肝腎同時移植では、C型肝炎ウイルス陽性者→陰性者への臓器移植可能に―厚労省
2021.3.22.(月)
肝腎同時移植では、一定の要件下でC型肝炎ウイルス陽性者の臓器を陰性者に移植することを可能とする―。
厚生労働省は3月11日に通知「移植希望者(レシピエント)選択基準の一部改正について」を示し、こうした考えを明らかにしました。4月1日から適用されます。
肝臓移植においては、臓器提供者(ドナー)がC型肝炎ウイルス感染者(陽性者)であったとしても、移植希望者(レシピエント)においてC型肝炎ウイルス感染の有無は問われません(陽性でも、陰性者でも良い)。
一方、腎臓移植においては、臓器提供者(ドナー)がC型肝炎ウイルス感染者(陽性者)である場合には、移植希望者(レシピエント)もC型肝炎ウイルス感染者(陽性)である場合に限られています(この場合にもリスクを十分に説明し、承諾を得ることが必要)。
このため現在、肝腎同時移植の場合には「移植希望者(レシピエント)が C型肝炎ウイルス陰性で、臓器提供者(ドナー)が 陽性の場合には、腎臓の斡旋を行えない」という課題があります。
日本移植学会からは、かねてから▼C型肝炎治療薬の開発(ソバルディ錠、ハーボニー配合錠など)により治療成績が飛躍的に向上している▼海外では、C型肝炎ウイルス陽性のドナーからの肝腎同時移植について良好な成績が報告されている―ことを踏まえ、「肝腎同時移植においては、希望者(レシピエント)がC型肝炎ウイルスに感染しているかどうかに関わらず、陽性ドナーからの腎臓斡旋を可能とする」旨を要望していました。
今般、厚生科学審議会・疾病対策部会の「臓器移植委員会」において、こうした点の審議を行い、次の方針を決定。今般、厚労省が通知発出を行ったものです。
▽C型肝炎抗体陽性の臓器提供者(ドナー)から提供された腎臓は、C型肝炎抗体陽性の移植希望者(レシピエント)のみを対象とし、リスクについて十分に説明し承諾を得られた場合にのみ移植可能とする(従前どおり)
▽(新規定創設)肝腎同時移植希望者(レシピエント)の場合には、C型肝炎抗体陰性の移植希望者(レシピエント)も対象とし、慎重に適応を決定したうえで、リスクについて十分に説明し承諾を得られた場合にのみ移植可能とする
肝腎同時の場合には、「C型肝炎ウイルス陽性 → 陽性」だけでなく「陽性 → 陰性」の臓器移植も可能となります。移植希望者(レシピエント)に臓器が届く可能性が広がり、朗報と言えそうです。ただし、ウイルス感染などのリスクを十分に説明し、承諾を得なければならない点に留意が必要です。
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