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長期収載品の段階的価格引き下げルール、2020年度改定で厳格化すべきか―中医協・薬価専門部会

2019.10.3.(木)

 長期収載品から後発品への置き換えを進めるため、長期収載品の段階的価格引き下げルール(Z2・G1・G2など)を2020年度の次期薬価制度改革でどのように見直していくべきか―。

 9月25日に開催された中央社会保険医療協議会・薬価専門部会では、こうした議論が行われています。

9月25日に開催された、「第156回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

 

オーソライズドジェネリック出現の場合、長期収載品価格を一気に引き下げるべきか

薬価専門部会では2020年度の薬価制度改革に向けた第2ラウンド議論を本格化させています。9月25日には「長期収載品の段階的引下げまでの期間の在り方」を議題としました。

2018年度の前回改定では薬価制度の抜本改革が行われ、製薬メーカーに対し「長期収載品に依存した経営」から「より高い創薬力を持つ産業構造」への転換を進めることとし、長期収載品の価格を段階的引き下げる仕組みが強化されました。その大枠は次のようなものです。

▽後発品出現の5年後からZ2ルール(後発品への置き換え率に応じた引き下げ)を厳格化する

▽Z2適用から5年後に「後発品置き換え率に着目した新たなG1・G2ルール」を適用する

【G1】後発品置き換え率が80%以上の品目の価格は「後発品価格の2.5倍」とし、2年ごとに段階的に価格引き下げを行い、6年度に「後発品と同価格」とする

【G2】後発品置き換え率が80%未満の品目の価格は「後発品価格の2.5倍」とし、その後、2年ごとに、G1より緩やかに価格を引き下げ、最終的に「後発品価格の1.5倍」とする

【C】G1・G2の補完としてZ2基準を準用し、「G1・G2による引下げ後の薬価」と「Cによる引下げ後の薬価」のうち、いずれか低い薬価を適用する


 
 
 この新ルール適用後の状況を分析したところ、概ね「後発品への置換えが進む」ものの、一部品目で「後発品への置き換え率が下がってしまった」ものもあることが分かりました。具体的には、G1対象の、つまり「後発品への置き換えが相当程度進んでいる」注射薬がそれです。この理由は必ずしも明確ではありませんが「長期収載品の価格が下がっていけば、後発品の『価格優位性』が薄れていき、信頼性の高い先発品(長期収載品)を医療現場が選択するようになる」ということが1つ考えられそうです。

 
 こうした最新動向も踏まえたうえで、厚労省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官は(1)長期収載品の段階的引き下げまでの期間をどう考えるか(2)Z2・Cの水準をどう考えるか―という2つの論点を提示しました。

このうち(1)は、前述した「Z2適用までの5年間(後発品出現から)」「G1・G2適用までの5年間(Z2適用から)」を短縮すべきか否かというテーマです。

これらの期間を短縮すれば、より早期に長期収載品(先発品)の価格が下がっていくことから、薬剤費全体が縮小していきます。このため支払側からは「期間短縮」を求める声が出ています。

吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「G1・G2適用までの期間は、後発品メーカーの増産体制準備期間と捉えている(長期収載品から後発品への置き換えが進めば、当然、後発品の需要が増えるため)。したがって、少なくとも後発品への置き換えが相当程度進んでいる『G1』については、増産体制がある程度整っていると考えられ、置き換え期間を短縮してもよいのではないか」と、また幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「そもそもZ2適用などの『5年間』という置き換え期間は、2013年の中医協論議の頃に『2018年(5年後)に後発品使用割合を60%以上とする』との政策目標を踏まえて設定されたと理解している。しかし、今や後発品使用割合の政策目標は『2020年9月に80%以上とする』と変わっている。置き換え期間は早急に見直すべき」と訴えています。

これに対し、製薬メーカーの立場で参画する上出厚志専門委員(アステラス製薬株式会社上席執行役員渉外部長)は「G1・G2ルールの導入からまだ1年半しか経過していない」とし、置き換え期間短縮の検討は時期尚早と訴えました。

この点、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)も「現時点では十分なデータが揃っているとは言えない。置き換え期間短縮は慎重に検討すべき」とコメントしています。

 
もっとも、先発品(長期収載品)と▼有効成分▼原薬▼添加物▼製法―などが同一の後発品(いわゆるオーソライズドジェネリック(AG))が出現したケースについては、松本委員も「置き換え期間短縮を検討すべき」との立場をとっています。

田宮薬剤管理官の調査・分析によれば「AGが登場した場合、通常の後発品が登場した場合に比べて後発品への置き換えが早期に進んでいる」状況が見えてきています。

 
吉森委員は「AGについては先発品への配慮は不要で、置き換え期間は短縮すべき」と、幸野委員は「AGについては、言わば『先発品メーカーから関連子会社などに権利を譲り渡す』イメージだ。AG上市の時点で猶予なく長期収載品(先発品)の価格を後発品と同一に引き下げるべきである」と提案しています。

このように中医協委員からは「AG出現の場合にはZ2・G1・G2の適用期間(置き換え期間)を短縮すべき」との意見が複数出ていますが、田宮薬剤管理官は「極端な見直しを行えばAG出現を阻害してしまう可能性もある」ことを指摘しており、今後、さらに議論を深めていきます。

 
 
また(2)の論点は「後発品への置き換えが進まない長期収載品について、薬価の引き下げをより厳格に行っていくべきか」というテーマです。この点、松本委員は「データを踏まえて適切な水準を検討していくべき。ただし、医療現場からすれば、長期収載品(先発品)と後発品の双方について安定供給が確保されることを求めている点にも留意が必要である」との考えを述べました。こちらは、薬価調査結果などを踏まえて、具体的な水準を検討していくことになるでしょう。

 
 
 

 

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