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GemMed塾 看護モニタリング

大都市に所在しながら「急性期機能が不十分」「近隣に代替病院がある」ような公立病院等は、機能再検証せよ―厚労省

2021.7.6.(火)

人口100万人以上の大都市に存在する公立・公的医療機関等でも、機能や規模が地域の医療ニーズにマッチしているかを再検証する必要がある。▼がん▼心疾患▼脳卒中▼救急▼小児▼周産期―などの急性期領域の一部で、診療実績が特に少なかったり、あるいは近隣に「代替できる病院がある」場合には、自院の機能が地域医療ニーズにマッチしているかを再確認する必要がある―。

厚生労働省は7月1日に通知「人口100万人以上の構想区域における公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証等について」を発出し、こうした点に留意するよう都道府県知事にアドヴァイスしました。

人口100万人未満の地域に所在する公立病院等とは、異なる視点での機能検証が必要

2025年度には、団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達するため、今後、急速に医療ニーズが増加していきます(新型コロナウイルス感染症の影響は甚大だが、一時的なものである)。このため従来型の医療提供体制(例えば、病院完結型の医療)では、増大し、複雑化する医療ニーズに的確かつ効率的に応えることが難しくなるため、各地域において「2025年度の医療ニーズ」を踏まえた「地域医療構想の実現」が求められています。

地域医療構想の実現に向けては、まず「地域の公立病院・公的病院等の機能改革等」を進めることが重要です。多くの地域では公立病院・公的病院等が地域の基幹的な役割を果たしているためです(基軸の在り方を明確にしなければ、全体像を描けない)。そこで、各地域医療構想調整会議(以下、調整会議)において、「地域の公立病院・公的病院等の機能改革等」(公立病院・公的病院等でなければ担えない機能への特化)に関する合意を得ることになっており、2018年度末時点で、それはほぼ完了しました。

ただし「形だけの機能改革論議や現状追認にとどまっているケースがある」とも指摘され、厚労省の地域医療構想に関するワーキンググループでは、急性期医療に関する診療実績データ(病床機能報告データ)を詳細に分析し、次のような(A)診療実績が特に少ない(B)類似の機能を持つ病院が近接している―の2指標に該当する公立・公的病院を抽出。これらの公立・公的病院について「役割は適切か」(民間で代替可能なのではないか)、「病床規模は適切か」(病床過剰なのではないか)などを再検証することを求めました(【再検証要請対象医療機関】、関連記事はこちらこちら)。

(A)診療実績が特に少ない公立・公的病院等
▼がん▼心疾患▼脳卒中▼救急▼小児▼周産期▼災害▼へき地▼研修・派遣機能―の9領域すべてで、地域における診療実績が下位3分の1の病院

(B)類似の機能を持つ病院が近接している公立・公的病院
自動車で20分以内の距離に、▼がん▼心疾患▼脳卒中▼救急▼小児▼周産期―の6領域すべてで、「診療実績が類似する病院」がある病院



このうち(B)指標については「人口100万人未満の地域医療構想区域に所在する病院」が対象となり、「人口100万人以上の地域医療構想区域に所在する病院については、別途、再検証方針等を定める」こととなっていました((A)指標については、人口100万人以上の地域医療構想区域に所在する病院も含めて、再検証対象病院を抽出している)。



この点について、2月12日の地域医療構想に関するワーキンググループでは、人口100万人以上の構想区域について、▼99%の病院で「同一構想区域内に車で20分以内の距離に別の病院が存在」し、半数の病院では「車で20分以内の距離に10施設を超える別の病院が存在」する(つまり病院が密接している)▼過半数が「2025年度まで人口増加」が続き、約3分の1が「2040年度まで人口増加」が続く(医療ニーズの動向が地域によって異なる)▼病院、しかも民間病院が多い―などの特徴があることが分かりました。人口100万人以上の構想区域について、「人口100万人未満の構想区域と同じように考えることはできない」こと、さらに「一律の基準を設けた評価も難しい」ことが判明したと言えます。

人口100万人以上の構想区域に所在する病院では、99%が「車で20分以内の圏域に他病院が存在」している(地域医療構想ワーキング(1)2 210212)

人口100万人以上の構想区域では、過半数が2025年度まで人口が増加し続ける(地域医療構想ワーキング(1)4 210212)

人口100万人以上の構想区域では、3分の1が2040年度まで人口が増加し続ける(地域医療構想ワーキング(1)5 210212)



このためワーキングでは、「何らかの基準で再検証対象病院等を抽出する」のではなく、「各地域医療構想会議において、各種のデータ(▼自院の診療実績▼周辺医療機関の診療実績▼医療需要の推移―など)を踏まえて、自らが担うべき役割・医療機能など各々の具体的対応方針の妥当性を確認し、改めて機能分化等に向けた議論をする」よう求める方針を固めました。

この方針を受け、今般、厚労省は「人口100万人以上の構想区域」に所在する公立・公的医療機関等に関しては、次のように「機能分化の再検証」を進める考えを整理したものです。

(1)上記(A)要件に該当する(9領域全てで診療実績が特に少ない)公立・公的医療機関等については、引き続き具体的対応方針の再検証を進める

(2)上記(B)要件(6領域全てで「類似かつ近接」の医療機関がある)に基づく公立・公的医療機関等の機能再検証は求めず、昨年(2020年)1月17日付の通知「公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証等について」にある「一部の領域において▼診療実績が特に少ない▼類似かつ近接—の要件に該当した公立・公的医療機関等への対応」に準じて対応することを求める

まず、上述のように上記Aには、すでに「人口100万人以上の構想区域に所在する公立・公的医療機関等」が含まれるので、9領域すべてで診療実績がとりわけ少ない公立・公的医療機関等は「すでに再検証が求められ」ており、それを継続すべし、との旨が(1)で示されています。

また、上記Bは、上述のとおり「人口100万人以上の構想区域に所在する公立・公的医療機関等」にはマッチしないことを確認((2)前段)。ただし、「一部領域で診療実績が少ない」「一部領域で代替機能を持つ病院が近隣(車で20分以内)にある」公立・公的医療機関等については、地域でデータを踏まえて「機能の見直しが必要ないかを改めて確認する」ことが求められています((2)後段)。とりわけ、すでに作成された具体的対応方針において「ベッド削減」が盛り込まれていない病院では、地域の医療ニーズに本当にマッチしているのかを確認し、必要に応じた「ベッド数削減」などを検討することが重要となります。

【参考】
「公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証等について」
(昨年(2020年)1月17日付 厚労省医政局長通知、抜粋かつGem Medで一部改変)

1.具体的対応方針の再検証等について
(4)一部の領域において「診療実績が特に少ない」又は「類似かつ近接」の要件に 該当した公立・公的医療機関等への対応
都道府県は、別途提供する「公立・公的医療機関等の診療実績データの分析結果」のうち、再検証対象医療機関でなくとも、一部の領域において「診療実績が特に少ない」または「類似かつ近接」(人口100万人以上の構想区域を除く)の要件に該当した公立・公的医療機関等の具体的対応方針について、地域医療構想調整会議において改めて議論する。この際、当該医療機関のうち、2019年3月末までに策定し合意された具体的対応方針が、第7次医療計画における役割および2017年度病床機能報告上の病床数からの変更を伴っていない医療機関等については、構想区域の他の医療機関の診療実績や医療需要の推移等を踏まえ、当該医療機関の具体的対応方針の妥当性について改めて確認するなどし、引き続き議論を進める。議論の結果、具体的対応方針の見直しが必要とされた医療機関については、見直しを行った具体的対応方針について、地域医療構想調整会議において協議の上、合意を得ること。



ところで、再検証のスケジュールについては、「新型コロナウイルス感染症への対応状況に配慮しつつ、各地域におい て地域医療構想調整会議を主催する都道府県等とも協議を行いながら、厚生労働省において改めて整理の上、示す」との考えが明示されました。現時点で「いつまでに再検証を行うこと」という期限は切られていません。まずは新型コロナウイルス感染症への対応が優先されます。

ただし、新型コロナウイルス感染症に様々な形で対応する中で、「個々の病院の機能が自ずから明確」となり、また「強固な地域医療連携体制の構築」が進んでいます(さもなくば、新型コロナウイルス感染症に十分な対応ができない)。このため、民間を含めて、ほとんどの病院で「自院は高度急性期・急性期機能を強化する必要がある」「自院で急性期機能を果たすことには限界があり、回復期・慢性期等へのシフトを考える必要がある」などの方向を実感し、何らかの形で確認されているはずです。このため、コロナ感染症が一定程度収束した暁には、各病院が認識している「機能分化・連携の強化」方向に急速に進み、新たな地域医療提供体制が構築されるのではないか、と期待する識者もおられます。





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