「看護必要度の基準値」見直しなど、経過措置を来年(2021年)3月末まで延長する予定―厚労省
2020.9.2.(水)
本来であれば、今年(2020年)9月末で切れる予定の経過措置(▼急性期一般病棟入院料などにおける「重症度、医療・看護必要度」の施設基準▼回復期リハビリテーション病棟1・3における「リハビリテーションの効果に係る実績指数」の施設基準▼地域包括ケア病棟入院料1・3における「診療実績」に係る施設基準―)について、来年(2020年)3月末まで延長する予定である―。
厚生労働省は9月1日に事務連絡「令和2年度診療報酬改定において経過措置を設けた施設基準の取扱いについて」を示し、こうした考えを明らかにしました(厚労省のサイトはこちら)。
看護必要度の基準値、地ケア1・3の実績要件、回リハ1・3の実績指数の経過措置延長
2020年度診療報酬改定では、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)について、A・B・C各項目の見直しや、重症者(看護必要度を満たす患者)のカウント方法の見直しを行うとともに、急性期一般病棟入院料(急性期一般1-7、旧7対1・10対1)などにおける重症患者割合(看護必要度を満たす患者の割合)の基準値を、次のように見直しています(関連記事はこちら)。
▽急性期1:看護必要度I・31%、看護必要度II・29%
▽急性期2:看護必要度I・28%、看護必要度II・26%
▽急性期3:看護必要度I・25%、看護必要度II・23%
▽急性期4:看護必要度I・22%、看護必要度II・20%
▽急性期5:看護必要度I・20%、看護必要度II・18%
▽急性期6:看護必要度I・18%、看護必要度II・15%
▽看護必要度加算1:看護必要度I・22%、看護必要度II・20%
▽看護必要度加算2:看護必要度I・20%、看護必要度II・18%
▽看護必要度加算3:看護必要度I・18%、看護必要度II・15%
▽特定機能:看護必要度I・-、看護必要度II・28%
▽専門病院:看護必要度I・30%、看護必要度II・28%
▽総合入院体制加算1:看護必要度I・35%、看護必要度II・33%
▽総合入院体制加算2:看護必要度I・35%、看護必要度II・33%
▽総合入院体制加算3:看護必要度I・32%、看護必要度II・30%
▽急性期看護補助体制加算:看護必要度I・7%、看護必要度II・6%(変更なし)
▽看護職員夜間配置加算:看護必要度I・7%、看護必要度II・6%(変更なし)
▽地域包括ケア病棟入院料:看護必要度I・14%、看護必要度II・11%
もっとも、医療現場では、新評価方法や新基準値に対応するための準備期間等が必要なことから、「改定直前(2020年3月31日)に当該入院料等を届け出ていた場合には、今年(2020年)9月30日までは重症患者割合を満たすものとみなす」という経過措置が設けられています。
さらに厚労省保険局医療課の井内努課長は、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、経過措置を来年(2021年)3月末まで延長してはどうか」との提案を8月19日の中央社会保険医療協議会・総会に行っていました。限られた医療資源を、新型コロナウイルス感染症の重症患者・中等症患者などに集約化・重点化するために「予定入院・予定手術」の延期を検討することなどが求められ、重症患者の確保が困難な医療機関が生じている可能性があります。そうした医療機関では、下位の入院料等を取得することになり、「収益の悪化→医療提供体制の脆弱化→新型コロナウイルス感染症への対応力低下」が生じてしまうと考えられるのです。
この点、中医協総会において診療側委員は「医療現場の実態を踏まえた措置である」と歓迎しましたが、支払側委員は「データを踏まえて、合理的な理由がある場合に限り経過措置延長を認めるべき」と反対していました。結論は出ず、「小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)預かり」となっていましたが、個別医療機関の状況を1つ1つ確認していくことは極めて困難であること、新型コロナウイルス感染症の影響は全国の医療機関に生じていると考えられることなどを踏まえ、小塩会長が「原案どおりの経過措置延長」を決定し、今般の事務連絡発出となったものです。
具体的には、次の経過措置が来年(2021年)3月31日まで延長されます(別途、通知改正等が行われる)。
▼急性期一般病棟入院料などにおける看護必要度の基準値(上述のとおり、例えば急性期1では、看護必要度Iで31%以上、看護必要度IIで29%以上となるところ、2020年3月31日時点で当該入院料を届け出ていた場合には「基準を満たしている」と見做される、関連記事はこちら)
▼回復期リハビリテーション病棟1・3における「リハビリテーションの効果に係る実績指数」の施設基準(回復期リハ1では40以上、回復期リハ2では35以上となるところ、2021年3月31日時点で当該入院料を届け出ていた場合には「基準を満たしている」と見做される、関連記事はこちら)
▼地域包括ケア病棟入院料1・3における「診療実績」に係る施設基準(例えば自院等からの入棟患者割合が15%以上、自宅等からの緊急患者受け入れが3か月間で6人以上などとなるところ、2021年3月31日時点で当該入院料を届け出ていた場合には「基準を満たしている」と見做される、関連記事はこちら)
なお、経過措置期間中は「基準を満たしていると見做される」ので、従前の基準値(例えば急性期1では看護必要度Iで30%以上、看護必要度IIで25%)が適用されるわけではありません。極論すれば「重症患者割合がゼロ%」でも「基準を満たしている」と見做されます。もっとも、各入院料に求められる機能に鑑みれば、可能な限り多くの重症患者等の受け入れが求められます。
9月末で経過措置が切れ、10月以降の継続算定には「新たな届け出が必要な項目」がある
このほか、今般の事務連絡では「経過措置が9月30日で切れ、10月1日以降も当該点数を算定し続けるためには、必要な届け出を行わなければならない」項目についての整理も行われています。
例えば、療養病棟入院基本料では、2020年度診療報酬改定で新たに▼中心静脈注射用カテーテルに係る院内感染対策のための指針▼適切な意思決定支援に関する指針―を定めていることが求められるようになりました(施設基準、関連記事はこちら)。ただし、医療機関の準備期間を考慮し、「改定直前(2021年3月31日)に療養病棟入院基本料を届け出ていれば、これらの基準を満たす」として取り扱われています。しかし、経過措置が切れることに伴い、10月1日以降も療養病棟入院基本料を届け出る場合には、これらの点について新たな届け出を行い、地方厚生(支)局に受理されることが必要となるのです。届け出をしない場合には、点数の継続算定が認められなくなる(届け出まで特別入院基本料等を算定しなければならない)のでご留意ください。
なお、厚労省は「10月12日までに届出書が提出され、同月末までに要件審査を終え届け出の受理が行われた」場合には、10月1日に遡って点数算定が可能であることを示しています。
また、改定直前(2020年3月31日)に▼急性期一般入院料7▼地域一般入院料1▼特定機能病院入院料(7対1結核病棟、10対1一般病棟)▼専門病院(10対1)▼脳卒中ケアユニット入院医療管理料▼一般病棟看護必要度評価加算―の届け出を行っている病棟については、「今年(2020年)9月30日まで、2020年度改定『前』の看護必要度I・IIに係る評価票を用いて評価を行ってもよい」との経過措置が設けられています。
さらに、外来がん化学療法を推進するための新点数【連携充実加算】(【外来化学療法加算1】の加算)に関しては、地域の医療機関・薬局と連携して、▼自院で実施される化学療法のレジメンをホームページ等で閲覧可能とする▼自院の外来化学療法に関わる職員、地域の薬局に勤務する薬剤師等を対象とした研修会等を年1回以上実施する▼他医療機関・薬局からのレジメンに関する照会や患者の状況に関する相談・情報提供等に応じる体制を整備する―などの施設基準が設けられました(関連記事はこちら)。ただし、改定直前(2021年3月31日)に【外来化学療法加算1】を届け出ている医療機関については、上記のうち「研修会等の開催要件を満たすと見做す」との経過措置が設けられています。
これらの点数を継続算定するためには「経過措置後には、必要な取り組みをしなければならない」(急性期一般7などでは、2020年度改定後の看護必要度評価票を用いた評価を行うこと、連携充実加算を算定するには研修会等を開催すること、など)ことになります。今般の事務連絡では、こうした点についての整理も行い医療現場に注意を呼び掛けています。
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緩和ケア病棟入院料を厳格化、「緩和ケアチームによる外来・在宅医療への関与」求めてはどうか―中医協総会(1)
薬局業務の「対物」から「対人」への移行促すため、14日以内の調剤料を引き下げてはどうか―中医協総会(2)
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入院患者のポリファーマシー対策、減薬の成果だけでなく、減薬に向けた取り組みも評価してはどうか―中医協総会(1)
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