入院時食事療養費の大幅引き上げなければ病院の食事部門は崩壊する、2024年度での対応を要請していく—日精協・山崎会長
2023.8.24.(木)
入院時食事療養費は30年近く据え置かれたままであり、昨今の物価・光熱水費・人件費急騰の中で「給食の継続・維持」が極めて困難な状況である。このままでは病院の食事部門は崩壊してしまうため、2024年度の次期診療報酬改定で大幅な引き上げを行う必要がある—。
また、診療報酬改定は「2年に一度」行われているが、物価や光熱費などの急騰が生じた場合には柔軟に「期中改定」を行うべきである—。
日本精神科病院協会の山崎學会長が、8月23日の四病院団体協議会・総合部会後の記者会見で、こういった考えを強調しました。山崎・日精協会長は「8月25日開催予定の社会保障審議会・医療部会で、2024年度診療報酬改定基本方針論議が始まる。その席でもこういった点を訴えていく」考えを示しています。
入院時食事療養費、1994年以降実質的な据え置きで、物価等急騰に対応できない
Gem Medでも繰り返し報じているとおり、入院時食事療養費は1994年以降、実質「据え置き」となっています。一方、食事提供コストを見ると、▼食材費をはじめとする物価の高騰▼光熱水費の急騰▼人件費の高騰—による大きく膨れ上がっています。山崎・日精協会長は「30年近くも同じ値段で食事を提供しているレストランなどが巷にあるのだろうか?大幅な療養費の引き上げがなければ、病院の給食事業は崩壊してしまう。国にも『物価、光熱水費が急騰する中で、現在の食事療養費での継続は厳しい』との認識が広まってきているようだが、『いくらの引き上げを行えばよいか』という数字の議論にまでいたっていない。食事は病院経営の生命線でもあり、非常に厳しい状況であることを理解してもらう必要がある」と訴え、「医療部会で改定基本方針論議が始まるが、その席で『入院時食事療養費の大幅引き上げがどうしても必要である』と要望する」考えを示しました。
ところで、入院時の食事については、「入院中は『患者が自宅で食べる分の食費』が浮く」こと、「在宅患者、外来患者では食費への手当てがなされない」こと、「介護保険では食費への保険給付はなされない」ことなどを踏まえ、「入院における食事は完全自己負担とすべきではないか」「少なくとも普通食は完全自己負担とし、特別食には一定の保険給付を行うべきではないか」との指摘もなされます。
こうした指摘に対し山崎・日精協会長は「介護保険では、低所得者には食事負担を補填する給付(補足給付)がある」「食事の完全自己負担について国民の理解を得られるのか?医療現場が悪者にされ、混乱するだけではないか」「精神科領域では、入院患者は所得のないケースも少なくない。その場合、未払金が増えてしまう(結局、病院負担になってしまう)」との問題点をあげて反論しました。
関連して、2024年度を含めた「診療報酬改定」の在り方について山崎・日精協会長は次のような問題点・改善すべき点を掲げました。これらも「医療部会での改定基本方針論議の中で要望していく」ことになりそうです。
▽政府は「給与のベースアップ5%」を企業などに求めているが、病院にはその原資がない。スタッフ給与増のためには、大幅な診療報酬(とりわけ基本料)の引き上げが必要である
▽診療報酬は「2年に一度」見直されるが、期間中に大幅な物価高騰・エネルギー費高騰などがある場合には「期中改定」を柔軟に行うべきである(オイルショックで物価が急騰した1974年には年に2回の診療報酬改定が行われた実績がある)
▽2024年度から診療報酬改定実施が「6月1日」となるが、薬価は「4月1日」に引き下げられる。薬価引き下げは病院経営にも影響が出るため、「6月1日以降の診療報酬本体」に何らかの上乗せをすべきである
なお、四病協では、すでに加藤勝信厚生労働大臣に宛てて次のような要望を行っています(関連記事はこちら)。
(1)治療として必要な臨床栄養管理を含む病院給食制度を抜本的に改革する
(2)改革に必要な調査研究を速やかに遂行する
(3)抜本的な改革が行われるまでの間、入院中の食事療養に必要な費用について「適正な額」に改正する
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