白血病等治療薬の「キムリア点滴静注」など、DPCの高額医薬品として出来高算定に―厚労省
2019.5.23.(木)
画期的な白血病・悪性リンパ腫治療薬である「キムリア点滴静注」を用いたCAR-T療法をDPC病棟で実施する場合など、高額ゆえに既存のDPC点数では評価しきれないことから、当面、薬剤以外のすべての診療行為について出来高算定とする―。
厚生労働省は5月21日に、通知「『厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する費用の額の算定方法の一部改正等に伴う実施上の留意事項について』の一部改正について」および、通知「『厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する費用の額の算定方法第一項第五号の規定に基づき厚生労働大臣が別に定める患者について』の一部改正について」を発出し、こうした点を明らかにしました(厚労省のサイトはこちら(告示)とこちら(前者の通知)とこちら(後者の通知))。
分岐のある医薬品の類似薬、当該分岐に含める
DPC制度では、疾患ごとに、医療資源投入量等を勘案して▼手術を行ったか▼処置を行ったか▼特別の医薬品を使用したか―などで分類し(分岐を設ける)、それぞれにDPCコードと点数を設定(診断群分類)。分岐が、あたかも木の枝のように見えることから「tree図」と呼ばれます。
ところで、すでに分岐が設けられている医薬品(X)の類似薬(Y)が保険収載された場合、Y類似薬の薬価は原則してXと同額(1日薬価で合わせる)に設定される、つまり医療資源投入量が同じになることから、当該類似薬(Y)についてもXと同じ分岐とすることが妥当でしょう。
5月15日の中央社会保険医療協議会・総会では、こうした「分岐が設けられている医薬品」の類似薬について保険収載を認め、併せて、類似薬を同じ分岐に位置付けることが了承されました。前者の通知は、その旨を次のように明確化するものです(厚労省のサイトはこちら)。
▽「ペフィシチニブ臭化水素酸塩」(販売名:スマイラフ錠50mg、同100mg)を、【070470 関節リウマチ】において「バリシチニブ」(販売名:オルミエント錠4mg、同2mg)の分岐に含める
▽「リサンキズマブ(遺伝子組換え)」(販売名:スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL)を、【080140 炎症性角化症】において「グセルクマブ」(販売名:トレムフィア皮下注100mgシリンジ)の分岐に含める
▽「アパルタミド」(販売名:アーリーダ錠60mg)を、【110080 前立腺の悪性腫瘍】において「エンザルタミド」(販売名:イクスタンジカプセル40mg、イクスタンジ錠40mg、同80mg)の分岐に含める
一定の基準満たす高額な新薬、当面、出来高算定とする
DPC制度では、急性期病棟に入院する患者について▼入院料▼検査▼画像診断▼注射▼投薬▼1000点未満の処置▼薬剤料―などを包括評価し、その点数(DPC点数)は「同じ診断群分類に関する過去の治療実績(医療資源投入量)」に基づいて設定されます。
新薬が登場した場合、ある疾病の治療内容について「従前用いられていたA薬剤からB新薬への置き換え」という変化が生じます。その際、A薬剤とB新薬の価格に大きな乖離がなければ、設定されているDPC点数のままで医療資源投入量を賄うことができますが、A薬剤に比べてB新薬が高額な場合にDPC点数を維持すれば、「DPC点数<医療資源投入量」となり、病院の「持ち出し」が生じてしまいます。
これを放置すれば、新薬の使用が進まず、患者に対し質の高い医療サービスが提供されなくなってしまいます。
そこで中央社会保険医療協議会では、一定の基準を満たした場合(新薬の標準的な使用における薬剤費(併用する医薬品を含む)の見込み額が、新薬を使用しない症例の薬剤費の84パーセンタイルを超える)には、「高額な新薬はDPCの包括報酬の対象外とし、その新薬を用いた治療は出来高算定とする」(薬剤以外の入院料や検査料などもすべて出来高算定とする)というルールを設けています。症例の蓄積を待ち、後の診療報酬改定時に、▼従前の包括評価(点数)に含める▼新たな分岐を設ける▼さらなる症例数確保のため出来高算定を続ける―のいずれとするか、個別に検討していくことになります。
5月15日の中医協総会で「高額な薬剤」(一定の基準を満たした)が保険収載されたことや、すでに保険収載されている「高額な薬剤」(一定の基準を満たした)の効能効果追加が認められたことなどから、中医協は、次の医薬品を「次期診療報酬改定まで、出来高算定とする」ことを決定。後者の通知は、その旨を明確にするものです(厚労省のサイトはこちら)。
▽「アダリムマブ(遺伝子組換え)」(販売名:ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0.4mL、同80mgシリンジ0.8mL、同40mgペン0.4mL、同80mgペン0.8mL)
→【080010 膿皮症】および【080210 ざ瘡、皮膚の障害(その他)】について出来高算定とする(DPCコード:080010xxxx0xxx、080010xxxx1xxx、080210xxxxxxxx)
▽「ランジオロール塩酸塩」(販売名:オノアクト点滴静注用50mg、同150mg)
→【050070 頻脈性不整脈】について出来高算定とする(DPCコード:050070xx99000x、050070xx99001x、050070xx99100x、050070xx9930xx、050070xx9700xx、050070xx01x0xx、050070xx01x10x)
▽「リツキシマブ(遺伝子組換え)」(販売名:リツキサン点滴静注100mg、同500mg)
→【130050 慢性白血病、骨髄増殖性疾患】について出来高算定とする(DPCコード:130050xx99x3xx、130050xx97x20x)
▽「エラペグアデマーゼ(遺伝子組換え)」(販売名:レブコビ筋注2.4mg)
→【130150 原発性免疫不全症候群】について出来高算定とする(DPCコード:130150xx99x1xx、130150xx97x0xx)
▽「チオテパ」(販売名:リサイオ点滴静注液100mg)
→【010010 脳腫瘍】、【02001x 角膜・眼及び付属器の悪性腫瘍】、【03001x 頭頸部悪性腫瘍】、【040010 縦隔悪性腫瘍、縦隔・胸膜の悪性腫瘍】、【060030 小腸の悪性腫瘍、腹膜の悪性腫瘍】、【070030 脊椎・脊髄腫瘍】、【100180 副腎皮質機能亢進症、非機能性副腎皮質腫瘍】、【180050 その他の悪性腫瘍】について出来高算定とする(DPCコード:010010xx9904xx 、010010xx9905xx、010010xx9906xx、010010xx9907xx、010010xx9908xx、010010xx97x4xx、010010xx97x5xx、010010xx97x6xx、010010xx97x7xx、010010xx97x8xx、010010xx01x4xx、010010xx01x5xx、010010xx01x6xx、010010xx01x7xx、010010xx01x8xx、02001xxx99x1xx、03001xxx99x3xx、03001xxx99x4xx、03001xxx99x5xx、03001xxx97x3xx、03001xxx97x4xx、03001xxx97x5xx、03001xxx97x60x、03001xxx0103xx、03001xxx0104xx、03001xxx0113xx、03001xxx0114xx、040010xx99x2xx、040010xx99x30x、040010xx99x31x、040010xx97x2xx、040010xx97x3xx、060030xx99x2xx、060030xx99x3xx、060030xx99x4xx、060030xx99x5xx、060030xx97x2xx、060030xx97x30x、060030xx97x31x、060030xx97x4xx、060030xx01x3xx、060030xx01x4xx、070030xx9901xx、070030xx97x1xx、070030xx01x1xx、100180xx990x0x、100180xx990x1x、100180xx991xxx、100180xx97x1xx、100180xx02xxxx、100180xx01xxxx、180050xx99xxxx、180050xx97xxxx)
▽「乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン」(販売名:ラビピュール筋注用)
→【161060 詳細不明の損傷等】について出来高算定とする(DPCコード:161060xx99x0xx、161060xx97x0xx)
▽チサゲンレクルユーセル(販売名:キムリア点滴静注)
→【130010 急性白血病】および【130030 非ホジキンリンパ腫】について出来高算定(DPCコード:130010xx99x2xx、130010xx99x3xx、130010xx99x5xx、130010xx99x6xx、130010xx97x2xx、130010xx97x3xx、130010xx97x4xx、130010xx97x5xx、130010xx97x6xx、130010xx97x7xx、130030xx99x2xx、130030xx99x30x、130030xx99x31x、130030xx99x40x、130030xx99x41x、130030xx99x50x、130030xx99x51x、130030xx99x6xx、130030xx99x7xx、130030xx99x8xx、130030xx97x2xx、130030xx97x3xx、130030xx97x40x、130030xx97x41x、130030xx97x50x、130030xx97x51x、130030xx97x6xx、130030xx97x7xx)
また、アトピー性皮膚炎治療薬の「デュピルマブ(遺伝子組換え)」(販売名:デュピクセント皮下注300mgシリンジ)について、「気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症または難治の患者に限る)」に適応が拡大されたことを踏まえ、従前の【080050 湿疹、皮膚炎群】(DPCコード:080050xxxxxxxx)に加え、新たに【040100 喘息】についても出来高算定となります(DPCコード:040100xxxxx00x、040100xxxxx01x、040100xxxxx10x、040100xxxxx11x、040100xxxxx2xx)。
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