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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

介護保険の252保険者で基準該当サービスを利用、18保険者で地域密着の報酬に独自上乗せ―厚労省

2018.7.26.(木)

基準該当サービスを実施している介護保険者は全体の16.0%、地域密着型サービスの報酬を独自に設定している保険者は同じく1.1%、区分支給限度基準額に独自の上乗せを行っている保険者も同じく1.1%である―。

 厚生労働省が7月25日に公表した2017年度の「介護保険事務調査の集計結果」から、こういった状況が明らかになりました。

低所得者の介護保険料を減免する496市町村のうち、92.8%で「3原則」を遵守

 介護保険事務調査は、毎年4月1日現在の(1)介護保険料(2)要介護認定(3)地域支援事業(4)給付―などを、市町村(1741)あるいは保険者(1578)別に集計したものです(関連記事はこちらとこちら)。

 まず(1)の保険料について見てみると、65歳以上の第1号被保険者では、年金から保険料を天引きする「特別徴収対象者」は約3092万人(前年に比べて53万人増)、振り込みなどで保険料を納める「普通徴収対象者」は約377万人(同4万人増)で、第1号被保険者の89.1%(同0.3ポイント増)が特別徴収の対象となっています。特別徴収割合が順調に増加していることが分かります。

 低所得者の保険料を減免している保険者は496(同1減)で、全体の31.5%(同増減なし)を占めました。

 介護保険制度においては、保険料を減免する場合、▼収入のみに着目して一律に減免するのではなく、負担能力を個別に判断して減免する▼全額免除は行わず、減額にとどめる▼保険料を減免しても、市町村の一般会計からの財源の繰り入れは行わない―という「3原則」があります。保険料の減免を行っている496保険者のうち、この3原則を守っているのは461保険者(92.8%)でした。3原則遵守保険者の割合は、前年度(2017年度)には91.1%でしたので、遵守率が向上していることが分かります。

要介護認定調査、直接実施が1720、委託が404

 (2)の要介護認定については、認定調査を「直接」実施している市町村が1720(同2増、調査件数は134万4000件)、事務受託法人へ「委託」している市町村が404(同4増、調査件数は30万1000件)で、委託割合は増加する傾向にあります(ただし重複あり)。

2017年度における要介護認定等の実施状況

2017年度における要介護認定等の実施状況

 

地域支援事業のうち、家族介護支援は全体の91.5%にあたる1593市町村で実施

 また(3)の地域支援事業(任意事業)の実施状況を見ると、認知症高齢者の見守り事業など「家族介護支援事業」を行っている市町村は延べ1593(同2増)で、全体の91.5%(同0.1ポイント増)を占めています。

2017年度における地域支援事業の実施状況(その1、家族介護支援事業)

2017年度における地域支援事業の実施状況(その1、家族介護支援事業)

 
一方、「福祉用具・住宅改修支援事業」は延べ974・全体の55.9%(同18増・1.0ポイント増)、介護サービスの質向上などを目的とした「地域自立生活支援事業」を実施しているのは延べ799・全体の45.9%(同57増・3.3ポイント増)となっています(重複あり)。
2017年度における地域支援事業の実施状況(その2、その他の事業)

2017年度における地域支援事業の実施状況(その2、その他の事業)

2017年度における地域支援事業の実施状況(その3、介護ボランティア活動など)

2017年度における地域支援事業の実施状況(その3、介護ボランティア活動など)

 

区分支給限度基準額の上乗せは18保険者で実施

 (4)の給付については、基準該当サービスの実施状況に注目してみましょう。地域によっては介護サービスが不足するところもあることから、「介護保険法の厳格な基準は満たしていないが、設備や人員体制を一定程度整備しており、介護サービス提供を適切に行える」と市町村が自ら認めた事業所を介護保険の適用対象とすることができ、これを「基準該当サービス」と呼びます。

 基準該当サービスを実施している保険者は252(同2減)あり、全体の16.0%(同0.7ポイント減)となりました。事業所の努力(指定要件を満たす)によって「基準該当サービス」の出番が減っているのか、別の事情があるのか、今後詳しく検証していくことが重要でしょう。

2017年度において、基準該当サービスを行っている保険者の状況

2017年度において、基準該当サービスを行っている保険者の状況

 
 サービスごとの基準該当の件数を見ると、▼訪問介護:97(同3増)▼通所介護:52(同5増)▼福祉用具貸与:25(同3減)▼短期入所:125(同22減)▼介護予防訪問介護:58(同3減)▼介護予防通所介護:39(同2減)▼介護予防福祉用具貸与:20(同5減)▼介護予防短期入所:69(同6減)―などとなっています。

 また、被保険者に対して介護サービスの利用券(バウチャー)を事前に交付し、これに基づいてサービスを受ける(現物給付)という仕組みを採用している保険者は14(同3減)あります。介護保険制度創設時には、「不正受給を避けるためにバウチャー制度を全国的に導入すべきではないか」との意見も少なからずありましたが、採用はごくわずか(2017年度時点で0.9%)にとどまっています。バウチャー制度を採用している保険者から、「そのメリット」を伺いたいところです。

 さらに介護保険では、医療保険と異なり、市町村独自のサービスなどを追加で行うことも認められています。

 この独自サービスの実施状況を見ると、▼地域密着型サービスに市町村独自の報酬を設定している:18保険者(同増減なし)▼支給限度基準額(要介護度別の、毎月の保険サービス利用上限、上限超過は自費となる)を上乗せしている:18保険者(同4減)―などとなっています。

看多機では事業所指定する保険者が増加、定期巡回などでは減少

 ところで介護保険サービスのうち、定期巡回随時対応サービスなどの地域密着型サービスについては、初期の事業所乱立による「共倒れ」(サービス創設初期で認知度が低い中で、事業所数が過剰になれば利用者の安定確保が難しくなる)を防ぐために、「サービス提供事業所の指定」が行われるケースがあります。この事業所の指定を公募制で実施している保険者は412(同18減)あり、その内訳は▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護:245(同17減)▼小規模多機能型居宅介護:348(同11減)▼看護小規模多機能型居宅介護:180(同6増)―という状況です。看多機以外の地域密着型サービスでは「供給体制が整い、競争を促している」と言えるかもしれません。 
 
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