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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

急性期医療の本質が、そこにある―鼎談 II群請負人(8)

2018.1.23.(火)

 高度な急性期医療を提供する病院としての絶対的なブランドとも言える「II群」を手に入れるには何が必要なのか、その条件とは――。

 経営分析システム「病院ダッシュボードΧ」リリース直前の緊急企画として、数多くのII群病院の昇格・維持をコンサルティングしてきた「II群請負人」であるグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのシニアマネジャーの塚越篤子、マネジャーの冨吉則行と湯原淳平が、II群昇格・維持の本質を語り合う連載。最終回は、II群病院を目指すことが、急性期医療の本質を目指すことにつながることを確認します。

「II群」という結果はどうでもいい

冨吉:個人的には、一定規模の大きな組織がII群を目指さないのはどうかと思っています。確かに、何よりも病院ごとの理念やビジョンがあり、それをしっかりとやった上で、II群になれたら良しとする考えもあるかと思います。ただ、その考えはせっかくのII群という経営ツールを、検討もせずに手放すことにもつながるのではないかと思っているのです。

塚越:確かに、トップが「取りにいこう!」と本気で思わない限り、II群にはなれないですから。

湯原:II群というか、とにかく急性期を指向すること、「急性期らしさ」を徹底的に追求すべきということですよね。それが全病床ではなくても、ある特定の決めた病床に関しては。

冨吉:そう、経営者にとって、急性期を極めるという点においては、II群というツールは入りやすいし、展開もさせやすい。「急性期医療とは何か」という問いに対して、本気で追求し、自らの病院の在り方を振り返ることができる。

 「自分たちの病院には何が足らないのだろう」と考える。例えば、診療科構成かもしれない。であれば、他病院を含めた外部環境分析をするわけで、その中で他病院より優れた診療科、他病院には絶対に勝てない診療科などが分かってくる。その上での診療科構成ですよね。

 II群維持には、こうした急性期病院を成り立たせる要因、急性期病院として考えるべき要因が凝縮されています。だからこそ、どんな理由があるにせよ、一定規模の急性期病床があるのであれば、一度はII群を目指した方が、何より自分たちの病院を本当によく知ることができるきっかけになると思うのです。

湯原:結果的にあきらめたとしても、ということですよね。

冨吉:そう、結果はどうでもいいのです。II群という経営ツールに触れたかどうか、それを使いこなそうとして、自病院の現状に向き合えたかどうか、が何より重要なのですから。

ツール活用の肝は集患

 これまでII群病院の条件、急性期病院の本質について議論してきました。個人的には、II群病院を目指すことには、急性期病院のあるべき姿が凝縮されており、急性期病院を名乗る以上、II群は一度は目指すべき目標であると主張してきました。皆さんはいかがですか。

塚越:II群は最強の経営ツールであるということと、そのツールを使いこなすためには集患は欠かせないということにつきます。

 医療は結局、現場スタッフの志に寄るところが大きいです。ただ、その志が思わぬ方向に向かったり、その志を見える化したりするためにも、データが必要であることは明らかです。院内でデータを可視化できる体制が整っているのであれば問題ありませんが、そうでなければ、我々のようなコンサルタントを活用するか、「病院ダッシュボード」のようなツールを活用すべきです。医療現場には情熱(医療スタッフの想い)と冷静さ(データ)の両立が必要ですから、それらを具現化できる手法が欠かせません。

湯原:II群は本当によくできた経営ツールだと思います。ですから急性期を指向する病院であれば、必ず一度はII群を意識した本気の検討をすべきだと思います。

 一方、改めて経営トップの意志の強さの重要さを感じています。病院経営は、単に経営を良くすることがゴールではなく、本質は医療の質を高め続け、その高品質の医療を途切れなく提供し続けることにあります。地域特性もある。制度の遅れもある。組織や地域のしがらみもある。だから病院経営は、本当に難しい。

 その難しさの中で、意志の強さを貫き通すことは、生半可なことではないでしょう。荒波とも言える中で孤軍奮闘するトップを、そんな孤高のトップを信じて歩み続ける病院を、私たちはこれまでのコンサルティングノウハウと医療ビッグデータを用いることで、最大限のサポートをさせていただきたいと思っています。

連載◆鼎談 II群請負人
(1)最重要はトップの強い意志
(2)院内を一つにする最強ツール
(3)強みが不明確な病院に患者はこない
(4)迷ったら針路は「医療の価値」向上
(5)入院医療の外来化、制度の遅れにどう対処
(6)診療密度の「境界線病院」の未来
(7)やりたい医療から、求められる医療へ
(8)急性期医療の本質が、そこにある

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門シニアマネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。
解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う(関連記事「病院が変化の先頭に立つために今できるたった3つのこと」)。
解説を担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(掲載報告はこちらこちら)、「日本経済新聞」(掲載報告はこちら)などへのコメント、取材協力多数。
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