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介護福祉士が「介護現場で働く」場合と、「医療機関で看護補助者として働く」場合とで、同一処遇となるような仕組みが必要—日慢協・橋本会長

2025.5.27.(火)

医療機関における看護補助者業務の重要性が再確認されているが、成り手が不足している。この背景には、例えば介護福祉士が「介護現場で働く」場合と、「医療機関で看護補助者として働く」場合とで、給与水準が異なる(前者の方が高い)ことがあげられる。同一職種(労働)であれば同一処遇となるような仕組みが必要である—。

日本慢性期医療協会が5月22日に定例記者会見を開き、橋本康子会長がこうした提言を行いました。

5月22日の定例記者会見に臨んだ日本慢性期医療協会の橋本康子会長

看護補助者の成り手不足が深刻化

2025年度に入り、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代がすべて、今年度中に75歳以上の後期高齢者に達します。2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、医療・介護の複合ニーズを持つ高齢者、認知症高齢者などの比率が高まっていく)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。

少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療・介護提供体制」の構築がますます重要になってきますが、医療・介護分野ではどうしても「人手」がかかるため、人材確保にもこれまで以上に力を入れていく必要があります。

このため介護分野では、次のような「介護職員の賃金アップに向けた取り組み」が従前より続けられています。

▽2012年度介護報酬改定で【介護職員処遇改善加算】を創設(2009年度から設けられていた介護職員処遇改善交付金を受けて創設し、その後、順次拡充、関連記事はこちら

▽2019年度介護報酬改定で【特定処遇改善加算】を創設(主に勤続年数の長い介護福祉士の処遇改善を目指す、関連記事はこちらこちら

▽2021年度介護報酬改定で【介護職員等ベースアップ等支援加算】を創設(介護職員等の基本給などの引き上げを目指す、関連記事はこちら

▽2024年度介護報酬改定で、上記3加算を統合し拡充した【介護職員等処遇改善加算】を創設(関連記事はこちら

処遇改善加算見直し概要2(社保審・介護給付費分科会(3)4 240122)



上記の取り組みにより介護施設・介護事業所に勤務する介護福祉士の賃金水準は確実に上昇しています。

しかし、同じ介護福祉士でも医療機関に勤務する場合には「看護補助者」として扱われ、その賃金水準底上げについては、2024年度の診療報酬改定で創設されたベースアップ評価料として対応が始まったにとどまっています。

このため、「介護職員」と「看護補助者」の給与格差が生じ、また同一法人内に医療機関と介護施設・事業所とを併せ持つ場合には「給与格差が生じると不公平感が生じ、人事異動などでも弊害が出る。病院独自での看護補助者給与アップにも限界がある」として、介護職員の処遇改善加算を取得しないケースも少なくありません(関連記事はこちら)。

「介護現場で働く介護福祉士」(青の棒グラフ)と、「医療機関で看護補助者として働く介護福祉士」(赤の棒グラフ)との給与格差(日慢協1 250522)



また、介護現場で働く介護福祉士は「看護師と連携」する一方で、医療現場で看護補助者として働く介護福祉士は「看護師の指示下に入る」という違いもあります。

「介護現場で働く介護福祉士」と、「医療機関で看護補助者として働く介護福祉士」との指揮命令系統の違い(日慢協2 250522)



2024年度の診療報酬改定では、例えば【看護補助体制充実加算1】の施設基準に「介護福祉士」が明示されるなど、「介護福祉士が医療現場でこれまで以上に活躍する」ことが期待されていますが、上記のような状況の中では、医療現場で看護補助者の成り手確保が極めて困難であり、病院の100床当たり看護補助者数は減少をたどっています。

2024年度診療報酬改定では【看護補助体制充実加算1】の施設基準において「介護福祉士」を明示し、その活用を推進する方針を明示している

給与格差などにより、医療機関に従事する看護補助者数は減少している(日慢協3 250522)



橋本会長は、▼こうした状況を改善しなければならない。コロナ禍で看護補助者の重要性が急性期入院医療の場でも確認された(高齢患者では、急性期でも「介護」「直接的ケア」が必要不可欠である、関連記事はこちら)▼介護福祉士の業務内容は、介護施設・事業所であっても、医療機関であっても、それほど変わらない—とし、「同⼀職種(労働)同⼀賃⾦の実現が必要不可欠である」と強調しています。

あわせて橋本会長は「介護施設・事業所で働く介護福祉士の賃金」は、各種加算で上昇してきているが、全産業平均と比較すればまだ低いため、「看護補助者と合わせて、さらなる賃金の引き上げ」が必要であるとも訴えています。

介護福祉士等の給与は上昇しているが、まだ全産業平均との格差が大きい(日慢協4 250522)



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