護4:(現行)2万4434単位 → (改定後)2万3358単位(4.4%減)
▽要介護5:(現行)2万9601単位 → (改定後)2万8298単位(4.4%減)

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の基本報酬見直しの概要(社保審・介護給付費分科会(3)2 240122)



こうした点について、厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課の和田幸典課長は「訪問介護に関しては、人材確保に向けて【処遇改善加算】の充実を最優先に考慮している(例えば現行の3加算の各最上位を取得すると22.4%の処遇改善加算率となるが、新加算の最上位は24.5%で、2.1ポイントの引き上げを行っている)。さらに小規模事業所においても処遇改善加算を取得できるように応援を行っていく。ほか、訪問介護事業所の経営状況などを踏まえてメリハリのある改定内容とした。個々の単位数上げ下げではなく、改定内容全体をみてほしい」旨の説明を行いましたが、石田路子委員(高齢社会をよくする女性の会理事、名古屋学芸大学客員教授)、稲葉雅之委員(民間介護事業推進委員会代表委員)、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)、及川ゆりこ委員(日本介護福祉士会会長)、鎌田松代委員(認知症の人と家族の会代表理事)、小林司委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)らは「遺憾である」と訴えています。今後、改定内容の施行状況(訪問介護サービスの動向)などを注視していく必要があるでしょう。

新設された【認知症チームケア推進加算】、研修の受講機会確保を求める声多数

ところで、2024年度介護報酬改定では「介護サービス事業所、施設における認知症対応力の向上」も重要ポイントの1つとなります。詳細は別稿で報じますが、認知症対応力向上の一環として【認知症チームケア推進加算】の新設があげられます。

(予防)認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院において、認知症の行動・心理症状(BPSD)の発現を未然に防ぐため、あるいは出現時に早期に対応するために「スタッフがチームを組んで対応する」ことを評価するもので、次のような要件設定がなされます。

▽【認知症チームケア推進加算(I)】(1か月につき150単位)
(1)事業所・施設における利用者・入所者の総数のうち、「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」の占める割合が2分の1以上
(2)「行動・心理症状の予防・出現時の早期対応に資する認知症介護の指導に係る専門的な研修」を修了している者、または「認知症介護に係る専門的な研修」および「認知症の行動・心理症状の予防等に資するケアプログラムを含んだ研修」を修了した者を1名以上配置し、かつ、複数人の介護職員からなる行動・心理症状に対応するチームを組む
(3)対象者個別に行動・心理症状の評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、行動・心理症状の予防等に資するチームケアを実施
(4)行動・心理症状の予防等に資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、行動・心理症状の有無・程度の定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直し等を実施

▽【認知症チームケア推進加算(II)】(1か月につき120単位)
▼上記(1)、(3)、(4)をクリア
▼「行動・心理症状の予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修」修了者の1名以上配置、かつ複数人の介護職員からなる認知症の行動・心理症状に対応するチームを組む

認知症チームケア推進加算の新設(社保審・介護給付費分科会(3)5 240122)



本加算創設を多くの委員が歓迎していますが、田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)や東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)、田中志子委員(日本慢性期医療協会常任理事)、江澤委員らは「対象となる研修の対象を広める、対象研修の開催頻度を高める」などの工夫を行い、より多くの介護スタッフ等が研修を受講し、加算取得につながる(結果、認知症対応力が向上する)よう要請しています。

詳細は今後示される通知やQ&Aなどで明らかにされ、和田認知症施策・地域介護推進課長は「意見踏まえて、都道府県への研修開催頻度アップなどに努める」としたうえで、「研修の質も重要である」旨を強調しています。

研修要件を厳格にしすぎれば「研修を受けられない→加算取得が適わない→認知症対応力向上が進まない」ことになりますが、一方、研修要件を緩めすぎれば「研修の質が下がる→加算を取得するが、十分に認知症対応力が向上しない」という事態も生じてしまいます。両者のバランスをとった検討が厚労省で進められます。

「要介護認定」を抜本見直しし迅速な認定を実現せよ、との要望も

このほか、▼訪問看護、居宅介護支援(ケアマネジメント)について、3年後(2028年度)の介護報酬改定に向け【処遇改善加算】の対象に加えるよう検討してほしい(濵田和則委員:日本介護支援専門員協会副会長、田母神委員)▼処遇改善加算の見直しなどについて、詳細を早期に介護事業所側の示してほしい(古谷忠之委員:全国老人福祉施設協議会参与)—といった注文がついています。

なお、東委員は介護報酬改定とは別に「現在、要介護認定の申請から判定までにかかる期間が延伸している。認定の仕組みを抜本的に見直し(1次調査におけるICT活用、審査会のオンライン実施など)を行うべき」と要請しています。申請から認定までの期間が延伸すれば、利用者が十分なサービスを得られないこととなるため、早急な実態把握と必要な対応の検討に期待が集まります。



このように若干の注文が付いたものの、介護給付費分科会では告示改正案を了承。その旨を田辺国昭分科会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)が、親会議である「社会保障審議会」に報告。社会保障審議会の遠藤久夫会長(学習院大学経済学部教授)が近々に武見厚労相に対し「諮問内容を了承する」旨の答申を行うことになります。

厚労省は、答申を踏まえて、告示改正内容についてパブリックコメントを募集(1か月程度)。その後、改正告示の公布、関連通知発出などが行われます。



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