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GemMed塾 大学病院本院群を取り巻く現況を解説 ~昨今の特定病院群・標準病院群の経営努力とは~

2022年度診療報酬改定に向け、新型コロナの影響も踏まえた「入院医療」の調査内容固まる—入院医療分科会

2020.10.22.(木)

「2020年度の前回診療報酬改定によって入院医療の現場はどのように変化しているのか」を、「新型コロナウイルス感染症の影響」と可能な限り分離して調査する—。

こうした方針に立った入院医療に関する調査内容が、10月22日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(中央社会保険医療協議会の下部組織、以下「入院医療分科会」)で概ね固められました。

委員の意見を踏まえて若干の修正を検討し、親組織である中医協の了承を経て、11月から調査を開始。調査結果は順次報告されていく見込みで、早ければ1月にも一部が報告される可能性があります。

10月22日に開催された、「令和2年度 第2回 入院医療等の調査・評価分科会」

新型コロナによる「診療内容、医療提供体制の変化」などを調査

診療報酬改定は、医療現場の実態を調査・分析した「エビデンス」をベースに実施されます。2022年度の次期診療報酬改定論議に向けて、入院医療に関しては2020年度の前回改定の影響を含めた調査が▼2020年度▼2021年度—の2度に分けて行うことが9月10日の入院医療分科会と9月16日の中医協で決まりました(関連記事はこちらこちら)。改定前(例えば2019年度)と改定後(2020・21年度)の状況を比較し、「2020年度改定の効果が思うように出ている(従前の課題が解決している)のか」「新たな課題が生まれていないか」などを把握したうえで、2022年度改定内容を詰めていくのです。

【2020年度調査】
(1)一般病棟入院基本料等における「重症度、医療・看護必要度」の施設基準等の見直しの影響(1)
(2)地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料の実績要件等の見直しの影響(1)
(3)療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響(1)
(4)医療資源の少ない地域における保険医療機関の実態

【2021年度調査】
(5)一般病棟入院基本料等における「重症度、医療・看護必要度」の施設基準等の見直しの影響(2)
(6)特定集中治療室管理料等の集中治療を行う入院料の見直しの影響
(7)地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料の実績要件等の見直しの影響(2)
(8)療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響(2)



ところで、猛威を振るう新型コロナウイルス感染症は、当然、医療現場に大きな影響を与えており、例えば患者数の減少や人員配置のシフト(院内、医療機関間)など、さまざまな事象が生じています。このため単純に改定前(例えば2019年度)と改定後(2020・21年度)を比較したとき、ある変化(あるいは変化のない状態)は「2020年度改定によって引き起こされたもの」なのか「新型コロナウイルス感染症によって引き起こされたもの」なのかを判別することが困難です。そこで、入院医療分科会では「できるだけ両者を判別できるような調査内容とする」ことも確認しています。

この考えに沿って、厚生労働省は具体的な調査内容案を練り、10月22日の入院医療分科会に提案しました。

●調査内容案(入院医療分科会の資料)はこちら(今後、一部修正が行われる点に留意)



まず新型コロナウイルス感染症の影響を見るために、例えば次のような調査が行われます。一部委員からは「詳細なデータを取得すべき」との意見もあったようですが、▼回答医療機関の負担を考慮しなければならない▼例えば患者数などの実数は回答医療機関の規模や地域によって大きく異なり、比較や分析が難しい—などの点を考慮し、主に「定性的な調査」(例えば定数超過入院があったのか、なかったのか、など)が行われます。もっとも毎月の患者数など、特別の集計が不要な部分については「詳しい数字」の提出を求めることになります。

▽新型コロナウイルス感染症患者(疑い患者等を含む)の受け入れ状況(入院・外来)

▽新型コロナウイルス感染症に伴う「施設基準等の臨時特例」(定数超過入院や重症度、医療・看護必要度(以下、単に「看護必要度」)の基準値非該当など)の状況(4月から10月の毎月の状況)

2020年度の入院医療に関する調査における「新型コロナ調査項目」の例(その1)(入院医療分科会2 201022)



▽看護配置の変動(外来勤務以外の看護職員の外来への配置、病棟勤務以外の看護職員の病棟への配置など)の有無

▽診療制限(入院・外来・手術、化学療法・救急など)の有無

▽今年(2020年)・昨年(2019年)の4-10月の各月の患者数(外来・初診・再診、入院、救急など)



また、入院患者の状況、ひいては▼看護必要度を満たす患者割合(重症患者割合)▼在宅復帰率▼平均在院日数▼病床利用率—なども新型コロナウイルス感染症によって大きく変化するので、そうしたデータの収集も行われます。ここでは、新型コロナウイルス感染症の影響が強かった「今年(2020年)4-6月」について、前年同期(2019年4-6月)と比べてどうであったのか、新型コロナウイルスウイルス感染症の影響が比較的小さくなった「今年(2020年)8-10月」と比べてどうであったのか、なども比較できるように調べられます。

2020年度の入院医療に関する調査における「新型コロナ調査項目」の例(その2)(入院医療分科会3 201022)



さらに、「看護必要度を満たす患者割合」については、「新型コロナウイルス感染症の影響によって増加したのか、減少したのか」「その要因は手術制限にあるのか、救急制限にあるのか、患者数減少によるものなのか」などを調べます。この点、詳細な分析を医療機関に求めることは難しいため、言わば「病院の印象」を調べるにとどまります。

看護必要度の増減とその要因について、病院側の印象を調査する(入院医療分科会4 201022)



このほか、2020年度改定で大きく見なおされた「回復期リハビリテーション病棟におけるリハビリテーション実績指数など」「地域包括ケア病棟における診療実績」などについても、新型コロナウイルス感染症の影響ができるだけ見えるような形で調査が行われ、さらに「急性期病棟で新型コロナウイルス感染症の治療を終え、回復期病棟等に転院した患者」の状況(回復患者を受け入れたのか、都道府県から受け入れの要請があったのか)なども調べられます。



調査はできるだけ詳しく行ったほうが正しい議論に結びつきやすくなりますが、詳細な調査を行ったとしても、必ずしも「新型コロナウイルス感染症による影響」なのか、それとも「2020年度改定による影響」なのかを判別することは極めて難しく、また回答医療機関の負担にも配慮しなければならず、両者のバランスをとった調査項目が盛り込まれた形と言えます。

看護必要度や入退院支援など、2020年度改定の影響・効果を調査するが・・・

また、2020年度改定の影響・効果について、上述した「看護必要度を満たす患者の割合」や「リハビリテーション実績指数」「診療実績」などのほか、▼入退院支援の状況(【入退院支援加算】【入院時支援加算】【総合機能評価加算】の届け出状況や、届け出に当たってのハードルなど)▼認知症ケア加算の取得状況(認知症ケアチームの構成、届け出に当たってのハードルなど)▼せん妄ハイリスク患者ケア加算の取得状況▼排尿自立支援加算の取得状況▼療養病棟における中心静脈栄養の状況▼地域包括ケア病棟や療養病棟におけるACPの状況—なども調べられます。

ここで留意すべきなのは、「看護必要度を満たす患者の割合」などについて「正確な数字はあまり期待できない」という点です。

従前は、9月に経過措置が切れ、11月の調査では改定後の内容に沿った調査結果が得られていましたが、2020年度改定の経過措置に関しては、新型コロナウイルス感染症が多くの医療機関に多大な影響を及ぼしていることに鑑みた「2021年3月までの延長」が行われているのです(関連記事はこちらこちらこちら)。つまり今般の調査結果は「経過措置中」のものであり、「改定前の基準に基づくもの」と「改定後の基準に基づくもの」、さらに「不正確なもの」(経過措置期間中は、看護必要度を満たす患者割合は問われないために正確な評価等を行っていない医療機関もある)が混在してしまうのです。このため、今回の調査結果から、例えば「2020年度改定を経て、急性期病院で重症患者の受け入れが進んでいる、逆に進んでいない」などの評価を行うことは極めて難しいのです。

もっとも調査を通じて、個々の医療機関が「自院の状況はどうなっているのか」を再認識することなどができる、などの面では非常に大きな意味がある点にも留意が必要です。



こうした調査について大枠は了承されましたが、委員からはいくつかの注文も付いています。

秋山智弥委員(岩手医科大学看護学部特任教授)からは「看護職が行う『患者への指導』や『患者の意思決定支援』などの実施状況を調べてほしい」との要請がなされました。こうした項目の実施状況を踏まえて「2022年度改定で、看護必要度の項目見直し論議に向かう」ことを意図した要請と思われます。

入院医療分科会の行う調査は「2022年度改定論議の素材」ともなるものですが、こうした要請を各委員が行い、それをすべて盛り込めば、調査内容・項目は膨大なものとなり、医療機関からの回答が極めて少なくなってしまいかねません(それでなくとも、2014年度改定に向けた当初の調査から「回答率の低さ」が問題視されている)。また、「前回改定の効果・影響を調べ、また医療現場の課題を抽出する」という調査目的からも少しずれる要請内容とも思われ、尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)は「検討する」と述べるにとどめています。



また、入院患者の状態を評価するために、従前から「医師による診察(処置、判断含む)の頻度」「看護師による直接の看護提供の頻度」が調査されています。この点、「医師による診察(処置、判断含む)が週に1回程度」という患者が特定機能病院にも一定程度いることが入院医療分科会や中医協で問題視されていますが、▼「診察(処置、判断含む)」の内容・定義が分かりにくい▼医師が患者の状態から、看護師に「これまでのケアを継続してください」と指示するような場合は、「医師による診察(処置、判断含む)」としてカウントしていないケースが少なくない—ことなどが背景にあると考えられています。

医師による診察の頻度、看護師による看護の頻度を調査するが・・・(入院医療分科会5 201022)



こうしたデータは誤解を生んでしまうことから、入院医療分科会では、「わずかな診察であっても診療録になんらかの記載(例えば「状態に変化なし」と1行の記載など)を行う。診療録を参照せよとの注釈を入れてはどうか」(山本修一委員:千葉大学副学長)、「診療の実際の頻度よりも、当該患者にどれほどの診療の必要性(例えば連日の診察が必要であるのか、確実の診察が必要であるのか)があるのかを見ている調査項目であることが分かるような記載としてはどうか」(池田俊也委員:国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授、井原裕宣委員:社会保険診療報酬支払基金医科専門役)などの意見が出ており、今後、尾形分科会長と厚労省とで見直し内容を詰めることで落ち着いています。

医療資源の少ない地域の医療機関、10施設程度にヒアリング調査を実施

また、今回の調査では、「医療資源の少ない地域における医療機関の実態」について、ヒアリング調査が行われる点も注目を集めます。

対象地域に所在する医療機関から10施設程度をピックアップし、そこに調査票を配付。回答内容をベースに、対象医療機関に対し「詳細なヒアリングを行う」ことで、より詳しい実態を明らかにすることが狙いです。

その中では「オンライン診療の実施状況」に関する調査項目が盛り込まれています。2020年度の診療報酬改定では、医療資源の少ない地域において「やむを得ない事情により、2次医療圏内の他医療機関の医師が初診からオンライン診療を行う場合について、オンライン診療料を算定可能とする」などの見直しが行われました。医療資源の少ない地域において、例えば「Aクリニックの医師がかかりつけの患者にオンライン診療計画を作成してオンライン診療を実施していたが、当該医師がインフルエンザに罹患して診療が行えない。しかし、患者は医師の診療を受けなければ慢性疾患の治療薬を処方してもらえないが、他に受診できる医療機関が近隣にない」ようなケースにおいて、2次医療圏内の他医療機関で例外的に「初診からのオンライン診療を可能とする」こととなっています。

一方、新型コロナウイルスへの感染を防止するために臨時特例的に「電話や情報通信機器を用いた診療」も大幅に拡大されています。

ヒアリング調査では、両者を分けた詳しい調査が実施される見込みです。

なお、回答医療機関の負担軽減、調査の精度向上を目的に「DPCデータの活用」(DPCデータを提出する医療機関では、調査項目の一部を回答不要とし、回答内容の一部(退棟患者調査)とDPCデータの突合せなど)が行われます(厚労省のサイトはこちら(入院医療分科会の資料))。

早ければ2021年1月にも調査結果の一部が報告される可能性あり

上述のように、調査内容案にはいくつかの注文こそ付いたものの、概ねで了承されています。厚労省は近く開催される中医協に諮り、そこでの了承を得たうえで、11月から調査を実施する構えです。

この点、中医協委員から「できるだけ早く調査結果を集計・分析して報告すべき」との注文がついていることを踏まえ「早ければ年明け(2021年)1月にも調査結果の一部が示される」可能性があります(順次、段階的に調査結果が報告されるイメージ)。

2020年度の入院医療に関する調査のスケジュール(入院医療分科会1 201022)

病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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中医協・基本小委、支払側が「看護必要度や地域包括ケア病棟などの厳格化」を強く要望
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救命救急1・3は救命救急2・4と患者像が全く異なる、看護必要度評価をどう考えるべきか―入院医療分科会(2)
「急性期一般2・3への移行」と「看護必要度IIの義務化」を分離して進めてはどうか―入院医療分科会(1)
【短期滞在手術等基本料3】、下肢静脈瘤手術などは外来実施が相当数を占める―入院医療分科会(4)
診療データ提出を小規模病院にも義務化し、急性期病棟にも要介護情報等提出を求めてはどうか―入院医療分科会(3)
資源投入量が少なく・在院日数も短いDPC病院、DPC制度を歪めている可能性―入院医療分科会(2)
看護必要度の「A1・B3のみ」等、急性期入院医療の評価指標として妥当か―入院医療分科会(1)
回復期リハ病棟でのFIM評価、療養病棟での中心静脈栄養実施、適切に行われているか検証を―入院医療分科会(2)
入院で実施されていない「免疫抑制剤の内服」「膀胱脱手術」など、看護必要度の評価対象から除くべきか―入院医療分科会(1)
回復期リハビリ病棟から退棟後の医療提供、どのように評価し推進すべきか―入院医療分科会(3)
地域包括ケア病棟の実績評価要件、在宅医療提供の内容に大きな偏り―入院医療分科会(2)
点数が「DPC<地域包括ケア」時点にDPC病棟からの転棟が集中、健全なのか―入院医療分科会(1)
療養病棟に入院する医療区分3の患者、退院患者の8割弱が「死亡」退院―入院医療分科会(2)
入退院支援加算1の「病棟への入退院支援スタッフ配置」要件、緩和すべきか―入院医療分科会(1)
介護医療院の整備など進め、患者・家族の「退院後の介護不安」解消を図るべき―入院医療分科会(2)
急性期一般1では小規模病院ほど認知症入院患者が多いが、看護必要度への影響は―入院医療分科会(1)
看護必要度IとIIとで重症患者割合に大きな乖離、要因を詳しく分析せよ―中医協・基本小委
自院の急性期患者の転棟先として、地域包括ケア病棟を選択することは「問題」なのか―入院医療分科会(2)
7対1から急性期2・3への移行は3%強にとどまる、看護必要度IIの採用は2割弱―入院医療分科会(1)
2020年度改定、入院医療では「救急」や「認知症対策」なども重要論点に—入院医療分科会(2)
DPC対象病院の要件を見直すべきか、入院日数やDPC病床割合などに着目して検討―入院医療分科会(1)
2018年度改定で新設された【急性期一般入院料1】を選択する理由はどこにあるのか―入院医療分科会
2020年度の次期診療報酬改定に向け、急性期一般入院料や看護必要度などを調査―入院医療分科会



2020年度に「稼働病床数を1割以上削減」した病院、国費で将来の期待利益を補助―厚労省



急性期病棟の重症患者割合、回復期リハのリハ実績、地ケアの診療実績、経過措置を2021年3月まで延長―厚労省
看護必要度IIでの評価が求められる病院、当初予定どおり「7月1日以降は看護必要度IIでの評価」を―疑義解釈30【2020年度診療報酬改定】
「看護必要度の基準値」見直しなど、経過措置を来年(2021年)3月末まで延長する予定―厚労省
新型コロナは日本全国のすべての医療機関に影響、診療報酬の算定・届け出に係る柔軟措置を充実・拡大―厚労省
新型コロナ禍で、「看護必要度の経過措置延長」「診療報酬の柔軟措置の拡大」を一律に行うべきか―中医協総会(1)