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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

公立・公的病院の再検証スケジュール、今冬のコロナ状況見ながら改めて検討―地域医療構想ワーキング

2020.12.10.(木)

新興感染症により一時的に医療需要が局地的に急増するが、これは医療計画の中で対応方針を定めることとし、地域医療構想については考え方を変えずに推進していく―。

公立・公的病院等では、その機能や規模などの再検証が求められているが、そのスケジュールについては、今冬の新型コロナウイルス感染症の状況を見ながら、改めて検討する―。

12月9日に開催された「地域医療構想に関するワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)で、こういった方向が概ね固められました。

12月9日に開催された「第30回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

感染症による短期の医療需要増は医療計画で対応、地域医療構想は考え方を変えず

新型コロナウイルス感染症が依然として猛威を振るっており、医療関係者による懸命の努力が続けられています。そうした中で、現下の医療提供体制には、▼医療機関間の役割分担・連携体制の構築が不十分である▼局所的な病床数不足(感染症病床を超えて、一般病床での対応も必要となった)がある―などの課題・問題点があることが再認識されました。これを受け、2024年度からスタートする第8次医療計画の中に「新興感染症対策」を盛り込む方針が固められています(関連記事はこちら)。

他方、我が国では少子・高齢化の進行に伴って「疾病構造が中長期的に大きく変化していく」ことが分かっています。こうした状況に対応できる医療提供体制を各地域で構築するために、「地域医療構想の実現」が大きな政策課題となっています。

「新興感染症対策」と「地域医療構想の実現」とは密接に関連します。とりわけ、▼感染症に対応するためには相当数のベッドが必要になるが、これを地域医療構想の「病床必要量」に盛り込むべきか▼公立・公的病院等には再編統合を含めた「機能の再検証」が求められているが、新興感染症対策を踏まえて考え直す必要もあるのではないか―という検討テーマが浮上しています。ワーキングではこうしたテーマについて今秋から議論を重ね、今般、大きな方針を固めるに至りました(関連記事はこちらこちらこちら)。



まず、「感染拡大時の対応」と「地域医療構想」との関係を整理することが必要です。上述のように「感染症に対応するためのベッド」を地域医療構想の中で勘案しておくべきか、という論点です。

この点、小熊豊構成員(全国自治体病院協議会会長)は「地域によっては、病床必要量を見直し、新興感染症に対応するベッドを予め整備しておく必要があるのではないか」との考えを訴えています。自治体病院は、地域医療の砦として新型コロナウイルス感染症に対応する中で「局地的に医療資源が足らなくなる」ことを痛感したものです。

ただし、オールジャパンで見たときには、必ずしも新型コロナウイルス感染症により医療資源が足らなくなったわけではありません。機能分化等が進まず、また自由開業制の下で医療資源が分散してしまっていることから、自治体病院など新型コロナウイルス感染症に対応する病院に「過度に負担」がかかっているのが実際です。

このためワーキングや親組織である医療計画の見直し等に関する検討会では、「新興感染症等への対応を医療計画に位置付け、平時から、▼感染拡大時にゾーニング等の観点から活用しやすい病床▼感染症対応に転用しやすいスペースの確保―に向けた施設・設備の整備や、感染拡大時における人材確保の考え方(医療機関間の人材支援等)の共有を進めておくことで、平時の負担を最小限にしながら、有事に機動的かつ効率的に対応できる」との考えを整理しました。感染拡大時に備えて多数のベッド等を確保すれば、それは平時には「負担増」となってしまうためです。

この考えに沿って、ワーキングでは次の方針を固めました。

▼感染拡大時の短期的な医療需要には、各都道府県の「医療計画」に基づき機動的に対応する
▼地域医療構想については、その基本的な枠組み(病床の必要量の推計・考え方など)を維持し、引き続き着実な取り組みを進めていく

新型コロナウイルス感染症患者の対応体制イメージ(地域医療構想ワーキング 201105)



地域医療構想の実現に向けては、具体的に次のような取り組みが求められ、国が各種の施策で支援していくことも示されました。

【各医療機関、地域医療構想調整会議における議論】
▽公立・公的医療機関等において、具体的対応方針の再検証等を踏まえ、着実に議論・取組を実施する(後述)
▽民間医療機関においても、改めて対応方針の策定を進め地域医療構想調整会議の議論を活性化する

【国における支援】
▽地域医療構想調整会議における議論の活性化に資するデータ・知見等を提供する
▽各地の地域医療構想調整会議における議論・合意を前提として、国による助言や集中的な支援を行う「重点支援区域」を選定し、積極的に支援する(関連記事はこちらこちらこちら
▽雇用や債務承継など病床機能の再編に伴い特に困難な課題に対応するための財政支援として、2020年度に創設した「病床機能再編支援制度」について、2021年度以降、消費税財源を充当するための法改正を行い、引き続き病床機能の再編を支援する(関連記事はこちらこちら
▽各地の地域医療構想調整会議における議論・合意に基づき、医療機関の再編統合を行う場合において資産等の取得を行った際の税制の在り方について検討する

公立・公的病院等の再検証スケジュール、今冬のコロナ感染状況を見ながら検討

地域医療構想の実現に向けては、まず「公立病院、公的病院等の機能」を再検証することが求められています。

公立・公的病院等が、各地域において「急性期医療の基幹的病院」であるケースが多いこと、公立病院には多額の公費が投入され、公的病院では税制上の優遇措置がなされている(民間病院側から「同じ土俵で闘っていない」と指摘される)ことなどを踏まえ、優先的に「機能検証を行い、機能転換や規模の適正化、再編・統合などを行う」ことが求められているのです。「まず急性期医療の基軸を固め、その次に回復期や慢性期(民間病院)の機能再編を考えていく」という順序です。

この一環として、公立病院・公的病院等の一部(約440病院)については、再編・統合も含めた機能分化の再検証を行うことが求められています。」



再検証のスケジュールについては、当初「▼機能の見直しは2019年度中▼再編統合は2020年秋まで―」とされていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、いったん白紙に戻されました(関連記事はこちらこちら)。

この点、「新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中で、再検証を進めることはできない」との考え(例えば自治体病院や自治体サイド)がある一方、「地域医療構想のベースとなる人口構造・疾病構造の変化(2022年度から団塊の世代が後期高齢者になりはじめ、2025年にはすべて後期高齢者となる)は待ってくれず、再検証を安易に遅らせることはできない」という考え方(医療保険者など費用負担サイド)もあります。

どちらの意見にも頷ける部分が大きく、ワーキングでは「都道府県等とも協議を行い、この冬の感染状況を見ながら、改めて具体的な工程の設定について検討する」との折衷案をまとめることになりました。

ただし幸野庄司構成員(健康保険組合連合会理事)は「来年(2021年)の骨太方針2021までに工程を示す」などの明確化を行ってはどうかと提案。これを否定する意見は出ていませんが、伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長代行)は「少し細かめのスケジュールを示すことを否定しないが、それに縛られないようにしなければならない」と牽制しています。

現下のいわゆる「第3波」がどう動くのか(一度収まるのか、さらに進むのか)も見えず、その後の状況はさらに読めません。現時点で、細かなスケジュールを立てることは極めて困難で、また仮に立てたとしても意味のないものとなってしまう点に留意する必要があるでしょう。スケジュールは「立てればよい」というものではなく、「実行」しなければ意味がないからです。

ポスト地域医療構想などをどう考えていくか

地域医療構想は「2025年度」をゴールに据えています。上述のとおり、いわゆる団塊の世代が2025年度にはすべて後期高齢者となり、医療需要が急速に増加するとともに、疾病構造が大きく変化していくことから、これに適切に対応できる地域医療提供体制を構築しておく必要があるためです(2025年度に地域医療構想が完了していなければならない)。

この点、▼2025年度以降は、高齢者の数は大きく増えないが、支え手となる現役世代が急速に減少していく(ポスト地域医療構想の必要性)▼公立・公的病院等の再検証について「人口100万人以上の地域」における考え方が整理されていない(宿題が残っている)―という課題にも対処する必要があります。

前者は、端的に「医療従事者が足らなくなる」ことを意味します。より効率的な医療提供体制をどう構築していくかを、医療従事者の働き方改革という点も踏まえて考えていく必要があります。

また後者は「大都市と地方では公立病院・公的病院の在り方が異なる」ため、「人口100万人以上の地域における公立病院・公的病院等の再検証をどう進めるかは、今後検討していく」とされている点への回答が求められている点です。大都市では、医療需要も多く、また民間の大規模急性期病院もあり、上述の「約440病院の再検証」とは全く別の視点が必要になってきます(関連記事はこちらこちらこちら)。

この点について今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)は「優先順位は低い。大都市ではこれからも人口が増加し、医療需要が増えていく。地方と同じように統廃合やダウンサイジングを進めていくべきか慎重に考えなければならない。また新型コロナウイルス感染症も動いており、現時点で議論でき段階ではない」と指摘。こうした意見も踏まえながら、今後、「地域医療構想の実現に向けた取り組みをどう推進していくか」を検討していくことになります。



ワーキングの意見は親組織である医療計画の見直し等に関する検討会に報告され、「医療計画における新興感染症対策」の基本的な考え方として一本化されます。



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