医師・看護師などが不足する中で働き方改革を進め、自治体病院の経営強化をどう図っていくべきか—全自病・小熊会長
2022.9.16.(金)
自治体病院(公立病院)においては、新型コロナウイルス感染症対応とともに、通常医療提供が求められているが、医師・看護師などの人材が足りておらず、確保も難しい。一方で、医療従事者の働き方改革を進め、経営強化も図らなければならず、自治体病院を取り巻く環境は厳しい。現場から寄せられている意見をもとに国へ要望を行っていく—。
全国自治体病院協議会の小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)ら執行部は9月15日の記者会見で、こういった考えを明らかにしました。
ブロック会議で現場から出された意見など踏まえ、国に要望を行っていく構え
公立病院の協議会である全国自治体病院協議会では、全国を7つのブロック(北海道、東北、関東、北陸・信越、近畿・東海、中国・四国、九州)に分けた「全国ブロック会議」を毎年開催しています。▼会長・副会長クラスによる重要施策に関する講演▼現下の地域における課題の共有と改善策の検討▼好事例の共有▼総務省や厚生労働省からの重要施策に関する説明と、当局との協議—などの取り組みを実施しています。
2022年度にもブロック協議会が行われ、望月泉副会長(岩手県・八幡平市病院事業管理者兼八幡平市立病院統括院長)からは「医師働き方改革」について、原義人副会長(青梅市病院事業管理者)からは「医療の質向上」について、松本昌美副会長(奈良県・南和広域医療企業団南奈良総合医療センター院長)からは「総合診療医」について、竹中賢治副会長(熊本県・天草市病院事業管理者)からは「新興感染症対策」について講演が行われました。
「医師働き方改革」について講演した望月副会長は、「どうしても『医師の労働時間に上限が設けられ、これまでと同じことをするには医師増やさなければならない』と考えてしまう院長もおられるが、医師の『生産性向上』に向け、医師の業務内容の整理やタスク・シフティング(医師は「医師でなければできない業務」に専念し、「医師でなくともできる業務」は他職種に移管する)を進める必要がある。また『無理だ』と考えてしまう院長もおられるが、医師働き方改革では『院長の意識改革』が最も重要である」と訴えました。
また、「感染症対策」について講演した竹中副会長は「新型コロナウイルス感染症対策の中で、医療現場には▼人手不足▼設備・物資不足—などの課題が明らかになった。医療機関等でがんばれば対応可能な部分と、どう頑張っても対応できない部分とがある。後者については制度的対応が必要となる。私見だが、『医療基本法』を制定し、新興感染症対応にかかる諸課題の解決をはかってほしいと考えている」と指摘しています。
関連して松本副会長は「通常診療を継続しながら、コロナ感染症患者にも対応しなければならず、各病院は大きな苦労をしている。病院の中には新規に発熱外来を設置する動きもあり、そうした病院への設備補助などの支援も必要であると強く感じている」との考えを示しました。
一方、原副会長は「ブロック会議での意見交換を通じて、都市部と地方部との違いを再確認できた。コロナ禍で患者数が減っており、当面は患者数の回復は見込めないと感じている。そうした中で自治体病院の経営基盤をどう強化していけばよいか、非常に難しいと感じている」とコメントしています。自治体病院は今年度・来年度(2022年度・23年度)中に「経営強化プラン」を策定することが求められていますが、現下の厳しい状況の中では「実効性のある」経営強化プラン作成が強く求められます。Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンでは「形だけではない、実効性のある経営強化プラン」作成を支援しています(関連記事はこちら)。
さらに小熊会長はブロック会議全体を通じて「地域の状況に適合した医療提供体制の構築が求められ、自治体病院も努力をしているが、人(医師・看護師・薬剤師・臨床工学技士・管理栄養士・調理員などなど)がいない。さらに『働き方改革』や『経営強化』求められており、自治体病院を巡る環境は厳しい。今後、ブロック会議で出された意見などを整理し、総務省や厚労省などに要望を行っていく」考えを示しています。
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