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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

院内を一つにする最強ツール―鼎談 II群請負人(2)

2017.11.7.(火)

 高度な急性期医療を提供する病院としての絶対的なブランドとも言える「II群」を手に入れるには何が必要なのか、その条件とは――。

 経営分析システム「病院ダッシュボードΧ」リリース直前の緊急企画として、数多くのII群病院の昇格・維持をコンサルティングしてきた「II群請負人」であるグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのシニアマネジャーの塚越篤子、マネジャーの冨吉則行と湯原淳平が、II群昇格・維持の本質を語り合う連載。2回目は、「II群」を一つのツールとして見る側面に着目します。

愚直なまでに曲げない信念

冨吉:A病院(公立、400床台)の事例は、トップの勇気ある決断がよく分かる素晴らしい事例ですよね(関連記事『最重要はトップの強い意志―鼎談 II群請負人(1)』)。一方、同じような明暗が一つの病院で起きた事例もあります。

 ある自治体のB病院(公立、700床台)は、II群になれる可能性があるにもかかわらず、減収傾向にある経営状況から平均在院日数のさらなる短縮に本格的に踏み切れず、2回もII群を逃してしまった。当時の院長は、稼働が下がって空床が増え、さらに減収することを恐れたのです。ただ、トップが変わり新院長着任後、即座にII群の獲得の方針を示し、どんなことがあってもその方針を曲げず、見事、II群昇格を果たしました。ひたすらII群昇格だけを目指し、「病院ダッシュボード」を使って愚直なまでに定期的に平均在院日数や診療密度をチェックし、細かな改善を積み重ねていった結果です。

塚越:愚直なまでに信念を曲げないというのは、とても重要。C病院(公的病院、300床台)はB病院と異なり、最初からII群だったのですが、II群を維持することも本当に難しい。だから「II群を死守する」を大方針とし、そのための活動をものすごく徹底している。II群というのは、ある種の完成された一つの姿であり、とても分かりやすい目標になる。だから、「II群を死守する」というのは、院内すべての職員のベクトル合わせにとても使いやすい「ツール」とも言えるのです。

冨吉:確かに、いいツールですよね、II群って。院長にとっては、院内はもちろん、院外にも一番訴えやすいキーワードですから。

塚越:そう。だからC病院は常に緊張感を持って、在院日数のマネジメントであったり、集患対策に日々汗をかいている。II群は院内をまとめるツールであり、院外に対するブランディングの要素であり、それをしっかりと維持することが、その地域の中でもしっかりとしたステータスを維持し、患者を守ることにも直結します。

 ですから、C病院は常に診療科ミーティングも含めて、ベンチマーク分析で常に立ち位置を気にし、我々コンサルタントと日々、改善を続けている。それを毎日、毎月、毎年と何度も何度も。現在、C病院の在院日数などは非常に短いですが、それでも診療科によっては医師が入れ変わったりで、ちょっとでも気を抜くと、すぐにII群維持に重要な経営指標の数値が下がってしまう。それがII群を構成するさまざまな要素の特徴。だから自分たちの立ち位置を確認し続ける愚直さは、ものすごく大事なのです。

「急性期の本質」が凝縮されている

冨吉:同じことの繰り返し、フォローアップはすごく重要だと思います。D病院(公立、800床台)のII群昇格もお手伝いさせていただきましたが、最初のきっかけは当時の院長が、複数県またがるある地方の「ナンバーワン病院になる」と宣言したことがきっかけ。そこで「ナンバーワン」を掘り下げた結果、必然的に行き着いたのはやはりII群。現場の医師や看護師にとっても、突き詰めれば万全の体制で地域住民を守りたいわけで、そのためにはナンバーワンの病院であり続けることに反対する理由はないわけです。

塚越:基準も明確。例えば、診療密度だったら在院日数のマネジメントであるし、外保連指数も手術の件数や難易度であったりするし、内科系であれば重症な内科系疾患・救急がどれだけ取れているかも一つの指標になってくる。まさに「急性期病院の在るべき姿」という本質が全部詰まっているのが、II群というツールと言えます。

湯原:II群になることへ踏み切れないでいる病院もあります。在院日数を少し短縮したらII群になれるのですが、収益が数千万円下がるからです。

冨吉:ただ、これまで議論したように、II群は本質を追求するためのツールというところはあります。ですから、その数千万円は投資と考えて、投資によって集患し、その分を埋められればいいわけですよね。

湯原:その通りです。II群になったから何かがよくなるというわけではなく、II群を本質追求のツールと捉えて、そのツールをしっかりと使いこなすことが重要だと思います。ですから、II群になってもあまり医療の側面も経営の側面で見ても変わらない病院もあれば、ものすごくジャンプアップした病院もあるわけです。

塚越:II群そのものが収益に直結するかどうかは、全く別の話ということですよね。II群を維持できるということは一番大事なところで、トップダウンがどれだけ効いているのかを示す一つの指標。また、地域の中で自病院がどのような機能を持った病院なのかが周知徹底されているということの証しでもあるのではないでしょうか。

連載◆鼎談 II群請負人
(1)最重要はトップの強い意志
(2)院内を一つにする最強ツール
(3)強みが不明確な病院に患者はこない
(4)迷ったら針路は「医療の価値」向上
(5)入院医療の外来化、制度の遅れにどう対処
(6)診療密度の「境界線病院」の未来
(7)やりたい医療から、求められる医療へ
(8)急性期医療の本質が、そこにある

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門シニアマネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。
解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う(関連記事「病院が変化の先頭に立つために今できるたった3つのこと」)。
解説を担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(掲載報告はこちらこちら)、「日本経済新聞」(掲載報告はこちら)などへのコメント、取材協力多数。
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