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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

424の公立病院・公的病院等の再編統合再検証、厚労省が地方に出向き趣旨等を丁寧に説明―国と地方の協議の場

2019.10.7.(月)

 424の公立病院・公的病院等について「再編統合」の再検証を要請することとしたが、医療現場や自治体、住民には衝撃が走り、混乱も見られる。そこで厚生労働省が中心となって地方に出向き、再検証に関する詳しい説明を順次行っていく―。

 10月4日に開催された「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」(以下、協議の場)において、厚生労働省はこういった考えを示しました。厚労省医政局総務課の佐々木裕介課長は「10月中にも説明会をスタートさせたい」とコメントしています。

 また厚労省医政局地域医療計画課の鈴木健彦課長は「説明会の状況を見ながら、都道府県への通知内容を考える必要がある」と述べており、424の公立病院・公的病院等に関する再検証スケジュールにも影響が出る可能性があります。

10月4日に開催された、「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」

 

公立病院・公的病院等の再検証スケジュールに影響が出る可能性も

 Gem Medでお伝えしているとおり、9月26日に開催された「地域医療構想に関するワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)において、「全国424の公立病院・公的病院等については、▼がん▼心疾患▼脳卒中▼救急、小児、周産期―医療などの診療実績が少ないことなどから、『公立・公的病院等でなければ果たせない機能を果たしているのか』について再検証を求め、必要に応じて機能分化やダウンサイジングなどを含めた再編・統合を地域で検討し、合意してもらう」方針が固められました(分析のロジックに関する記事はこちら)。

地域医療構想調整会議における議論の形骸化が指摘される中で、「議論の活性化」を目指すもので、これらの病院が「廃止」されるものでも、「機械的に機能転換やダウンサイジングを求める」ものでもありません。再検証の結果、「当該医療機関・当該地域には〇〇といった事情・特殊性があり、現在の機能を維持・継続する」という結論が出ることも十分に考えられます。

しかし、自治体には、こうしたポイントが十分に伝わっておらず、「うちの病院が廃止されてしまう」「地域の医療提供体制が崩壊してしまう。過疎地が見捨てられた」などの混乱があるようです。

そこで総務省と厚労省は10月4日に協議の場を開き、▼全国知事会社会保障常任委員会の平井伸治委員長(鳥取県知事)▼全国市長会の立谷秀清会長(福島県相馬市長)▼全国町村会の椎木巧副会長(山口県周防大島町長)―らと意見交換を行いました、

自治体サイドからは、「424病院は一律の基準で出されたが、北海道のように住民が分散している地域もあれば、都会のように集中していることころもある。高齢化の状況も地域で異なる。一律の判断は難しいのではないか」「地方議会の真っ最中で、議会も混乱している」「町村代表が参画しないワーキングで公表等が決められており、地方の意見が十分に勘案されていない」などの批判が相次ぎました。あわせて「再編統合に向けた財政支援(例えば、ダウンサイジングをしたからといって、スタッフをすぐに解雇することもできない。また廃院となれば借財のみが残ることになる)を検討してほしい」との要望も出ています。

協議の場終了後に記者団の取材に応える、▼全国知事会社会保障常任委員会の平井伸治委員長(鳥取県知事、写真中央)▼全国市長会の立谷秀清会長(福島県相馬市長、写真手前)▼全国町村会の椎木巧副会長(山口県周防大島町長、写真奥)

 
これを受け、厚生労働省の橋本岳副大臣は「今回の424病院公表の趣旨や、地域医療構想実現の必要性などについて、地方に出向き丁寧に説明していく」考えを表明。協議の場終了後の記者会見で、厚労省の佐々木医政局総務課長は「10月中にも説明会をスタートさせたい」とコメントしました。ただし、どういった形で開催するのかなどは今後、調整していくことになります。

また、厚労省ではワーキングの方針を受けて、都道府県に対し「再編統合の検証対象となる424の公立病院・公的病院等のリストを作成した。これを参照し、地域で再編統合を再検証すべき医療機関や地域に対し、検討を要請してほしい」旨の通知を発出する考えでしたが、鈴木地域医療計画課長は「説明会で地方の声に耳を傾け、どういった点を懸念しているのかなどを踏まえて通知内容も検討する必要がある」との考えを示しており、通知発出までには一定の時間がかかる見込みです。

このため、当初の「424公立病院・公的病院等における再編統合の再検証スケジュール」(現状継続の場合には来年(2020年)3月までに合意を得、再編統合については来年(2020年)9月までに少なくとも調整会議で合意を得る)にも影響が出てくる可能性があります。

  
ところで、自治体サイドも医療制度改革の必要性については認識しています。とくに自らも医師であり、医療制度・行政に造詣の深い立谷全国市長会会長は、「公立病院の中には、確かに『統廃合が必要』なところがあることも事実だ。一方で、地域で『最後の砦』となる機能を果たしている公立病院もあり、そこは十分な配慮が必要である。データをもとに機械的に再検証するのではなく、地域で丁寧に再検証論議を行うことが重要である」旨の考えを提示しました。

ワーキングでも、当初から「あくまで地域医療構想調整会議の議論の活性化を促すもの」との前提で議論が進んでおり、医療制度・行政に詳しい立谷全国市長会会長が「424の公立病院・公的病院等が機械的に統廃合の対象となる」と誤解していたはずはありません。あえて協議の場に厳しい姿勢で臨むことによって、「再検証は機械的に行うのではなく、地域医療構想調整会議で、地域の特性や事情を踏まえて丁寧に議論していく」ことを全国にアピールする狙いがあったとも考えられそうです。

 
なお「協議の場」は今回限りではありません。医療提供体制改革は▼地域医療構想の実現▼医師偏在の解消▼医師をはじめとする医療従事者の働き方改革―の3つを一体的に進めていく必要があり、そこでは「自治体」が重要な役割を果たすことが求められます。今後も継続的に「協議の場」を開き、国と自治体が同じ方向を向いて医療提供体制改革を進めていくことも確認されています。

10月4日の協議の場では、自治体サイドから「勤務医の働き方改革が求められているが、地方で医師確保が困難である。働き方改革の推進で地域医療が崩壊してしまっては本末転倒である」などの声も出ています。この点、限られた人数の医師で、医療提供量を確保するためには、単なるダウンサイジング(例えば急性期のベッドを●床減らすなど)にとどまらず、地域医療機関の「統合」や「機能分担」を進め、医療資源(医師や看護師など)を集約化することが不可欠となります。

さらに自治体サイドは「地域医療は公立病院・公的病院等だけで提供するものではない。民間病院のデータ、急性期入院医療以外のデータも示してほしい」と要望しています。

これらのデータを踏まえて、地域の関係者が膝を突き合せた本音の議論を行えば、「地域医療構想の実現」が一気に進む可能性もあります。そのためにも、今回の「協議の場」が、例えば「選挙や議会対策のために、県立病院や市町村立病院を存続させる」といった議論に終わることなく、本質を見据えた「医療提供体制改革」論議にまで進むことを期待したいところです。

 
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