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控除対象外消費税の抜本改革を改めて要請、物価・光熱費等の急騰踏まえ「入院時食事療養費」の引き上げが必要—四病協

2023.7.27.(木)

来年度(2024年度)の税制改正に向けて「控除対象外消費税問題の抜本的解消」などを求める—。

7月26月に開催された四病院団体協議会の総合部会で、こうした税制改正要望内容が固められたことが日本病院会の相澤孝夫会長から明らかにされました。8月中旬にも加藤勝信厚生労働大臣に提出されます。

4月26日の四病院団体協議会・総合部会終了後の記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長

控除対象外消費税の抜本的改革が必要、2024年度の税制改正に向け改めて要望

日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会(四病協)では、毎年、次年の税制改正に向けた要望を行っています(2023年度の要望内容に関する記事はこちら)。

7月26日の総合部会(各団体の会長・副会長など幹部による意思決定会合)では、来年度(2024年度)の税制改正に向けた要望内容が固められました。詳細は8月中旬の加藤厚労相への提出を待って明らかにされますが、相澤日病会長は「改めて控除対象外消費税問題の解消を求めていく」ことなどを紹介しています。



消費税は「最終消費者が負担する」ことが原則です。一般の商取引では、小売業者は卸業者等に消費税を支払いますが、その分は小売価格に上乗せされ、結果、最終消費者が消費税を負担しています。

通常の消費取り引きでは、小売業者は製造業者に消費税分(80円)を支払うが、消費者から消費税(240円)を受け取り、製造業者へ支払った分は「仕入税額控除」が受けられるため、いわゆる損税は発生しない。



医療機関等が物品を購入した際にも、当然「消費税」を負担します。ただし、保険医療については「消費税は非課税」となっているため、医療機関等が納入業者から物品等を購入する際に支払った消費税は、患者や保険者に転嫁できず、中間消費者である医療機関等が最終負担をしているのです(いわゆる「控除対象外消費税」)。

社会保険診療報酬については消費税が非課税となっており、患者や保険者は消費税を医療機関に支払わない。このため医療機関が卸に納めた消費税(80円)について「仕入税額向上」も受けられず、医療機関が負担することになり、いわゆる「損税」が発生する。



消費税率が上がれば医療機関等の消費税負担も増加することから、1989年の消費税導入時より「医療機関の負担を特別の診療報酬プラス改定で補填する」こととなっており、▼1989年度(3%の消費税導入)▼1997年度の税率引き上げ(3%→5%)▼2014年度の税率引き上げ(5%→8%)▼2019年10月の税率引き上げ(8%→10%)―に、それぞれ特別のプラス改定が行われています【消費税対応改定】。

しかし、医療機関によって「物品の購入状況」「患者の状況、診療報酬の算定状況」などは千差万別であることから、「医療機関が負担する消費税」と「診療報酬による補填」とがすべての場面で完全に一致する(消費税負担が過不足なく診療報酬で補填される)状況にはありません。

2021年12月2日に開かれた中央社会保険医療協議会・消費税分科会では、次のような消費税補填状況確認調査の結果が報告され、やはり「補填状況にバラつきがある」(補填不足の医療機関もあれば、過重補填の医療機関もある)ことが判明しています(関連記事はこちら)。

▽病院、一般診療所、歯科診療所、保険薬局ごとの施設数による加重平均により全体の補填率を算出すると103.9%(診療報酬による補填が、消費税の負担増を3.9%上回っている)
▼病院全体で見ると補填率は110.1%(補填が10%程度上回っている)
▼一般診療所全体で見る補填率は87.0%(13パーセントの補填不足が生じている)
▼歯科診療所全体で見ると補填率は103.4%(補填が3.4%上回っている)
▼保険薬局全体で見ると補填率は112.7%(補填が12.7%上回っている)

病院、クリニック、歯科診療所、薬局別の補填状況(消費税分科会1 211202)



▽一般病院では110.7%、精神科病院では104.4%、特定機能病院では110.0%、こども病院では106.8%

病院種類別の補填状況(消費税分科会2 211202)



▽一般病棟入院基本料届け出病院では107.1%、療養病棟入院基本料届け出病棟では122.2%、精神病棟入院基本料届け出病棟では95.9%、障害者施設等入院基本料届け出病院では125.6%

入院基本料別の一般病院補填状況(消費税分科会3 211202)



▽医療法人病院では117.4%、国立病院では109.6%、公立病院では88.1%

開設者別の一般病院補填状況(消費税分科会4 211202)



▽急性期一般1病院では105.2%、急性期一般2-7病院では113.0%、地域一般1・2病院では112.6%、地域一般3病院では91.0%

看護配置別の一般病院補填状況(消費税分科会5 211202)



▽コロナ重点医療機関では100.2%、コロナ協力医療機関では122.3%、コロナ受入病床割当病院では116.4%、その他の病院では116.2%

コロナ対応別の一般病院補填状況(消費税分科会6 211202)



中医協の支払側委員からは「診療報酬での対応(基本診療料である初・再診料や入院料を中心に上乗せが行われる)では一定の過不足が出ることはやむを得ない。割り切るよりない」との考えを示していますが、補填不足となる医療機関にとっては非常に酷なコメントです(関連記事はこちら)。

そこで四病協では、かねてから「診療報酬プラス改定では控除対象外消費税の補填の過不足が解消できないため、保険診療にも消費税を課税する」よう求めるものです。日本医師会は「診療報酬での対応の精緻化により控除対象外消費税問題は解消した」との立場をとっていますが、病院、とりわけ急性期の大規模病院では「物品購入に伴って生じる消費税負担が大きい」点を踏まえ「抜本的な対応を行う」必要性を強く訴えています。

なお、昨年(2022年)10月からの「診療報酬による看護職員処遇改善」では、「個別医療機関の実態」にマッチするよう165種類の診療報酬点数(看護職員処遇改善評価料)を設置することになりました(関連記事はこちら)。この考えを「消費税対応」にも当てはめれば、「診療報酬によっても過不足のない消費税対応を行う」ことが可能であり、今後の中央社会保険医療協議会論議などにも注目する必要があります。



また、税制改正要望に関する四病協論議の中では「本年(2023年)9月以降のコロナ感染症対応」にも注目が集まっています。相澤日病会長は「夏に入り、再びコロナ感染症患者が増加しており、医療現場の負担が増してきている。本年(2023年)9月以降のコロナ対応措置(診療報酬特例、補助金、税制措置など)は不透明であるが、打ち切りで医療機関が乗りこれるのか不安である」との考えを示しています。

入院における食事は治療の一環、入院時食事療養費の適切な引き上げを

また全日本病院協会の猪口雄二会長は、7月12日に加藤厚労相に宛てて提出した「入院中の食事療養に関する要望書」を紹介しています(関連記事はこちら)。

入院時食事療養費については1994年以降、実質「据え置き」となっていますが、食材費をはじめとする物価、光熱水費、人件費が増加を続け、さらに昨今の「急騰」を受けて、相澤日病会長は「病院は食事療養費倒産の危機にある」と危機感を募らせています。

そこで四病協では、(1)治療として必要な臨床栄養管理を含む病院給食制度を抜本的に改革する(2)改革に必要な調査研究を速やかに遂行する(3)抜本的な改革が行われるまでの間、入院中の食事療養に必要な費用について「適正な額」に改正する—という3点を加藤厚労相に強く要望。並行して与党幹部などにも積極的に働きかけを行っています。

食事提供にかかる病院の窮状を訴えるポスター1



骨太方針2023では、2024年度の診療報酬改定に向けて「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う」旨が示されており、食事療養へどのような対応がなされるのか、今後の中医協論議などに注目が集まります。

なお、「入院中には『患者が自宅で食べる分の食費』が浮く」こと、「在宅患者、外来患者では食費への手当てがなされない」こと、「介護保険では食費への保険給付はなされない」ことなどを踏まえ、「入院における食事は完全自己負担とすべきではないか」と指摘する識者も少なくありません(また「少なくとも普通食は完全自己負担とする」「特別食には一定の保険給付を行う」と考える識者もおられる)。

この点について猪口全日病会長は「入院における食事は『治療の一環』として、栄養バランス等を計算している。保険給付から除外することは考えられない」とコメントしています。

4月26日の四病院団体協議会・総合部会終了後の記者会見に臨んだ、全日本病院協会の猪口雄二会長



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