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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

迷ったら針路は「医療の価値」向上―鼎談 II群請負人(4)

2017.11.21.(火)

 高度な急性期医療を提供する病院としての絶対的なブランドとも言える「II群」を手に入れるには何が必要なのか、その条件とは――。

 経営分析システム「病院ダッシュボードΧ」リリース直前の緊急企画として、数多くのII群病院の昇格・維持をコンサルティングしてきた「II群請負人」であるグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのシニアマネジャーの塚越篤子、マネジャーの冨吉則行と湯原淳平が、II群昇格・維持の本質を語り合う連載。4回目はII群病院に必要な組織や仕組みについて確認していきます。

定期モニタリングなしに維持なし

湯原:II群病院は急性期病院にとって大きなブランドではありますが、背伸びをしてII群になると、後がつらいです。初回でトップの強い意志とは言いましたが、その意志を貫くには無理がないかという見極めは大事なことです。

 「もう半歩踏み出したらいける」というレベルであれば、トップは自身の背中を押してもいいとは思います。しかし、「もう2歩前に出なければいけない」というレベルであれば、私はコンサルティングの際に「さすがにそれは高過ぎる目標です」と言うようにしています。

冨吉:私もそういう場面はありますし、同じように助言しています。どうしても軽症の症例が集まってしまう地域特性や、ケースミックスを強みにしている病院などがそうですよね。ところで、II群になるために絶対に必要な組織や役割についてはどうでしょう。

塚越:組織であればモニタリング部門でしょう。C病院(公的病院、300床台)のII群維持でも説明しましたが、いくらII群維持に必要な体制ができても、人が替わればすぐにII群維持に必要な要素は変化します。特に、医師は毎年替わるし、もちろん看護師だって替わります。そうした中で、ぶれない何かを恒久的に維持し続けるためには、人が替わっても変わることのないデータを軸に、定期的に経営にたずさわる人たちがデータをモニタリングし続けることが必要で、そうしたことを怠ることなく継続できる仕組みが必要です。

 継続してモニタリングする仕組みは、専門の部門が組織にあることが理想です。ただ、組織的にそういう部門を持つことが難しいということもあるでしょう。その場合、我々のようなコンサルタントを活用するというのは一つの手段。内部で完結させようとすると、どうしても曖昧になってしまい、いつのまにか良い流れが断ち切れしまうこともあります。外部のコンサルタントであれば、何のしがらみもなく、問題点があれば明確にそれを指摘し、改善する流れに軌道修正することができます。

 それがコスト的に難しいというのであれば、やはり「病院ダッシュボード」のような分析ツールを活用すべきでしょう。主要な経営指標にすぐにアクセスできますし、特別な分析能力やデータを読み解く経験などがなくても、直感的に見える化されたデータを知ることができます。

入院サポートセンターを活用せよ

冨吉:A病院(公立、400床台)の事例で地域包括ケア病棟の話がありましたが、確実に術前の在院日数を短くできる入院サポートセンターの導入についてはどうですか。私はII群を目指す、維持するのであれば、積極的に提案するようにしています。術前の検査だけで入院してもらうのは、基本的に「医療の価値(質/コスト)」向上に反することですから。

湯原:II群病院であれば特に、術前の検査入院は好ましくありませんね。

冨吉:そう。だからそれをしっかりとコントロールする意味合いでも、在院日数をコントロールできる組織、仕組みとしての入院サポートセンターは、II群にこそあった方がいいと思っています。

湯原:確かにそうなのですが、必ずしもそれが当てはまらない事例もあります。まさにA病院なのですが、実は入院サポートセンターの導入には反対されているのです。

冨吉:それは驚きですね、なぜですか。

湯原:入院サポートセンターを導入するための人員を確保できないためです。新しい仕組みの導入には、新たな人員が必要であることに加えて、診療密度が下がってしまうことも、反対する理由の一つでした。導入が難しいということであれば、病床管理の機能を強化しようということになり、A病院は地域包括ケア病棟を設置したので、特に重症度を意識して、どのタイミングで急性期病床から地域包括ケア病床へ転棟させるかという優先順位付けをしました。

 本当であれば入退院調整も考慮して入院サポートセンターは導入したいところですが、A病院は地域連携室がしっかり機能しており、入退院調整もうまく機能していますし、院内の病床管理もうまく回っているので、今のところ入院サポートセンターが必須という状況でありません。ただ、この事例は珍しいケースではあるので、II群に必要な組織や仕組みの一つとして、入院サポートセンターはまず、検討すべき項目と思います。

連載◆鼎談 II群請負人
(1)最重要はトップの強い意志
(2)院内を一つにする最強ツール
(3)強みが不明確な病院に患者はこない
(4)迷ったら針路は「医療の価値」向上
(5)入院医療の外来化、制度の遅れにどう対処
(6)診療密度の「境界線病院」の未来
(7)やりたい医療から、求められる医療へ
(8)急性期医療の本質が、そこにある

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門シニアマネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。
解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う(関連記事「病院が変化の先頭に立つために今できるたった3つのこと」)。
解説を担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(掲載報告はこちらこちら)、「日本経済新聞」(掲載報告はこちら)などへのコメント、取材協力多数。
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