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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

市町村による「認知症サポーター養成」事業が2021年度に大幅減少、基準該当サービスの利用が若干減少―厚労省

2022.9.27.(火)

介護保険の地域密着型サービスについて、報酬を独自に設定している保険者は23あり、区分支給限度基準額に独自の上乗せを行っている保険者が18で、横這い・微増となっている―。

また要介護認定に係る調査について、外部に委託している市町村は若干増加している—。

さらに、法令や条例による人員配置・構造設備の基準を完全には満たさない「基準該当サービス」の活用は減少している―。

なお、市町村による「認知症サポーター養成」事業が大幅に減少しており、新型コロナウイルス感染症の影響による一時的なものなのか、他の要因があるのかを今後分析する必要がある—。

厚生労働省が9月20日に公表した2021年度の「介護保険事務調査の集計結果」から、こういった状況が明らかになりました(厚労省サイトはこちら)。

低所得者の介護保険料を減免する519市町村、「3原則」を遵守割合は増加

介護保険事務調査は、毎年4月1日現在の(1)介護保険料(2)要介護認定(3)地域支援事業(4)給付―などを、市町村(1741)あるいは保険者(1571)別に集計したものです。介護給付費実態調査や介護保険事業情報報告などとともに、介護保険制度の実態把握、今後の制度改革・介護報酬改定のために重要な調査です。

まず(1)の保険料について見てみると、65歳以上の第1号被保険者では、▼年金から保険料を天引きする「特別徴収対象者」(こちらが原則)は約3222万人(前年調査結果に比べて約23万人増)▼例外的に振り込みなどで保険料を納める「普通徴収対象者」は約364万人(同8万人増)―となりました。特別徴収が第1号被保険者の89.8%(前年調査から0.2ポイント減)となりました。

また低所得者の保険料を減免している保険者は519(前年から32増)で、全体の33.09%(同1.4ポイント増)となりました。

介護保険制度においては、保険料を減免する場合、▼収入のみに着目して一律に減免するのではなく、負担能力を個別に判断して減免する▼全額免除はできるだけ行わず、減額にとどめる▼保険料を減免しても、市町村の一般会計からの財源の繰り入れは行わない―という「3原則」があります。保険料の減免を行っている519保険者のうち、この3原則を遵守しているのは470保険者(90.6%、前年調査から2.1ポイント増加)でした。3原則遵守保険者の割合は、▼2016年度:92.8% →(前年度から3.9ポイント減)→ ▼2017年度:88.9% →(同2.3ポイント減)→ ▼2018年度:87.6%(同1.3ポイント減)→▼2019年度:87.6%(同増減なし)→▼2020年度:88.5%(同0.9ポイント増)→▼2021年度:90.6%(同2.9ポイント増)―と推移しています。3原則を守れない保険者については「なぜ守れないのか」を、背景も含めて詳しく分析していく必要があるでしょう。

要介護認定調査、外部委託をする保険者が若干増加

(2)の要介護認定については、新規の認定調査を▼「直接」実施している保険者が1547(保険者全体の98.5%、前年調査から0.3ポイント増)▼事務受託法人へ「委託」している保険者が262(同16.7%、前年調査から2.1ポイント増)―、更新・区分変更の認定調査を▼「直接」実施している保険者が1512(保険者全体の96.2%、前年調査から0.3ポイント増)▼事務受託法人へ「委託」している保険者が267(同17.0%、前年調査から1.7ポイント増)▼指定居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)などへ「委託」している保険者が1068(同68.0%、前年調査から1.0ポイント減)―となっています。

「直接実施」と「委託」を組み合わせている保険者もあり(結果に重複あり)、合計は100%になりません。

要介護認定の実施状況(2021年度介護保険事務調査1 220920)

「認知症サポーター養成」事業、実施市町村が大幅減

次に(3)の地域支援事業(任意事業)の実施状況を見てみましょう。

市町村の実施する地域支援事業は現在、次の事業で構成されています(2014年に改正)。
(i)介護予防・日常生活支援総合事業(単に「総合事業」と呼ぶことも多い)(▼介護予防・生活支援サービス事業(要支援者に対する訪問・通所サービス、配食などの生活支援サービス、介護予防支援事業)▼一般介護予防事業―)
(ii)包括的支援事業(▼地域包括支援センターの運営▼在宅医療・介護連携推進事業▼認知症総合支援事業▼生活支援体制整備事業―)
(iii)任意事業(▼介護給付費適正化事業▼家族介護支援事業―など)

総合事業の概要



ここでは(iii)の「任意事業」のうちの「その他の事業」を2021年度(2021年4月-22年3月)に、どの程度の市町村が実施したのかを調べています。

それによれば、▼福祉用具・住宅改修支援事業:870市町村(同50.0%、前年調査から増減なし)▼認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム)の家賃等助成事業:102市町村(同5.9%、前年調査に比べて0.4ポイント増)▼認知症サポーター等養成事業:1234保険者(同70.9%、前年調査に比べて10.1ポイント減)―などとなっています。認知症サポーター養成について大幅な減少が目立ちしますが、「新型コロナウイルス感染症の影響」なのか、他の要因なのか、詳しく見ていく必要があるでしょう。

地域支援事業の実施状況(2021年度介護保険事務調査2 220920)

指定基準を完全には満たさない「基準該当サービス」、実施は190保険者に減少

また(4)の給付のうち、基準該当サービスの実施状況に注目してみましょう。

地域によっては「マンパワー不足などにより、指定介護サービス(基準を完全に満たされなければ指定を受けられない)が不足する」ところもあります。そこで、「介護保険法や条例の厳格な基準こそ完全には満たしていないものの、設備や人員体制を一定程度整備しており、介護サービス提供を適切に行える」と市町村が自ら認めた事業所を介護保険の適用対象とすることができます【基準該当サービス】。

基準該当サービスを実施している保険者は190(前年調査に比べて17減)あり、全体の12.1%(同1.1ポイント減)となりました。事業所等が努力を重ねて人員基準等をクリアできるようになったのか、基準該当の仕組みそのものを辞めたのか、あるいは別の事情があるのか、今後、詳しく分析していくことに期待が集まります。

サービスごとの基準該当件数を見ると、▼居宅介護支援(ケアマネジメント):41(前年調査から4増)▼訪問介護:89(同8増)▼通所介護:37(同5増)▼福祉用具貸与:13(同4増)▼短期入所:101(同1減)▼介護予防居宅介護支援:21(同5増)▼介護予防福祉用具貸与:11(同3増)▼介護予防短期入所:64(同5増)―などとなっています。

基準該当サービスの状況(2021年度介護保険事務調査3 220920)



介護の「質」を考えれば、基準該当サービスではなく、人員・構造設備の基準を満たした「指定介護サービス」の拡充が期待されます。一方、前述のとおり、地域によっては「指定介護サービス」だけでは十分な介護サービスの「量」を確保できないため、やむを得ず「基準該当サービス」を活用している面もあります。各市町村において、介護サービスの「質」と「量」のバランスを考慮していくことが現実的でしょう。



また、被保険者に対して介護サービスの利用券(バウチャー)を事前に交付し、これに基づいてサービスを受ける(現物給付)という仕組みを採用している保険者は13(前年調査比べて1増)あります。1990年代後半の介護保険制度創設に向けて議論の中では「介護サービスの不正受給を避けるためにバウチャー制度を全国的に導入すべきではないか」との意見も少なからずありましたが、採用はごくわずかにとどまっています。実際にバウチャー制度を採用している、あるいはしていた保険者からのヒアリング等を行い、メリットとデメリットの抽出を改めて行うことも今後必要になってくると考えられます。

独自の報酬設定や区分支給限度基準額の上乗せをする市町村は微増

介護保険制度では、医療保険制度と異なり「市町村独自のサービスなどを追加で行う」ことも認められています(上乗せサービス、横出しサービス)。

この独自サービスの実施状況を見ると、▼地域密着型サービスに市町村独自の報酬を設定している:23保険者(前年調査から増減なし)▼区分支給限度基準額(要介護度別の、毎月の保険サービス利用上限、上限超過は自費となる)を上乗せしている:18保険者(前年調査に比べて1増)―などとなっています。

市町村独自の報酬設定を行っている地域密着型サービスの種類を見ると、▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護:4(前年調査に比べて2増)▼夜間対応型訪問介護:2(同増減なし)▼小規模多機能型居宅介護:21(同1増)▼看護小規模多機能型居宅介護:6(同増減なし)―などとなっています(重複あり)。独自報酬とサービス整備状況や利用状況などとの関係を詳しく調べることも必要でしょう。

横出し・上乗せサービスなどの実施状況(2021年度介護保険事務調査4 220920)

看多機を含めた地域密着型サービス、公募による事業所指定が大幅減

介護保険サービスのうち、定期巡回随時対応サービスなどの地域密着型サービスについては、導入初期の事業所乱立による「共倒れ」を防ぐために、「サービス提供事業所の指定」が行われるケースがあります。サービス創設初期では利用者やケアマネジャーの認知度が低く、事業所数が過剰になれば利用者の安定確保が難しくなります。結果、経営が困難になり、地域から撤退してしまい、「将来の重要なサービス事業所」の芽を摘んでしまいかねないという点を考慮した仕組みです。

この事業所の指定を公募制で実施している保険者は176(前年調査に比べて116減)あります。その内訳は、▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護:83(同55減)▼小規模多機能型居宅介護:100(同98減)▼看護小規模多機能型居宅介護:94(同39減)―という状況です。「減少」が目立っており、背景を詳しく見ていくことが重要でしょう。



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