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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

「かかりつけ医機能」、急病対応や総合診療などが最重要要素で、中小病院で充実していくべき—日病・相澤会長

2022.8.29.(月)

厚生労働省の第8次医療計画に関する検討会などで、「かかりつけ医機能」に関する議論が始まっている—。

日本病院会幹部の間では、例えば▼「中小病院」では、かかりつけ医機能を充実していくことが必須である▼かかりつけ医機能にとって最も重要なことは、「急病に対する診療・診察」や「総合的な診療の提供」などではないかある—などの点で意見が一致している。今後、さらに議論を深め、日本病院会として「かかりつけ医機能とは何か」の考え方を整理し、強く意見を述べていく—。

こうした点が、8月29日の記者会見で日本病院会の相澤孝夫会長から明らかにされました。相澤会長は、これからの我が国は「急な坂をのぼらなければならない」ような厳しい時期を迎えるとし、そうした中で国民の生命・健康を守るために、どのような医療提供体制を構築していくべきかの考え方を日病でまとめ、提言していく考えを強調しており、「かかりつけ医機能とは何か」もその1要素になります。

8月29日にオンライン定例記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長

かかりつけ医機能は「医療機関の機能」であり、中小病院ではこれを充実していくべき

外来医療について「まずかかりつけ医機能を持つ医療機関にかかり、そこから必要に応じて高機能病院を紹介してもらう」という流れを強化することが求められています(外来医療の機能分化)。

外来医療機能分化を進めるためには、「紹介中心型の高機能病院」と「かかりつけ医機能を持つ医療機関」とが車の両輪となることが重要です。紹介中心型の高機能病院については「地域医療支援病院」「特定機能病院」「紹介受診重点医療機関」などの整備が進められ、明確化が図られてきています(関連記事はこちら(紹介受診重点医療機関)こちら(2022年度診療報酬改定))。

一方、紹介する側の「かかりつけ医」「かかりつけ医機能」については、定義も明確にされておらず、また人によってイメージする内容が千差万別であるなど「曖昧」な状況が続いていますが、本年(2022年)6月7日の「骨太方針2022」(経済財政運営と改革の基本方針2022)で「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」方針を明確化。また、昨年(2021年)12月の「新経済・財政再生計画改革工程表2021」では、「かかりつけ医機能の明確化と、患者・医療者双方にとってかかりつけ医機能が有効に発揮されるための具体的方策について、2022年度・2023年度に検討する」方針を掲げています。

厚労省も「第8次医療計画に関する検討会」などで「かかりつけ医機能を検討していく」こととしており(関連記事はこちらこちら)、こうした議論に向けて日病でも「提言」を行っていくべく、幹部会(常任理事会)で「かかりつけ医機能とは何か」の議論を本格化させています。

まず、日病幹部の間では、「かかりつけ医機能とは、医師個人の機能ではなく、医療機関の機能である」という点を確認しています。

例えば、医療法施行規則では、医療機関等の管理者が都道府県知事に報告しなければならない事項の1つとして「かかりつけ医機能の有無」を掲げ、そこには「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う『医療機関の機能』として厚生労働大臣が定めるもの」と明記されています。

また、かかりつけ医機能について「主にクリニックの機能であろう」と考えがちですが、上記の施行規則では、クリニックはもちろん「病院の機能」の1つとしてかかりつけ医機能を明示しています。日病幹部の間では「規模で区分けすることが適切かどうかという議論もあるが、少なくとも『中小病院ではかかりつけ医機能を持ち、充実していく』ことは必須である」との点で一致しています。ただし、「地方の中小病院では、かかりつけ医機能をしっかり果たしているが、都市部の中小病院ではいかがか?(十分にかかりつけ医機能を果たしていないのではないか)」との指摘も出ているようです。

どういった医療機関がかかりつけ医機能を持つのかについては、後述する「機能の内容」にも通じますが、「地域で考えていく」ことが必要です。相澤会長は「地域ごとに、どういった形態で医療機関がかかりつけ医機能を果たすべきかを決めるべきである。それが、我々が大事にしてきた日本の医療文化に合致する」とコメントしています。

かかりつけ医機能、緊急時への対応、総合的な診療、地域包括ケア支援などが最重要

さらに、具体的に、どういった機能・項目を「かかりつけ医機能」に位置づけるべきかについて、日病幹部の間では次のような項目が「最重要になる」との点で一致しました。

(1)急病などにしっかり対応する機能

(2)総合的な診療を行う機能

(3)地域包括ケアシステムを支援する機能

このうち(1)について相澤会長は、例えば、遠方の医療機関が、オンライン診療の患者に対し「近隣の医療機関を受診してほしい」などと指示することが、「果たして、かかりつけ医機能と言えるだろうか」と指摘。個人的見解と断ったうえで「少なくとも診察・診療を行うことが、かかりつけ医機能を持つ医療機関には求められるのではないか」との考えを披露しています。

例えば、医療スタッフの充実した「中小病院」(24時間、365日対応が可能)が単独で対応するケースもあれば、地域の複数クリニックが「輪番制」で対応するケースもあるでしょう。具体的な対応方法は「地域・地域で、医療資源などの実情に合わせて決めていく」ことになるでしょうが、この「急病に対応する」機能が何よりも重要であると日病幹部は強調しています。



また(2)の「総合的な診療を行う」点に関しては、これを「かかりつけ医機能とは関係が薄い」と考える人はいないでしょう。ただし、例えば「総合診療専門医を配置する」などの厳格な制限を設けるべきではないと日病幹部は考えています。

さらに、(3)の「地域包括ケアシステムの支援」に異論を唱える向きもないでしょう。



今後、こうした議論をさらに深め「かかりつけ医機能とは何か」という提言を行っていく考えを相澤会長は明確にしています。2024年度からの第8次医療計画スタートに向けて「厚労省の第8次医療計画に関する検討会で、本年度(2022年度)中に意見をまとめる」点、上述した「新経済・財政再生計画改革工程表2021」では、「2022・23年度にかかりつけ医機能の明確化などを検討する」方針を掲げている点などに鑑みて、近い将来、日病の考える「かかりつけ医機能」が明確にされると考えられます。



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