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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

介護従事者の6割超が人手不足を感じ、「低賃金」や「仕事のきつさ」が原因と捉えている―介護労働安定センター

2016.8.10.(水)

 2015年度における介護労働者の所定内賃金は月給の人で21万7753円となり、前年度に比べて2676円増加した。しかし、介護事業所で働く従業員の6割超は「人手が不足している」と感じており、その主な原因は「賃金が低い」「仕事がきつい」ことと捉えている―。

 このような状況が、介護労働安定センターが5日に公表した2015年度の「介護労働実態調査」結果から明らかになりました。

人手不足の原因、低賃金をあげる人が57.4%、仕事のきつさあげる人が48.3%

 介護労働安定センターでは、介護労働者の働く環境を改善することで、より質の高い介護サービス提供が実現することを目指し、毎年度、介護労働や介護労働者の就業の実態などを調査しています。

 まず2015年度における事業管理者を除く介護労働者(月給の人)の所定内賃金を見ると、前年度より2676円増加し、21万7753円となりました。訪問介護員に限定すると19万1751円にとどまりますが、前年度に比べて4623円の増加となっています。介護職員(訪問介護以外の介護保険事業所で、直接介護を行う人)では19万8675円で、同じく2544円増加しています。

介護労働者全体で、2014年度から2015年度にかけて給与が上がっており、特に訪問介護員については5000円弱の月給引き上げが行われている

介護労働者全体で、2014年度から2015年度にかけて給与が上がっており、特に訪問介護員については5000円弱の月給引き上げが行われている

 

 次に介護事業所で働く従業員に、「人手が足りているか」を聞いたところ、「適当である」と答えた人は36.2%にとどまり、61.3%が「不足している」と感じていることが分かりました(大いに不足7.5%、不足23.0%、やや不足30.8%)。不足感を覚える人は、前年度調査よりも2.0ポイント増加しています。

 不足している理由については、「採用が困難」と考える人が全体の7割超おり、採用困難の原因としては「賃金が低い」点をあげる声がもっとも多く57.4%、「仕事がきつい」48.3%、「社会的評価が低い」40.8%などが続きます(複数回答)。

介護労働者の6割超が人手不足を感じており、その理由として低賃金や仕事のきつさなどがあげられている

介護労働者の6割超が人手不足を感じており、その理由として低賃金や仕事のきつさなどがあげられている

 

 2015年度の介護報酬改定では、介護職員処遇改善加算が充実され(加算未算定状態から月額2万7000円程度の給与増など)(関連記事はこちら)、厚生労働省の調査では、一定の処遇改善が行われている状況です。しかし、現場で働く人は必ずしも十分に「処遇改善」を実感していないようです。

 なお、安倍晋三内閣が6月2日閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」では、介護人材の処遇について「競合他産業との賃金差がなくなるよう、2017年度からキャリアアップの仕組みを構築し、月額平均1万円相当の改善を行う。この際、介護保険制度の下で対応することを基本に、予算編成過程で検討する」ことが明記されました。今後、社会保障審議会の介護給付費分科会などで、どのような仕組みとするのか(介護報酬改定を行うのか、補助金などで対応するのか)を詰めることになります。

今の職場で働き続けたいか、6割弱はYesだが、2割超は分からないと回答

 また介護労働者について、労働条件への不満を聞いたところ、「人手が足りない」50.9%、「仕事内容のわりに賃金が低い」42.3%、「有給休暇が取りにくい」34.6%、「身体的負担が大きい」(腰痛や体力に不安がある)30.4%、「業務に対する社会的評価が低い」29.4%といった声が多くなっています(複数回答)。

 さらに、仕事(職種)に対する希望については「今の仕事を続けたい」と答える人が65.5%と最も多く、勤務先への希望については「今の勤務先で働き続けたい」とする人が57.5%にのぼります。

 もっとも、今の仕事(介護労働)を続けるかどうか「分からない」とする人も15.3%、今の勤務先で働き続けるか「分からない」と答えた人も22.6%おり、介護従事者の確保が難しい状況は深刻です。

6割弱の介護労働者が「今の勤務先で働き続けたい」と考えているが、2割超は「分からない」と回答している

6割弱の介護労働者が「今の勤務先で働き続けたい」と考えているが、2割超は「分からない」と回答している

6割超の介護事業所で「労働時間の希望聴取」や「労働条件改善」を実施

 一方、介護事業所がどのような離職防止・定着促進策を採っているのかを見てみましょう。

 事業所の種類(訪問、施設)にかかわらず、6-8割弱の事業所で▽労働時間(時間帯・総労働時間)の希望を聞く▽職場内の仕事上のコミュニケーションの円滑化を図る(定期的なミーティング、意見交換会、チームケアなど)▽賃金、労働時間などの労働条件を改善する(休暇を取りやすくすることも含める)―といった取り組みが行われています。

 また入所型の施設系事業所では、「非正規職員から正規職員への転換の機会」を設けたり、能力開発を充実(社内研修実施、社外講習会の受講・支援など)したりするところが多い点が目を引きます。

 さらに訪問系の事業所では、「仕事内容の希望を聞く」(持ち場の移動など)といった配慮している状況が伺えます。

 ただし、▽職員の仕事内容と必要な能力などの明示▽管理者・リーダー層の部下育成や動機付け能力向上に向けた教育研修▽子育て支援(子ども預かり所の設置や保育費用支援など)―を行っている事業所は、まだまだ少数派です。

6-8割弱の介護事業所で「労働時間の希望聴取」「コミュニケーションの円滑化」「労働条件の改善」などを行っているが、子育て支援などを行っている事業所はまだまだ少ない

6-8割弱の介護事業所で「労働時間の希望聴取」「コミュニケーションの円滑化」「労働条件の改善」などを行っているが、子育て支援などを行っている事業所はまだまだ少ない

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