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GemMed塾 看護モニタリング

「病院の食事療養費は30年近く据え置かれ、物価高騰に対応できず食事提供が困難になる」点を厚労相らに訴える—四病協

2023.6.22.(木)

入院時食事療養費は30年近く据え置かれたままであり、昨今の物価・光熱水費・人件費急騰の中で「給食の継続・維持」が極めて困難な状況である。現在は病院が赤字をかぶって「患者への適切な食事提供」を行っているが、このままではそれも困難になる—。

事態の打開に向けて近く加藤勝信厚生労働大臣に「食事療養費の引き上げ」などの要望書を提出するとともに、与党幹部にも働きかけを行っていく—。

6月21月に開催された四病院団体協議会の総合部会で、構成団体である日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会がこうした考えで一致したことが日病の相澤孝夫会長から明らかにされました。

6月21日の四病院団体協議会・総合部会後に記者会見に臨んだ日本病院会の相澤孝夫会長

「少子化対策財源のための医療費・介護費削減」を回避するため、政治へ働きかける

医療、とりわけ入院医療においては「食事による栄養補給」が治療の重要な1要素です。このため、医療保険からも「入院時食事療養費」が給付されますが、Gem Medでも繰り返し報じているとおり、入院時食事療養費の金額は30年近く据え置かれたままです。

一方、食事提供にかかるコストは「食材費をはじめとする諸物価の高騰」「人件費の上昇」「光熱水費の急騰」などにより上昇を続けており、病院の食事担当部門は「非常に厳しい状況」にあります(外部委託する場合でも同様)。現在は、病院が赤字をかぶりながら「患者への適切な食事提供」を維持していますが、こうした状況はのっぴきならぬところまで来ており、このままでは適切な食事提供が困難になる(結果、入院医療提供に大きな支障が出てくる)と四病協総合部会は危惧。

このため、近く加藤厚労相に宛てて「入退院支援食事療養費の引き上げ」など、適切な食事提供を可能とするための対応に向けた要望書を提出することになりました。



もっとも、こうした状況は今に始まったわけではなく、例えば2018年度の診療報酬改定に向けた中央社会保険医療協議会論議の中でも「病院の給食部門の収支は大幅に悪化している」ことが確認されています。もちろん病院団体も手をこまねいているわけではなく、診療報酬改定はもちろん、都度都度に「入院時食事療養費のコスト増に見合った引き上げ」に関する要望を幾度となく行ってきています(関連記事はこちらこちらこちら)が、実現はなされていません。

こうした点を踏まえて相澤・日病会長は「これまでと同じ行動ではらちが明かない。厚労相にとどまらず、例えば与党幹部などにも積極的に働きかけていく必要がある」と強調しています。

あわせて相澤・日病会長は「病院の給食部門の実態について詳細な調査を行い、その結果も示しながら、根拠に基づく要望を行っていく必要もある」との考えも示しています。

政府は、従前より「入院時食事療養費の引き上げには患者負担増が伴い、そこへの理解を得ることが難しい」「入院時食事療養費は、原則としてほぼすべての患者を対象としており、わずかな額の引き上げをするにも、莫大な財源が必要となる」ことなどから、引き上げには二の足を踏んでいます。今後の動きに要注目ですが、識者の中には「食事は入院の有無にかかわらずとるのだから、特別食を除いて『保険外にする』(食事費用は全額患者負担とする)ことも真剣に考える時期に来ている」と指摘する向きも少なくない点にも留意する必要があるでしょう。



なお、四病協総合部会では「沖縄県で再び新型コロナウイルス感染症患者が急増し、入院医療が逼迫しているとの情報が入った。これまでも『沖縄県で大流行→他地域に拡大』という流れがあり、今後の動きをしっかりと見ていく必要がある」点を確認。相澤・日病会長は「コロナ感染症が5類に移行した後、国民の間で以前のような感染対策・防御対策が取られていない」点が流行の一要因になっているのではないかと見ています。



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