人口10万人当たり医師数最多の京都と最小の埼玉で1.90倍の格差、「外科医の減少」が止まらず―医師・歯科医師・薬剤師統計
2024.3.21.(木)
2022年12月31日現在、我が国の医療施設に勤務する医師数は32万7444人で、人口10万人当たりに換算すると262.1人となり、2年前に比べて増加している—。
ただし、依然として「都道府県間の格差が大きい」(人口10万人当たり医師数が最多の京都府と、最小の埼玉県の間には1.90倍の格差)こと、診療科別にみると「外科医の減少」が続いていることなどの課題がある―。
厚生労働省が3月19日に公表した2022年の「医師・歯科医師・薬剤師統計」の概況から、このような状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら(概況資料)、詳細な政府統計データはこちら(統計表、データをダウンロード可)とこちら(閲覧資料、データをダウンロード可))。
目次
医師の95.4%が医療施設に従事、人口10万人当たり262.1人に増加
医師・歯科医師・薬剤師統計は、名称どおり医師・歯科医師・薬剤師の数や勤務状況などを調べるものです(2年前の2020年統計の記事はこちら、2018年統計の記事はこちら、16年統計の記事はこちら、2014年統計の記事はこちら)。
今後の医師養成数設定や医師偏在対策などにおいて、きわめて重要な基礎資料になります(関連記事はこちらとこちら)。
本稿では医師に焦点を合わせて2022年の統計概況を眺めてみます。
まず、2022年12月31日時点の医師数を見ると34万3275人で、2年前(2020年12月31日)に比べて3652人・1.1%増加しました。また、人口10万人当たりの医師数は274.7人で、2年前に比べ5.5人増加しています。これまでと比べて「伸びが鈍化」していることが分かります。
医師の中で「医療施設に従事」している人は32万7444人(2年前に比べて3744人・1.2%増加)で、全体の95.4%(同0.1ポイント増)を占めています。人口10万人当たりでは262.1人で、2年前に比べて5.5人・2.1%増加しています。
医療施設以外では、▼介護老人保健施設に3298人(2年前に比べて107人・3.1%減)で全体の1.0%(同増減なし)▼行政機関や教育機関などに9181人(同238人・2.5%減)で全体の2.7%(同0.1ポイント減)―が従事しています。
病院従事医は2年前から増加しているが・・・
医療施設に従事する医師を、少し詳しく見てみましょう。
まず病院に従事する医師は22万96人(2年前に比べて3622人・1.7%増)で、医師全体の64.1%(同0.4ポイント増)となります。細かく見ると、▼大学病院(医育機関附属病院)勤務:5万9670人(病院従事医の27.1%、2年前と比べて0.6ポイント増)▼一般病院(医育機関附属病院を除く)の開設者等:5251人(同2.4%、同増減なし)▼一般病院の勤務者:15万5175人(同70.6%、同0.6ポイント減)―となっています。
また、クリニックに勤務する医師は10万7348人で、2年前に比べて122人・0.1%の増加となりました。
年次推移をみると、一般病院の勤務医で増加割合が若干高いことが伺えます。
また医療施設ごとに「医師の平均年齢」を見ると、一般病院では45.4歳(2年前に比べて2.7歳低下)、診療所60.4歳(同0.2歳上昇)、大学病院39.6歳(同0.3歳上昇)となっています。
さらに、施設ごとに「どの年代の医師が多く働いているのか」を見ると、▼一般病院では30歳代:27.8%、40歳代:22.2%が多い(30,40代で半数)▼診療所では50歳代:25.2%、60歳代:29.7%、70歳以上:23.0%が多い▼大学病院では30歳代が41.9%―という状況です。この傾向は2年前と大きく変わっていません。
医師全体、病院従事医のいずれにおいても「外科」の減少が続いている
次に、医療施設に従事する医師が、どの診療科(主たるもの)に従事しているのか(臨床研修医は除く)を見ると、最も多いのは内科で6万1149人(2年前調査に比べて365人・0.6%減、医療施設に従事する医師に占めるシェア18.7%で0.3ポイント縮小)、次いで整形外科:2万2506人(同14人・0.1%減、シェア6.9%で同0.1ポイント縮小)、小児科:1万7781人(同216人・1.2%減、シェア5.4%で同0.2ポイント縮小)などで多くなっています。
また、産婦人科は1万1336人(同117人・1.0%増、シェア3.5%で同増減なし)、産科は49759人(同38人・8.3%増、シェア0.2%で同0.1ポイント増)、婦人科は2059人1995人(同64人・3.2%増、シェア0.6%で同増減なし)という状況です。
なお外科医師は1万2775人(同436人・3.3%減、シェア3.9%で同0.2ポイント縮小)となり、減少が続いています。
また、病院従事医(大学病院・一般病院)に限定すると、最も多いのは内科で2万2242人(同292人・1.3%増、病院従事医に占めるシェア10.1%で2年前から増減なし)、次いで整形外科1万4575(同156人・1.1%増、シェア6.6%で同0.1ポイント縮小)、精神科1万2345(同182人・1.5%増、シェア5.6%で同増減なし)、消化器内科(胃腸内科)1万2204人(同378人・3.2%増、シェア5.5%で同増減なし)、などが多くなっています(臨床研修医1万7919人を除く)。
また、外科医は1万342人(同205人・1.9%減、シェア4.9%で同0.2ポイント縮小)となり、病院でも「外科医の減少」が進行し続けている点が懸念されます。
また広告可能な専門医資格を見ると、総合内科専門医が最も多く2万7644人(同5475人・16.5%減、医療施設に従事する医師に占めるシェア8.4%で2年前に比べ1.8ポイント縮小)、外科専門医2万2288人(同24人・0.1%減、シェア6.9%で同0.1ポイント縮小)などが多くなっていますが、資格区分が変わっており厳密な比較は困難です。
人口当たり医師数、大都市と西日本で多い状況変わらず
都道府県別に、医療施設に従事する医師の状況(従事地、人口10万人当たり)を見ると、最も多いのは京都府355.6(同23.0人増)、次いで徳島県352.0人(2年前調査に比べて13.6人増)、次いで、高知県347人(同25.0人増)で多い状況です。京都府が徳島県を抜いて「医師最多自治体」となりましたが、トップ3の顔ぶれが2年前から変わっていません。
逆に少ないのは埼玉県の186.2人(同8.4人増)、茨城県212.3人(同18.5人増)、千葉県215.8人(同2.6人増)などです。
大都市と西日本で多い傾向は変わっておらず、最多の京都府と最少の埼玉県の格差は1.90倍です(2年前から変化なし)。大都市では人口が多く、当然患者数も多くなるためですが、さらに「研修医を受け入れる大学病院や大規模病院」が集中していることも関係してきます。
医療提供体制には様々な課題がありますが、その1つに「医師偏在」があります。本統計結果が重要な基礎資料となり、今後の「偏在解消」に向けた議論が進められます(関連記事は こちらとこちら)。
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