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市町村独自の上乗せ介護サービス等増えるが、人員基準満たさない基準該当も増加、利用者のニーズ増・多様化に提供側が追い付かず―厚労省

2024.10.7.(月)

介護保険制度では、医療保険制度と異なり、市町村が独自の上乗せ介護サービス・横出し介護サービスなどを行うことも認められているが、2022年度から23年度にかけて実施市町村がわずかだが増加しており、介護保険利用者のニーズ増・多様化などが考えられそうである—。

一方、法令や条例による人員配置・構造設備の基準を完全には満たさない「基準該当サービス」の活用も若干増加しており、「介護人材不足の深刻化」が心配される―。

厚生労働省がこのほど公表した2023年度の「介護保険事務調査の集計結果」から、こういった状況が明らかになりました(厚労省サイトはこちら)。

低所得者の介護保険料を減免する502市町村、「3原則」を遵守割合は大幅減

介護保険事務調査は、毎年4月1日現在の(1)介護保険料(2)要介護認定(3)地域支援事業(4)給付―などを保険者(1571)別に集計したものです。介護給付費実態調査や介護保険事業情報報告などとともに、介護保険制度の実態把握、今後の制度改革・介護報酬改定のために重要な調査です。

まず(1)の保険料について見てみると、65歳以上の第1号被保険者では、▼年金から保険料を天引きする「特別徴収対象者」(こちらが原則)は約3219万人(前年調査結果に比べて約15万人減)▼例外的に振り込みなどで保険料を納める「普通徴収対象者」は約374万人(同14万人増)―となりました。特別徴収が第1号被保険者の89.6%(前年調査から0.4ポイント減)となりました。「原則が減少し、例外が増加している」背景を今後、詳しく見る必要がありそうです。

また低所得者の保険料を減免している保険者は502(前年から4減)で、全体の32.0%(同0.3ポイント増)となりました(2022年度調査結果が一部修正され、減免保険者が「512」から「498」に訂正されている点に留意)。

介護保険制度においては、保険料を減免する場合、▼収入のみに着目して一律に減免するのではなく、負担能力を個別に判断して減免する▼全額免除はできるだけ行わず、減額にとどめる▼保険料を減免しても、市町村の一般会計からの財源の繰り入れは行わない―という「3原則」があります。保険料の減免を行っている502保険者のうち、この3原則を遵守しているのは398保険者(減免保険者の79.3%、前年度(90.8%)から11.5ポイント減少)でした。3原則遵守保険者の割合は、▼2016年度:92.8% →(前年度から3.9ポイント減)→ ▼2017年度:88.9% →(同2.3ポイント減)→ ▼2018年度:87.6%(同1.3ポイント減)→▼2019年度:87.6%(同増減なし)→▼2020年度:88.5%(同0.9ポイント増)→▼2021年度:90.6%(同2.9ポイント増)→▼2022年度:90.8%→▼2023年度:79.3%―と推移しています。3原則を守っている保険者が22年度から23年度にかけて大きく減少しており、今後、「なぜ守れないのか」を背景も含めて詳しく分析していく必要があるでしょう。

要介護認定調査、直接実施が多いが、外部委託をする保険者も少なくない

(2)の要介護認定については、新規の認定調査を▼「直接」実施している保険者が1544(保険者全体の98.3%、前年度調査から0.4ポイント減)▼事務受託法人へ「委託」している保険者が282(同18.0%、同1.3ポイント増)―、更新・区分変更の認定調査を▼「直接」実施している保険者が1501(保険者全体の95.5%、前年調査から0.6ポイント減)▼事務受託法人へ「委託」している保険者が301(同19.2%、前年調査から1.7ポイント増)▼指定居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)などへ「委託」している保険者が1067(同67.9%、前年調査から0.1ポイント減)―となっています。

「直接実施」と「委託」を組み合わせている保険者もあり(結果に重複あり)、合計は100%になりません。

要介護認定調査の方法(2023年度介護保険事務調査1 230930)

市町村の実施する地域支援事業、認知症グループホームの家賃補助など微増

次に(3)の地域支援事業(任意事業)の実施状況を見てみましょう。

市町村の実施する地域支援事業は現在、次の事業で構成されています(2014年に改正)。
(i)介護予防・日常生活支援総合事業(単に「総合事業」と呼ぶことも多い)(▼介護予防・生活支援サービス事業(要支援者に対する訪問・通所サービス、配食などの生活支援サービス、介護予防支援事業)▼一般介護予防事業―)
(ii)包括的支援事業(▼地域包括支援センターの運営▼在宅医療・介護連携推進事業▼認知症総合支援事業▼生活支援体制整備事業―)
(iii)任意事業(▼介護給付費適正化事業▼家族介護支援事業―など)

総合事業の概要



ここでは(iii)の「任意事業」のうちの「その他の事業」を2023年度(2023年4月-24年3月)に、どの程度の市町村が実施したのかを調べています。

それによれば、▼福祉用具・住宅改修支援事業:843市町村(53.7%、前年度調査から3.9ポイント減)▼認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム)の家賃等助成事業:107市町村(6.8%、同0.2ポイント増)▼栄養改善が必要な高齢者に対する配食・見守り事業:311保険者(19.8%、同1.4ポイント増)―などとなっています。

市町村独自の地域支援事業(その他の事業)の状況(2023年度介護保険事務調査2 230930)

独自の報酬設定や区分支給限度基準額の上乗せをする市町村は前年度から微増

介護保険制度では、医療保険制度と異なり「市町村独自のサービスなどを追加で行う」ことも認められています(上乗せサービス、横出しサービス)。

この独自サービスの実施状況を見ると、▼地域密着型サービスに市町村独自の報酬を設定している:26保険者(前年調査から2増)▼区分支給限度基準額(要介護度別の、毎月の保険サービス利用上限、上限超過は自費となる)を上乗せしている:19保険者(前年調査から1増)―などとなっています。地域住民の介護ニーズが増加・多様化している可能性が考えられ、詳細な調査が待たれます。

市町村独自の報酬設定を行っている地域密着型サービスの種類を見ると、▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護:7(前年調査に比べて2増)▼夜間対応型訪問介護:2(同増減なし)▼小規模多機能型居宅介護:22(同1増)▼看護小規模多機能型居宅介護:9(同1増)―などとなっています(重複あり)。独自報酬とサービス整備状況や利用状況などとの関係も詳しく調べることも必要でしょう。

市町村独自の上乗せ・横出し介護サービス等の状況(2023年度介護保険事務調査4 230930)

指定基準を完全には満たさない「基準該当サービス」、実施は204保険者に増加

また(4)の給付のうち、基準該当サービスの実施状況に注目してみましょう。

地域によっては「人手不足などにより、指定介護サービス(基準を完全に満たされなければ指定を受けられない)の確保が難しい」ところもあります。この点、地域の介護ニーズに応える必要性を考慮し、「介護保険法や条例の厳格な基準を完全には満たしていないものの、設備や人員体制を一定程度整備しており、介護サービス提供を適切に行える」と市町村が自ら認めた事業所を介護保険の適用対象とすることができます【基準該当サービス】。

基準該当サービスを実施している保険者は204(前年度調査に比べて2増、2022年度調査結果が「207」から「202」に訂正されている点に留意)あり、全体の13.0%(同0.1ポイント増)となりました。地域の介護人材確保がますます困難になっていることなども背景にあり、「介護人材確保策」が急務な点をこうしたところからも再確認できます。

サービスごとの基準該当件数を見ると、▼居宅介護支援(ケアマネジメント):46(前年調査から3増)▼訪問介護:87(同5増)▼通所介護:34(同2減)▼福祉用具貸与:18(同2増)▼短期入所:99(同1減)▼介護予防支援:23(同増減なし)▼介護予防福祉用具貸与:14(同2増)▼介護予防短期入所:54(同2減)―などとなっています。

基準該当サービスの状況(2023年度介護保険事務調査3 230930)



介護の「質」を考えれば、基準該当サービスではなく、人員・構造設備の基準を満たした「指定介護サービス」の拡充が期待されます。一方、前述のとおり、地域によっては「指定介護サービス」だけでは十分な介護サービスの「量」を確保できないため、やむを得ず「基準該当サービス」を活用している面もあります。各市町村において、介護サービスの「質」と「量」のバランスを考慮していくことが現実的でしょう。



また、被保険者に対して介護サービスの利用券(バウチャー)を事前に交付し、これに基づいてサービスを受ける(現物給付)という仕組みを採用している保険者は10(前年度から3減)あります。1990年代後半の介護保険制度創設に向けた議論の中では「介護サービスの不正受給を避けるためにバウチャー制度を全国的に導入すべきではないか」との意見も少なからずありましたが、採用はごくわずかにとどまっています。実際にバウチャー制度を採用している、あるいはしていた保険者からのヒアリング等を行い、メリットとデメリットの抽出を改めて行うことも今後必要になってくるでしょう。

看多機を含めた地域密着型サービス、公募による事業所指定は前年から変化なし

介護保険サービスのうち、定期巡回随時対応サービスなどの地域密着型サービスについては、導入初期の事業所乱立による「共倒れ」を防ぐために、「サービス提供事業所の指定」が行われるケースがあります。サービス創設初期では利用者やケアマネジャーに当該サービスが知られておらず、そうした中で事業所数が過剰になれば、「利用者の安定確保が難しくなる」→「経営が困難になる」→「地域から撤退する」→「将来の重要なサービス事業所の芽を摘んでしまう」という事態になりかねない点を考慮した仕組みです。

この事業所の指定を公募制で実施している保険者は228(前年度調査から増減なし)あります。その内訳は、▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護:107(同増減なし)▼小規模多機能型居宅介護:134(同増減なし)▼看護小規模多機能型居宅介護:127(同増減なし)―という状況です。



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