病院薬剤師の診療報酬上の評価充実を、薬剤師の一定期間の「病院研修」義務化を—日病協
2020.10.23.(金)
2022年度の次期診療報酬改定において「病院薬剤師、病棟薬剤師の業務」に関する評価を充実するとともに、「薬剤師に、何らかの形で一定期間、病院で勤務・研修することを義務付ける」仕組みを創設するべきである—。
10月23日に開催された日本病院団体協議会の代表者会議では、こういった点を厚生労働省等に要望していく方針がまとまりました。2022年度の診療報酬改定などを睨み、今後、具体的な提言内容を詰めていくことになります。
2020年度改定で【病棟薬剤業務実施加算】が引き上げられたが・・・
日本病院会、全日本病院会、日本リハビリテーション病院・施設協会など15の病院団体で構成される日本病院団体協議会(日病協)は、主に診療報酬に関する議論を行い「病院団体全体としての改定要望」を中央社会保険医療協議会や厚生労働省(保険局長や保険局医療課長)に宛てて行っています。もちろん関連する医療政策上の諸問題についても議論を行い、必要な提言・要請なども行います。
今般、2022年度の次期診療報酬改定に向けて「病院における薬剤師の評価充実を求めていくべき」との方向で意見が一致したことが、相澤孝夫議長(日本病院会会長)から報告されました。
例えば病棟に薬剤師を配置し、▼勤務医等の負担軽減▼薬物療法の有効性、安全性の向上―に資する薬剤関連業務を実施することを評価する【病棟薬剤業務実施加算】など、病院におおける薬剤師の評価はすでになされていますが、全国自治体病院協議会などから「評価が薄い」との声が出ています。
このテーマは、各所で議論されており、例えば2020年度診療報酬改定に向けた議論を行った中央社会保険医療協議会でも、診療側委員から「▼病院薬剤師の業務を評価する報酬の引き上げ → ▼病院薬剤師の給与水準アップ → ▼病院薬剤師の確保 → ▼医療の質の向上 → ▼更なる報酬の引き上げ―という正のスパイラルを循環させるべき」との声が多数出ています(関連記事はこちらとこちら)。
現在、薬剤師の給与水準は「調剤薬局 > 病院」となるため、どうしても薬剤師は勤務先として「薬局」を選択してしまいます。2020年度の診療報酬改定でも▼病棟薬剤業務実施加算の点数引き上げ(加算1を100点から120点に、加算2を80点から100点に引き上げ)▼HCU(ハイケアユニット)においても病棟薬剤業務実施加算の算定を可能とする—などの見直しが行われましたが、病院団体では「十分な対応」とまでは評価していないようです。
このため2022年度の次期診療報酬改定においても「さらなる評価の充実」を要望していく構えです。
あわせて、何らかの形で「薬剤師の病院における勤務・研修の義務化」をすべきとの点でも病院団体の意見は一致したことを相澤議長は紹介しています。例えば、薬剤師国家試験を取得した後、一定の期間「病院での勤務」を義務付ける、ことなどが考えられます。言わば、臨床医において義務付けられている臨床研修(初期研修)の薬剤師版を創設してはどうか、との考えです。この点についても詳細をまとめ、厚生労働省に要請を行っていく構えです。
両者(診療報酬での評価、病院勤務の義務化)は内容・性質や所管も異なるため、「同一の要望」とするのか、「別個の要望」とするのかも含めて、今後、詳細を詰めていくことになります。
また、日病協では、政府の「全世代型社会保障検討会議」に対し、週明けにも提言を行うことを決定しています。検討会議では「大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大(大病院を紹介状なしに受診した場合の特別負担の拡充)」方針を打ち出していますが、日病協では「大病院の定義がそもそも存在しない」「同じ規模(例えば200床)の病院でも、地域によって果たしている役割は全く異なる」「かかりつけ医機能についても明確な定義はない」状況の中で「紹介状なし患者の受診時定額負担の拡大」を論議することは不可能であると指摘しています(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
この点、すでに相澤議長は、「日本病院会会長」の名前で安倍晋三前内閣総理大臣・加藤勝信前厚生労働大臣に「意見書」を提示しており、そこでは「病院の規模ではなく、機能に着目した検討が必要である」「同じ規模の病院であっても、地域において果たすべき役割は全く異なる」「外来医療の拙速な見直しは、地域医療に大きな混乱を来す」といった考えを整理したうえで「受診時定額負担の拡大に反対する」考えを示しています。今回の提言でも、この意見書がベースになってくると予想されます。
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