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アルツハイマー病の治療薬開発につながる「脳の免疫細胞を捉える新しい臨床イメージング技術」開発—長寿医療研究センター

2025.1.14.(火)

「脳の免疫細胞(ミクログリア)を捉える新しい臨床イメージング技術」を開発した。アルツハイマー病の治療薬開発につながると期待される—。

国立長寿医療研究センターが1月10日に、こうした研究成果を発表しました(研究センターのサイトはこちら)。

アミロイドβ除去などに関与するミクログリアの状況を可視化する技術を開発

認知症患者数は、高齢化の進行に伴い増加していきます。2018年には500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」となり、2025年には675万人、2040年には802万人になると推計されています。このため、2019年には認知症施策推進大綱が、2023年には認知症基本法が制定(2024年1月施行)され、認知症患者の意向を十分に踏まえた総合的な対策(認知症との共生、認知症予防など)を進めることとされています。

認知症高齢者数の推移(介護保険部会3 220516)



認知症の中で最も多いのはアルツハイマー型認知症であり、発症機序や早期診断方法、予防・治療法の開発が強く求められています。

ところで、アルツハイマー型認知症の脳では「アミロイドβ」というタンパク質が異常に蓄積することが知られています。

この点、脳内には「ミクログリア」という免疫細胞があり、アミロイドβ蓄積の周囲に集まってアミロイドβを取り除く働きをしています(ほかにも、ミクログリアは脳内の異常を感知して、ウイルスや細菌から脳を守るほか、ダメージを受けた神経細胞を修復する手助けをしている)。

しかし、何らかの原因でミクログリアの機能が損なわれると、「アミロイドβの蓄積が進行してしまう」「周辺の神経細胞を傷つけてしまう」などの事態が生じてしまうことが分かってきました。そこで「ミクログリアを標的とした治療薬の開発」が望まれていますが、そのためには「ヒトの生体内でミクログリアを画像化する」ことが必要となります。

今般、研究センターはポジトロン放射断層撮影(PET)イメージング製剤である【[11C]NCGG401】を開発し、「ヒトの脳内のミクログリアのみを特定して画像化する」ことを可能としました(【[11C]NCGG401】が、ミクログリアに発現するコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)に特異的に結合することで画像化が可能となる)。

さらに、次のような有効性・安全性に関する研究結果も得られています。
▽3名の健康な男性ボランティアに対し全身PETスキャンを行ったところ、【[11C]NCGG401】投与による重大な副作用は認められず、安全であることが確認された

▽6名の健康な男性ボランティアを対象に脳PETスキャンを実施し、脳内CSF1の分布を定量化できるか評価したところ、【[11C]NCGG401】は良好な脳透過性を示し、ピーク時の脳内濃度は全身に均等に分布すると仮定した場合の3倍に達したことから、良好な画質と定量性が期待される

▽PETスキャンデータから得られた定量画像は、脳内の「既知のCSF1R分布」を反映しており、ミクログリアのイメージングとして有望であることが示された

生体内の脳の免疫細胞を捉える新しい臨床イメージング技術



研究センターでは、こうした研究結果を踏まえて、【[11C]NCGG401】を用いたPETイメージングは「アルツハイマー病におけるミクログリアが関わる病態や薬の効果を評価する」ツールとして、今後の臨床研究や創薬において重要な役割を果たすと期待を寄せています。



病院ダッシュボードχ zeroMW_GHC_logo

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