医療経済実態調査の回答率アップ目指し、回答病院等へ「経営状況」フィードバック―中医協・調査委実施小委
2018.11.14.(水)
2020年4月に予定される次期診療報酬改定に向けて、来年(2019年)、医療機関等の経営状況を詳しく調査する(医療経済実態調査)。その際、回答率をより高め、より信頼できる調査とするために、例えば「回答病院に対し、経営状況をフィードバックする」などのインセンティブを付与する、などの対応を図ることとする―。
11月14日に開催された、中央社会保険医療協議会の調査実施小委員会では、こういった方針が了承されました。
病院等の「損益率」分布を踏まえ、回答病院等の立ち位置などフィードバックする考え
診療報酬は保険医療機関の収入の中心となるため、診療報酬改定にあたっては「医療機関などの経営がどのような状況にあるのか」などを捉えることが必要不可欠です。このため改定前後の経営状況を把握するために医療経済実態調査が行われ、その結果が改定における重要な基礎資料となります。
医療経済実態調査は、医療機関や薬局などの経営状況を調べる「医療機関等調査」と、保険者の財政状況を調べる「保険者調査」の2つで構成されます。
前者の「医療機関等調査」は、全国の医療機関から対象施設を抽出しアンケート方式で実施されるため、有効回答率を高めることが、結果の信頼性確保にとって非常に重要となります(後者の保険者調査は、各保険者の決算データが用いられるため、実質的に100%の回答となる)。回答率の向上は、各種統計調査において永遠のテーマとも言えますが、調査実施小委では今般、次のような方向を固めました。
(1)回答意欲の喚起
▼前回調査(2018年度改定の基礎資料となった、2017年実施の第21回調査)の結果概要を、調査票等と併せて送付する
▼診療側関係団体(医師会や病院団体など)への協力依頼を引き続き実施する
▼回答のインセンティブとして、「回答施設に対して当該施設の経営状況を分かりやすくフィードバック」する
(2)回答負担の軽減
▼フォント(文字の種類・大きさ)やレイアウトなどを工夫し、より見やすく記入しやすい調査票に変更する
▼調査票等の作成にあたって「税理士・公認会計士等の助言」を活用する
▼記入者負担の軽減や誤記入防止の観点から、電子調査票の利用を促進する
この中で、「回答施設に対して当該施設の経営状況を分かりやすくフィードバック」する取り組みが、目を引きます。厚労省保険局医療課の担当者は、「詳細は今後詰めていく」とした上で、例えば「医療機関等の損益率分布を示し、『貴院はどの位置にある』といった点を情報提供する」ことなどが考えられると説明しています。
医療経済実態調査に限らず、調査への協力は、医療機関等にとって「少なからぬ負担になっている」と指摘されます。調査結果が、個別医療機関等に何らかの形で還元されることは、一定程度のプラス効果(回答率向上)につながることでしょう。具体的なフィードバック内容に期待が集まります。
消費税対応の過不足に迅速に対応するため、医療機関等の課税経費率を調査毎に把握
また、11月14日の調査実施小委では、調査項目について、例えば次のような見直しを行う方向も確認されました。
▽保険薬局について、「同一グループ保険薬局の店舗数別の経営状況」を把握するため、「同一法人の保険調剤を行っている店舗数」から「同一グループの保険調剤を行っている店舗数」へ変更する
→大規模な保険薬局チェーンについては、利益率が非常に高いと指摘され、適正化の対象となっており、今後もその方針が維持される見込みと言える
▽病院、一般診療所、歯科診療所、保険薬局について、消費税にかかる費用をより詳細に把握する観点から、▼材料費のうちの「特定保険医療材料費」▼経費のうちの「消費税課税対象費用」▼その他の医業・介護費用のうちの「消費税課税対象費用」—という調査項目を設ける(ただし、医療機関等の負担を考慮し、これら項目に未回答であっても、回答全体は無効とはしない)
→改定の都度に「消費税負担」と「補填状況」を把握することで、過度な「補填不足」や「バラつき」などが生じていないかをチェックすることが可能となる
▽医療機関等の負担を軽減するため、未活用の調査項目を削除・統合する(例えば、「技能職員・労務員」と「その他職員」を統合する、など)
消費税関係については、「消費税対応改定後に課税経費率が変化し、それが1つの要因となって、結果、大きな補填の過不足やバラつきが生じしまった」という点に鑑み、「改定の都度に課税経費率の変化を把握し、迅速に対応できる」仕組みを整備するものと言えます(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
近く、調査票を固めた上で、▼来年(2019年)5月末に医療機関等の調査票を配布▼調査票への記入・回答(2019年7月末を一応の期限とするが、柔軟に対応する)▼2019年11月頃に中医協へ回答結果の報告―となる見込みです。
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