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入院医療の外来化、制度の遅れにどう対処―鼎談 II群請負人(5)

2017.11.28.(火)

 高度な急性期医療を提供する病院としての絶対的なブランドとも言える「II群」を手に入れるには何が必要なのか、その条件とは――。

 経営分析システム「病院ダッシュボードΧ」リリース直前の緊急企画として、数多くのII群病院の昇格・維持をコンサルティングしてきた「II群請負人」であるグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのシニアマネジャーの塚越篤子、マネジャーの冨吉則行と湯原淳平が、II群昇格・維持の本質を語り合う連載。5回目は入院医療の外来化について。

外来ケモ推進、制度に大きな疑問

冨吉:入院医療の外来化についてはどうでしょうか。外来手術に特化しなくてもいいのですが、例えばII群で外来手術が増えたりすると、いわゆる手術後の患者が少し休憩するようなリカバリールームが必要になるなどあると思います。そうしたことを含めて外来化全般の対策についてお聞きしたい。

湯原:外来化では、外来ケモ(がん化学療法)をどの程度推進するかで議論することがよくあります。「医療の質的には外来化を推進したい、でも…」というところがありますよね。

冨吉:入院でのケモは診療密度が高まりますからね。

塚越:診療密度を上げるためにケモを入院で実施する、という考えはおかしい。

冨吉:実は先日、ある病院で「外来でやっているケモを入院させるか、入院する患者を1日在院日数伸ばすかどちらが良いと思いますか」と聞かれました。それに対して、「外来がつらいという患者は入院させてください。ただ、在院日数を伸ばすのは絶対にだめです」と答えました。外来がつらいという患者は一定数いるわけですから、そういうことであれば許容の検討はできます。あるいは、診療科によっては初回だけは入院、というのも考えられます。

湯原:一方で、制度上は2回目、3回目のケモを入院でやるのが最も経営的には有利な仕組みになっています。しかも診療密度がものすごく上がる。

 これはII群ではありませんが、G病院(公立、400床台)は先進的ながん医療を提供しており、外来ケモの割合が非常に高いです。ただ、自治体事務部門本部からは「稼働が低い!」と批判を受け続けているのです。その批判を解消したいなら、ケモを入院でやるのが一番簡単です、稼働も上がるし、収益も上がるわけですから。

 こうした場合、コンサルタントの立場としては非常につらい。我々は医療の質は落とさずに経営を改善させなければならないので、正直、ケモの外来化は制度が追いついてないと言わざるを得ない。

冨吉:本当に追いついてない。やはり、外来の点数をもっと上げるべきでしょう。それは放射線療法も手術も同じです。このままでは入院医療の外来化は行き詰まるでしょう。

患者の声とデータが制度を動かす

 例えば、E病院(公的、500床台)は白内障の手術の外来化が大きく進みました。当初、E病院の白内障は重症例が多く、そこまで外来化が推進できるとは思っていませんでした。そこで患者に対して入院と外来のどちらを希望するかアンケートしてみたところ、外来を望む声が多く、それが外来オペを大きく推進する決定打になったのです。

 白内障で言えば、国や医療スタッフが思うほど、入院が必須の重症患者は多くないのです。欧米の多くはほとんどの症例を外来オペで対応していますし、日本だけが特殊ということもないでしょう。

湯原:とある有名病院の白内障手術の平均在院日数が5日だったということに驚いたことがありました。今でこそ外来化が進みましたが、データでしっかりとこの病院の経営部門の方に説明して納得いただくまでは、その状況に全く疑問を抱いていなかった。

 やはりこうした点においても、データをしっかりと見ることは重要ですし、ベンチマーク分析は不可欠です。II群のような地域の雄のような病院こそ、井の中の蛙に陥らないためにも、他病院の状況を知り、自病院の立ち位置をしっかりと把握しておくことが欠かせません。

 この病院が白内障手術の状況に問題があることに気付いたのは、「病院ダッシュボード」がきっかけでした。冷静に現状を把握するのに、ベンチマーク分析ほど有用なものはないでしょう。ベンチマーク分析のあらゆるノウハウが、「病院ダッシュボード」には詰め込まれています。入院医療の外来化のように、制度が追いついていない分野があることは確かです。しかし、そうした現状に嘆くことなく、まずはこうしたツールを用いながら、できることから着手し始めることで、結果的に医療現場が国を動かしていきます。

連載◆鼎談 II群請負人
(1)最重要はトップの強い意志
(2)院内を一つにする最強ツール
(3)強みが不明確な病院に患者はこない
(4)迷ったら針路は「医療の価値」向上
(5)入院医療の外来化、制度の遅れにどう対処
(6)診療密度の「境界線病院」の未来
(7)やりたい医療から、求められる医療へ
(8)急性期医療の本質が、そこにある

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門シニアマネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。
解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う(関連記事「病院が変化の先頭に立つために今できるたった3つのこと」)。
解説を担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(掲載報告はこちらこちら)、「日本経済新聞」(掲載報告はこちら)などへのコメント、取材協力多数。

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