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新型コロナ対策 医療崩壊の真実

2020年4月以降、看護必要度などクリアできない病院が出ているが、コロナ感染症の影響か、2020年度改定の影響か―中医協総会(2)

2021.3.11.(木)

新型コロナウイルス感染症患者の対応を行ったか否かに関わらず、昨年(2020年)4月以降、重症度、医療・看護必要度の新基準値をクリアできなくなる病院が生じた。これらの病院は、2020年度診療報酬改定前には、看護必要度の旧基準値をクリアできていた―。

地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟でも、施設基準の一部(看護必要度やリハビリテーション実績指数)をクリアできない病院が一部発生している―。

特定機能病院では、看護必要度の基準値をクリアできない病院は、調査の中では見つかっていない―。

3月10日に開催された中央社会保険医療協議会の総会と診療報酬基本問題小委員会、先立って開催された入院医療分科会(中医協の下部組織である診療報酬調査専門組織)に、こういった状況が報告されました。

これを受けて、中医協総会では「重症度、医療・看護必要度などにかかる経過措置の再延長」などを決定しています。

3月10日に開催された「令和2年度 第3回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

特定機能病院では「看護必要度クリアできない」ケースは調査の中では見つかっていない

診療報酬改定は、医療現場の実態を調査・分析した「エビデンス」をベースに実施されます。2022年度の次期診療報酬改定論議に向けて、入院医療に関しては2020年度の前回改定の影響を含めた調査が▼2020年度▼2021年度—の2度に分けて行われます。

ところで、2020年初頭から我が国でも新型コロナウイルス感染症が流行しているため、2020年度の調査では「2020年度診療報酬改定の影響」と「新型コロナウイルス感染症の影響」とを、可能な限り切り分けられるような工夫がなされています。例えば「毎月の新型コロナウイルス感染症患者受け入れ状況」や「診療制限の有無」なども調査項目に加えることで、のちに「新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた医療機関の状況」と「そうでない医療機関の状況」との比較を可能にしています(関連記事はこちらこちら)。



今般、中医協などに「調査結果の速報値」が報告されました。通常であれば「改定前年の6月頃に速報が報告され、そこで次期改定に向けて医療現場の課題などを浮き彫りする議論が始まる」ところ、今般は「2021年4月以降の医療機関支援策」を検討するために、より早期に「速報」結果が提示されたものです。したがって、速報では「新型コロナウイルス感染症が、医療機関経営にどのような影響を及ぼしているか」が主眼となっており、「2020年度改定の効果・影響」などの「2022年度診療報酬改定論議に向けた素材」とは、やや色合いが異なる点に留意が必要です。今後、調査結果を様々な角度で分析し、6月頃から「2022年度改定論議の素材」という形で改めて調査結果が提示されます。

このため、速報値は「この4月(2021年4月)以降に経過措置を延長すべきか」という議論に資するよう、(1)一般病棟入院基本料等における重症度、医療・看護必要度(2)地域包括ケア病棟・回復期リハビリ病棟における実績要件―に関する調査結果が主な内容となっています。

まず(1)の一般病棟における重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)の状況を、見てみましょう。

急性期一般入院料1(旧7対1)では、新型コロナウイルス感染症の影響が大きくなった昨年(2020年)4-6月において、コロナ感染症患者対応を行っている病院、行っていない病院のいずれでも「看護必要度の基準値(31%以上)をクリアできない」病院が出現しています。しかし、2020年度改定前の2019年4-6月には、これらの病院のほとんどは「看護必要度の基準値(30%以上)をクリアできていた」ことが分かります。「8-10月」の状況を見ても、「従前からの評価票を用いた看護必要度I」を採用する病院と「DPCのEF統合ファイルを用いた看護必要度II」を採用する病院とで分けて見ても、同様の傾向にあります。

急性期一般1における看護必要度の状況(その1)(中医協総会(2)1 210310)



また、議論のあるところですが、「コロナ感染症患者対応を行っている病院」と「そうでない病院」とで比較すると、前者のほうが「看護必要度の数値にバラつきがある」ようにも思えます(外れ値が含まれている可能性があり、バラつき度合いに違いはないのではないかと見る識者もいる)。

急性期一般1における看護必要度の状況(その2)(中医協総会(2)2 210310)



一方、急性期一般入院料4・急性期一般入院料6では「コロナ感染症患者対応を行っていない病院」のほうが、「コロナ感染症患者対応を行っている病院」よりも看護必要度の数値がバラついているようにも見えます。

急性期一般4における看護必要度の状況(中医協総会(2)3 210310)



ここから「新型コロナウイルス感染症の影響は、感染患者対応の有無にかかわらず、病院全体に及んでいる」として、別稿で述べたとおり「経過措置の再延長」などが決まりました。

しかし、「コロナ感染症患者対応を行っている」医療機関とは、今回の速報では▼新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた医療機関等▼「新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた医療機関等」に職員を派遣した医療機関等▼学校等の臨時休業に伴い、職員の勤務が困難となった保険医療機関等▼新型コロナウイルス感染症に感染し、または濃厚接触者となり出勤ができない職員が在籍する保険医療機関等―のいずれかに、調査対象期間に一度でも該当したところと定義されています。中医協や入院医療分科会では、この定義が「広範に過ぎる」とし、より細かくグルーピングすることなどが要請されています。例えば「緊急事態宣言が発せられた地域か否かでの分析」(池田俊也・入院医療分科会委員:国際医療福祉大学教授、菅原琢磨・入院医療分科会委員:法政大学経済学部 教授)、「2020年度に看護必要度をクリアできなかった病院に限定した詳細分析」(山本修一・入院医療分科会委員:千葉大学副学長)、「看護必要度のA・B・C項目のいずれをクリアできなくなったか、などの分析」(林田賢史・入院医療分科会委員:産業医科大学病院医療情報部部長)などです。

今後、厚労省で「どういった切り口での分析が可能か」も含めて検討を進め、6月頃から「2022年度の次期診療報酬改定に向けた議論」が入院医療分科会で本格的にスタートする見込みです。



なお、特定機能病院では、2020年4-6月のコロナ感染症蔓延時にも「看護必要度の基準をクリアできなかった」ところはありません。詳細が明らかになっておらず、また看護必要度の項目も見直されていますが、かえって「全体として、看護必要度の値が高いほうにシフトしている」ことが伺えます。この背景には「新型コロナウイルス感染症対応のために一部の病棟を閉鎖する。その際、退院・転院が困難な重症患者を継続入院させ、比較的軽症の患者を退院させたことから、重症度、医療・看護必要度が従前よりも上がった」ことがあると考えられます。

特定機能病院における看護必要度の状況(中医協総会(2)7 210310)



しかし、一般の病院では「新型コロナウイルス感染症に医療資源を集約化するために、予定手術等を延期し、また重症患者の入院を異なるなどし、結果、看護必要度が下がってしまった」ところもあるようです。

「看護必要度を維持・上昇できた病院」の状況と、「看護必要度が下がってしまった病院」の状況とを、可能な限り分析し、傾向などを明らかにしていくことに期待が集まります。

地ケア病棟・回リハ病棟でも、一部、施設基準クリアできないケースが出ている

次に(2)の地域包括ケア病棟・回復期リハビリ病棟の状況を眺めてみましょう。

地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料の取得病棟でも、コロナ感染症患者に対応したところで「看護必要度の基準値をクリアできない」ケースが一部出ています。地域包括ケア病棟では看護必要度の基準値が低めに設定されており、2019年4-6月には問題なくクリアできているため、「原因がどこにあるのか」を詳しく見ていく必要があります。

地ケア病棟における看護必要度の状況(その1)(中医協総会(2)4 210310)

地ケア病棟における看護必要度状況(その2)(中医協総会(2)5 210310)



また、回復期リハビリ病棟における「リハビリテーション実績指数」の状況を見ると、コロナ感染症対応のあり・なしに関わらず、2020年4-6月には「基準値をクリアできない」病院が現れています。これらの病院は、改定前の2019年には「基準値をクリアできていた」ために、今後、背景の分析が待たれます。

回復期リハビリ病棟におけるリハビリ実績指数の状況(中医協総会(2)6 210310)



なお、地域包括ケア病棟・回復期リハビリ病棟における「コロナ感染症対応あり」の定義は、上記の「一般病棟における対応」に加えて、▼新型コロナウイルス感染症患者以外の患者の受け入れ▼新型コロナウイルス感染症治療後(検査陰性)の患者(回復患者)の受け入れ―を行うところも含まれ、一般病棟よりも「さらに広範」になっています。

「コロナ感染症の影響」と「2020年度診療報酬改定の影響」とを切り分けるためには、可能な限りの細分化が必要でしょう。



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