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診療報酬改定セミナー2024 能登半島地震 災害でも医療は止めない!けいじゅヘルスケアシステム

台風19号の被災者受け入れで看護必要度等満たせなくなっても、当面は従前の入院基本料など算定可能―厚労省

2019.10.15.(火)

台風19号(2019年)で被害にあわれた方に、適切に良質な医療を提供できるよう、厚生労働省は診療報酬や医療保険の手続きなどについて特例を設けることを明らかにしました(10月15日付の事務連絡「令和元年台風19号に伴う災害の被災に伴う保険診療関係等及び診療報酬の取扱いについて」)

過去の災害と同様に、診療報酬や訪問看護療養費の特例を実施

台風や地震、大雨などが発生した際、医療機関そのものが被害を受けることがあります。また、当該医療機関そのものが被害を受けずとも、近隣の医療機関が被害にあい、入院患者を受け入れるケースもあります。また、退院間近の患者宅が被災し、やむを得ず退院を延期しなければならないといったことも生じます。

診療報酬の届け出・算定に当たっては厳格なルールが定められていますが、緊急時には、医療現場の混乱を避け、患者に良質な医療提供が可能となるよう、厚生労働省は一定の柔軟な対応をとってきています。例えば、一時的に定員を超過する入院患者を受け入れざるを得ない状況でも診療報酬の減額は行わない、有効期間を過ぎた訪問看護指示書の利用を一定程度認めること、被保険者証を提示できない患者にも保険診療を提供できることなど多岐にわたる特例が設けられます。

今般、日本列島に大きな爪痕を残した台風19号(2019年)でも、医療機関を含めた多くの方が被災しており、厚労省は特例措置を行うことを決定しました。

看護配置や月平均夜勤時間、1割以上変動しても変更届け出は不要

保険診療を提供する上では、人員や設備の整備、一定の勤務体制の確保などが必要です(例えば施設基準など)が、緊急時にもこの取り扱いを厳格に運用すれば、被災者に医療を提供する医療機関が不利益(診療報酬の減額など)を受けてしまいかねません。そこで、厚労省は次のような特例を実施することを決定しました。

(1)台風19号(2019年)の被災者を受け入れたことにより超過入院となった保険医療機関について、当面の間、定員超過による診療報酬の減額は行わない。またDPC病院については当面、従来どおりDPC点数表に基づく算定を継続できることとする

(2)被災者の受け入れによる入院患者が一時的な急増、あるいは職員を被災地に派遣したことによる一時的な人員不足によって入院基本料の施設基準が満たせなくなっても、当面「月平均夜勤時間数」については1割以上の一時的な変動があったとしても変更届け出は行わなくてもよい

(3)(2)と同様の場合、「1日当たり勤務する看護要員の数」、および「看護要員と入院患者の比率」「看護師の比率(看護師および准看護師)」については、当面、1割以上の一時的な変動があったとしても変更届け出は行わなくてもよい

(4)(2)と同様の場合、DPC対象病院への参加基準を満たさなくなっても、届け出を行わなくてもよい

(5)(2)-(4)について入院患者の一時的な急増や職員派遣による一時的不足について記録・保管しておく

(6)被災地以外の医療機関にも上記(2)-(5)を適用する(被災地から患者等が移送されてくることが考えられる)



このほか、厚労省は、次のような被災地の特例も明らかにしています。

●被災地の医療機関において

▽日本赤十字社の救護班、JMAT、DMATなどボランティアで避難所・救護所等で行われる診療は保険診療としては取り扱わない(一部負担金徴収も不可)

▽医師等が各避難所などを自発的に巡回し、診療を行った場合には、保険診療として取り扱うことはできない(かかりつけの患者を偶然診療した場合でも同様)。災害救助法の適用となる医療については、県市町村に費用を請求する

▽医師等が、避難所に居住する「疾病、傷病のために通院による療養が困難な患者」に対し、当該患者が避難所にある程度継続して居住している場合に、定期的な診療が必要と判断され、患者の同意を得て継続的に避難所を訪問して診察を行った場合に、【訪問診療料】当を算定できる(通院可能患者では当然不可)

▽上記で、複数人に同一日に訪問診療を行う場合には「同一建物居住者」として取り扱う。なお、避難所などにおいて「同一世帯の複数の患者」に診察をした場合は、「同一建物居住者」の取扱いではなく、1人目は「同一建物居住者以外の場合」を算定し、2人目以降は「初診料・再診料・外来診療料・特掲診療料」のみを算定する

▽被災前から在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料の対象となる医学管理を行っている患者が避難所に避難し、当該患者に当該医学管理を継続して行う場合、当面、被災前の居住場所に応じた区分に従って当該管理料を算定できる。ただし、避難場所が分散し、被災前の居住場所と比べて「単一建物居住患者の人数」が減少した場合には、減少後の人数に基づいて算定できる

▽避難所などにある程度継続して居住する患者であって、定期的に外来での診療を受けている者からの求めに応じて、当該診療を行っていた医師が避難所などに往診を行った場合、【往診料】は算定できるが、2人目以降は【再診料】を算定する

▽やむを得ず医療法上の許可病床数を超過して入院させた場合には、当面、次のような取り扱いとする

▼実際に入院した病棟(病室)の入院基本料・特定入院料を算定することが原則

▼会議室など病棟以外に入院する場合には、必要とされる診療が行われている場合に限り、当該医療機関が届出を行っている入院基本料のうち、当該患者が入院すべき病棟の入院基本料を算定する

▼本来入院できない病棟への入院(精神病棟への精神疾患ではない患者の入院など)、診療報酬上の施設基準の要件を満たさない患者の入院(回復期リハビリ病棟への要件を満たさない患者の入院など)については、入院基本料を算定する病棟では当該入院基本料を算定し、特定入院料を算定する病棟では「医療法上の病床種別と当該特定入院料が施設基準上求めている看護配置」により、算定する入院基本料を判断する(一般病床の回復期リハ病棟では、看護配置が15対1ゆえ【地域一般入院基本料】を算定)

▽被災した他医療機関から転院患者を受け入れた場合、転院患者を含めて平均在院日数を計算する。ただし、施設基準(急性期一般1であれば18日以内)を超過しても、当面は当該入院基本料の算定を継続できる

▽被災者などを受け入れた場合、当面、当該患者を除いて特定入院料の施設基準の要件を満たすかどうかを判断する(被災地以外でも同様)

▽災害などで診療の継続が困難となった他医療機関から転院患者を受け入れた場合、入院日は「当該医療機関に入院した日」とする(被災地以外でも同様)

▽被災地で透析設備が使用不可能となっている場合に、震災以前から当該医療機関に入院して透析を行っている患者が、真にやむを得ない事情で他医療機関で透析を受けた場合、入院基本料・特定入院料の控除は行わない(被災地以外でも同様)

▽DPCのデータ提出が困難な場合には、10月21日までにDPC事務局に連絡する

▽やむを得ず入院患者を受け入れ、▼平均在院日数▼重症度、医療・看護必要度▼在宅復帰率▼医療区分2・3患者割合―を満たさなくなった場合でも、当面は、直ちに施設基準変更届け出を行わなくともよい。ICU・HCUについて、当該ユニットへの入室が必要でない患者を受け入れた場合には、当該患者は入院基本料(急性期一般1など)を算定し、ICU・HCUの重症度、医療・看護必要度の該当患者割合から除外する(被災地以外でも同様)

▽やむを得ず適時・適温の食事提供ができなくなったとしても、当面、従前の入院時食事療養費・入院時生活療養費を算定できる。ただし、可能な限り適時・適温の食事提供に努めることが必要



●被災地以外の医療機関

▽被災地医療機関から、医療法上の許可病床数を超過して転院患者を受け入れた場合には、当面、次のような取り扱いとする

▼実際に入院した病棟(病室)の入院基本料・特定入院料を原則とする

▼本来入院できない病棟に入院(精神病棟への精神疾患ではない患者の入院など)、診療報酬上の施設基準の要件を満たさない患者の入院(回復期リハビリ病棟への施設基準要件を満たさない患者の入院など)については、入院基本料を算定する病棟では当該入院基本料を算定し、特定入院料を算定する病棟では「医療法上の病床種別と当該特定入院料が施設基準上求めている看護配置」により、算定する入院基本料を判断する(一般病床の回復期リハ病棟では、看護配置が15対1ゆえ「地域一般入院基本料」を算定)





【訪問看護】
訪問看護については、▼2019年10月12日以前に主治医の指示書の交付を受けている▼保険医療機関が被災地に所属し、被災で主治医と連絡がとれず10月13日以降の指示書交付が困難である▼利用者の状態からみて訪問看護が必要と判断し実施した―のすべての要件を満たす場合、有効期間を超えた訪問看護指示書に基づいた訪問看護においても【訪問看護療養費】の算定が認められます。

また、被保険者が被災地に所在していた場合であって、被災のため避難所や避難先の家庭などで生活している場合には、居宅以外の訪問でも【訪問看護療養費】の算定が可能です。

介護保険法に基づく訪問看護についても、同等の取扱いとなります。





【保険薬局】
保険薬局で調剤を行うにあたり、次の場合には正式な処方箋に基づかなくても保険調剤として取り扱うことが可能です。

▽被保険者証などの提示ができず保険者番号などの記載がない処方箋、救護所などで交付された処方箋について、必要事項を確認した上で、保険調剤として認めてよい

▽患者が処方箋を持参せずに調剤を求めてきた場合、医師の診療を受けられないなどやむを得ない事情が認められれば、事後の処方箋発行を条件として、保険調剤として認めてよい

なお、「避難所などで診察を受けて発行された処方箋」は保険調剤として取り扱えず、災害救助法の適用となる場合には都道府県に費用請求することになります。また、薬剤師が避難所などを訪問して薬学管理・指導を行う場合、それが医師の指示に基づくものであれば、【在宅患者訪問薬剤管理指導料】を算定できます(もちろん通院可能な場合には算定不可)。

 
 
 
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