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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

病院経営は危機的な状況、人件費高騰・物価高騰等に対応するために経営支援・地域医療介護総合確保基金の拡充を強く求める—四病協

2024.10.16.(水)

病院経営が極めて厳しい状況が病院経営定期調査で明らかとなっている。地域医療を守るために「国による病院経営支援」の実施と、「地域医療介護総合確保基金の拡充」を強く求める—。

四病院団体協議会(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成)は、10月9日に福岡資麿厚生労働大臣に宛てて、11日には加藤勝信財務大臣に宛ててこうした要望書を提出しました。

【病院への緊急財政支援要望】(内容は両者同一)
▽厚労相宛てはこちら
▽財務相宛てはこちら

【地域医療介護総合確保基金の拡充要望】(内容は両者同一)
▽厚労相宛てはこちら
▽財務相宛てはこちら

加藤勝信財務大臣へ要望書を提出する四病院団体の会長。向かって左から加納繫照日本医療法人協会会長、山崎學日本精神科病院会長、加藤財務相、相澤孝夫日本病院会会長、猪口雄二全日本病院協会会長。

病院経営定期調査の最終とりまとめを踏まえて、病院経営の厳しさを改めて訴える

Gem Medで報じているとおり、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会の3病院団体が行った2024年度の「病院経営定期調査」では、次のように「病院経営が極めて厳しい状況(減収・減益)に陥っている」状況が明らかにされました(関連記事はこちら)。

【2022年度→23年度比較】
→医業赤字はわずかに縮小したが、コロナ補助金を含めても経常赤字となり、経常赤字病院が大幅に増加(コロナ補助金を加味しても、赤字病院割合は22年度の22.7%から23年度には51.0%に増加)
▼医業利益:22年度の「マイナス2億978万円」から、23年度には「マイナス2億29万円」となり、赤字幅がわずかに縮小した(949万円・4.5%縮小)

▼経常利益(コロナ補助金などを含む):22年度の「1億3435万円の黒字」から、23年度には「3412万円の赤字」に転落した
→コロナ補助金を除外すると、22年度の「8718万円の赤字」から、23年度には「8391万円の赤字」となり、赤字幅がわずかに縮小した(327万円・3.8%縮小)

▼経常「赤字」病院の割合:22年度の「22.7%」から23年度には「51.0%」で、赤字病院割合が28.3ポイント増加
→コロナ補助金を除外すると、22年度の「63.1%」から23年度には「64.9%」で、赤字病院割合が1.8ポイント増加

医業・経常損益の22/23年度比較(100床あたり)(2024年度病院経営定期調査・中間報告1 240917)



【2018年度・19年度・20年度・21年度・22年度・23年度比較】
→医業・経常赤字病院ともに増加を続けている
▼医業「赤字」病院の割合:18年度:63.6%→19年度:65.9%→20年度:86.4%→21年度:68.2%→22年度:88.6%→23年度:86.4%となった
→コロナ感染症の影響がない18年度と23年度を比較すると、赤字病院割合は22.8ポイント増加

▼コロナ補助を含めて経常「赤字」病院の割合:18年度:52.3%→19年度:54.5%→20年度:27.3%→21年度:9.1%→22年度:13.6%→23年度:56.8%となった
→コロナ感染症の影響がない18年度と23年度を比較すると、赤字病院割合は4.5ポイント増加

▼コロナ補助を除いた経常「赤字」病院の割合:18年度:52.3%→19年度:54.5%→20年度:72.7%→21年度:50.0%→22年度:77.3%→23年度:65.9%となった
→コロナ感染症の影響がない18年度と23年度を比較すると、赤字病院割合は13.6ポイント増加

2018→23年度の医業・経常損益比較(2024年度病院経営定期調査・中間報告7 240917)



【昨年(2023年)6月→本年(2024年)6月比較】
→医業赤字・経常赤字ともに拡大し、本年(2024年)6月には65.0%の病院が赤字となった
▼医業利益:23年の「1939万円の赤字」から、本年(24年)には「2180万円の赤字」となり、赤字幅が拡大した(241万円・12.4%悪化)

▼経常利益(コロナ補助金等含む):22年の「1379万円の赤字」から、本年(24年)には「1732万円の赤字」となり、赤字幅が拡大した(353万円・25.6%悪化)
→コロナ補助金を除外すると、23年の「1491万円の赤字」から、本年(24年)には「1735万円の赤字」に赤字幅が拡大した(244万円・16.4%悪化)

▼経常「赤字」病院の割合:23年の「61.5%」から、本年(24年)には「65.0%」となり、赤字病院割合が3.5ポイント増加
→コロナ補助金を除外すると、23年の「64.0%」から、本年(24年)には「65.0%」となり、赤字病院割合が1.0ポイント増加

医業・経常損益の23.6/24.6比較(100床あたり)(2024年度病院経営定期調査・中間報告2 240917)



【2019年・20年・21年・22年・23年・24年の「6月」比較】
→コロナ補助金等で診療単価は上昇しているものの、延べ患者数はコロナ禍前の水準に戻らず、医業・経常赤字病院は増加を続けている
▼▽医業「赤字」病院の割合:19年:75.0%→20年:88.6%→21年:79.5%→22年:84.1%→23年:84.1%→24年:81.8%となった
→コロナ禍前の19年と24年を比較すると、赤字病院割合は6.8ポイント増加

▼コロナ補助を含めて経常「赤字」病院の割合:19年:75.0%→20年:88.6%→21年:72.7%→22年:75.0%→23年:79.5%→24年:79.5%となった
→コロナ禍前の19年と24年を比較すると、赤字病院割合は4.5ポイント増加

▼コロナ補助を除いた経常「赤字」病院の割合:19年:75.0%→20年:88.6%→21年:72.7%→22年:75.0%→23年:79.5%→24年:79.5%となった
→コロナ禍前の19年と24年を比較すると、赤字病院割合は4.5ポイント増加

2019→24年(各6月)の医業・経常損益比較(2024年度病院経営定期調査・中間報告6 240917)



このように「病院経営が悪化」している背景について、3病院団体は、▼2024年度診療報酬改定による医業収益減少▼各種補助金(コロナ関連緊急包括支援事業補助金、水道光熱費補助金)の廃止・減額—による「収益減」と、▼給与費増▼物価高騰—などによる「費用増」があると分析(収益減、支出増により当然「利益」は激減(赤字が激増))しています。

また、病院団体とは別に福祉医療機構(WAM)が示した「2024年6月調査病院の経営状況(速報値)」でも、2023年度の一般病院(急性期)医業利益率は「2.0%の赤字」、同じく経常利益率は「0.1%の赤字」に悪化していることも紹介しています。

WAMデータから見ても病院経営は厳しいことが伺える1

WAMデータから見ても病院経営は厳しいことが伺える2



こうした厳しい状況への支援を国に要望することを9月25日の四病協総合部会(4病院団体の会長・副会長ら幹部で構成される会議体)で決定(関連記事はこちら)。今般、福岡厚労相と加藤財務相に要望書を提出しました。

要望は(1)病院への緊急財政支援(2)地域医療介護総合確保基金の拡充—の2点。

まず(1)の「病院への緊急財政支援」に関しては、上記のように医業経営が極めて厳しく、かつ厳しさを増している状況を改めて訴えたうえで、次の5項目の支援を実現するよう求めました。

▽経営改善対策「経営が悪化している地域医療を支える病院において、経営改善を図ることができるような支援を求める」

▽賃金上昇対策「2024年の春闘では全産業平均で5.10%の賃上げが行われたが、2024年度診療報酬改定で儲けられた【ベースアップ評価料】(2.5%)では、この賃上げ水準には追いつかず2.6%ポイントの差が生じている。このままでは医療現場の人手不足が加速し、適切な医療を提供できなくなる恐れがあるため、すべての病院がさらなる賃上げを実現できるよう補助金等による支援を求める」

▽物価高騰対策2024年度診療報酬改定で入院時の食費基準額が約30年ぶりに引き上げらたが、2024年6月以降の消費者物価指数(CPI)は、僅か2か月で1.1%上昇している(本年(2024年)6月:116.3→本年(2024年)8月:117.6)。今回の基準額引き上げでも十分とは言えず、今後も食費の上昇が続く見込みであり、引き続き、病院の食費を含めた物価高騰に対する支援を求める」

▽建築資材の高騰により病院の増改築が困難となっている状況に鑑み、これに対する支援を求める

▽コロナ禍における借入金の返済が始まることによりキャッシュフローが回らず、今後存続が危うくなる病院が増えることが予想されため、これに対する支援を求める





また、(2)の地域医療介護総合確保基金の拡充に関しては、人口減(=患者減)、諸物価高騰により病院経営が非常に厳しくなっている状況を改めて訴えたうえで、次の3項目を実現するよう要望しています。

▽地域医療介護総合確保基金の増額2040年頃を目途とする新たな地域医療構想が検討されている。人口減少で変化する医療需要においても救急・急性期に関する機能の確保、広域医療対応できる病院の確保、高齢者救急等に対応する地域に密着した病院の確保が必要であり、今後、更なる病院間連携・再編・病院の集約化が求められ、閉院・病床削減をせざるを得ない病院が増えることが予想される。持続可能な医療提供体制の構築に対応できるよう地域医療介護総合確保基金の大幅な増額、または新たな基金の創設を求める」

▽病床機能再編等に伴う支援単価の増額地域医療介護総合確保基金の『病床機能再編支援事業』では、病床機能再編や病床減少を伴う病院の統合に対し概ね1床あたり約200万円の財政措置が行われているが、当該単価について実情に見合った単価への増額を求める」

▽病院建て替えに伴う支援の拡充(補助単価の引き上げ)「地域医療確保のため老朽化した病院の建替え等も今後必要となるが、近年の物価高騰により建築単価は年々上昇し、現行の補助単価は現実から乖離している。都道府県において実情に見合った単価設定がなされるよう、改めて都道府県に周知を求める」



全国自治体病院協議会でも、総務省や厚労省、国会議員らに「病院経営の支援」要望を行う考えであり、これらを踏まえて国がどう動くのか、今後の動きに注目が集まります。



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