小規模な急性期一般1で認知症患者が多い背景、回復期リハの実績評価の妥当性など検討を―中医協・基本小委
2019.8.28.(水)
2020年度の次期診療報酬改定に向けて、入院医療に関する議論が中医協の下部組織で進んでいるが、秋からは、例えば「中小規模の急性期一般1において、高齢患者や認知症患者が多い背景に何があるのか」「重症度、医療・看護必要度の分野、退院できない患者割合などと地域性との関係」「回復期リハビリテーション病棟におけるリハビリテーション実績評価の妥当性(緩すぎないか)」などを検討していく必要がある―。
8月28日に開催された中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会(以下、中医協・基本小委)では、こういった意見が出されました。
入院医療の内容や地域性などを詳しく分析
入院医療に関する診療報酬改定論議は、▼まず、診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)で技術的課題などを整理する▼次いで中医協で具体的な改定内容を検討する―という2段構えで行われます。
入院医療分科会では、2020年度の診療報酬改定に向けて、膨大な調査データ(2018年度改定の効果に関する2018年度の特別調査)をもとに分析・検討を行い、これまでに、例えば次のような論点が明らかになりました(言わば第1ラウンド)(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
▽急性期一般1では「小規模な病院ほど高齢や認知症の入院患者が多い」ことから、2018年度改定における重症度、医療・看護必要度の見直し(A項目1点以上・B項目3点以上のうち、「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」のいずれかに該当すれば重症患者とする)が「重症患者割合30%以上」クリアなどにどのように影響しているのか、詳しく見ていく
▽地域包括ケア病棟における「在宅等患者の急変時の受け入れ」機能を強化するため、2018年度改定で「在宅等患者の受け入れを積極的に行う小規模病院の地域包括ケア病棟を高く評価する」ことになったが、在宅医療等の提供状況を見ると、【在宅患者訪問看護・指導料】や【開放型病院共同指導料】などは極めて低調であり、今後、要件をどのように考えるか
▽回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟を退棟した患者について、リハビリ等の医療が必要なケースがあり、実際に提供もなされている。回復期リハビリ病棟での疾患別リハビリにより患者の機能は退棟までに相当程度改善しており、退棟後も機能を維持・改善するためにどのような医療提供が必要で、これをどう評価していくべきかを検討していく
▽療養病棟に入院する患者について、3か月間で医療区分がどう変化するのかを調べると、「不変」が多いが、医療区分2や3では退棟患者に占める「死亡退院」が多く、医療区分3では、療養1・2のいずれでも7割を超えており、こうした特性をどのように評価していくかを検討する
▽病棟に「入退院支援・地域連携」業務を行うスタッフを配置することで、例えば「入退院支援業務の担当者が明確になり、地域との連携、調整がスムーズになる」「入退院支援に係る院内調整を円滑に行える」「より早期に退院支援を行う患者を病棟で抽出・関与できる」などの効果・メリットがある。ただし、そのスタッフが「専従であるか、専任であるか」などで効果の程度に明確な違いはなく、これをどう考えるか
入院医療分科会では、今後、さらに「2018年度改定の効果に関する2019年度の特別調査」データも踏まえ、入院医療の課題や評価の在り方などを探っていきますが、今般、上述したようなこれまでの検討状況について親会議である「中医協・基本小委」に詳しく報告しました。
中医協委員からは、入院医療分科会の尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)や、厚生労働省保険局医療課の森光敬子課長に対し要望等が出されています。入院医療分科会では、こうした要望も踏まえた検討を進めることになります。
急性期一般1をはじめとする急性期病棟については、上述した論点にもある「中小規模の急性期一般1において、高齢患者や認知症患者が多い背景に何があるのか」(支払側の宮近清文委員:日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)という点や、「重症度、医療・看護必要度を満たす患者の割合について、病院の規模との関係を見るべきではないか」(支払側の平川則男委員:日本労働組合総連合会総合政策局長)という点に関する指摘が出されました。
森光医療課長は「病院の規模別に、医療提供内容や患者の状態像を分析していく」考えを明らかにしています。
一方、回復期リハビリテーション病棟に関しては、上述した論点にある「退棟後のリハビリテーション提供状況を詳しく見ていく必要がある」(宮近委員)との指摘が出ています。今般の特別調査では、回復期リハビリテーション病棟を退棟した患者に対し、33%は「1週間以内にリハビリテーションを実施」していますが、12%は「実施していない」、55%は「不明」であることが分かりました。
回復期リハビリテーション病棟で、濃密なリハビリテーションを提供し、ADLが相当程度改善したとしても、退院後に十分なリハビリテーション等が受けられず、状態が悪化して転倒・骨折等をし「再び回復期リハビリテーション病棟に戻ってきてしまう」症例も決して少ないと指摘されます。
この点、長期間のフォローアップは中医協の調査では困難な部分(今回の調査では退棟から7日間の状況を回復期リハビリテーション病棟にアンケート調査している)もあり、将来、研究事業(厚生労働科学研究や関係学会の研究など)で「回復期リハビリテーション病棟を退棟してからのリハビリテーション等実施状況と予後との関係」などを詳しく見ていく必要も出てくるのかもしれません。
また支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、回復期リハビリテーション病棟の実績評価指標である「リハビリテーション実績指数」(入院から退棟までにどれだけ状態が改善したかを数値化)について、多くの回復期リハビリテーション病棟が「基準値を大きく上回っている」(言わば「余裕でクリア」している)点にも注目し、「基準値の妥当性」(緩すぎないか)を検討テーマに掲げています。2020年度の次期改定で「リハビリテーション実績に関する基準値の引き上げ」が求められる可能性があるかもしれません。
このほか、▼経過措置1(25対1看護配置)の療養病棟について、4割弱が「現状維持」と考えているが、こうした病院の特性や背景などを詳しく見ていく必要がある(宮近委員)▼「入院治療の必要性は低いが、様々な事情で入院継続している(退院できない)患者」について、地域性などを見ていく必要がある(平川委員)▼2018年度改定で導入された、DPCデータを活用する「重症度、医療・看護必要度II」について、導入が進まない理由などを見ていく必要がある(公益代表の中村洋委員:慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)―などといった指摘が出ています。
9月初めから入院医療分科会の第2ラウンド論議で、どういったデータが示され、どういった分析が行われるのか、注目が集まります。
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