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電子カルテ情報の共有、「誰がどの情報を閲覧できるか」「共有の仕組みをどう考えるか」など整理―医療情報ネットワーク基盤WG

2022.11.29.(火)

全国の医療機関での電子カルテ情報共有する仕組み((仮)電子カルテ情報交換サービス)について、共有する情報は3文書(診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書)・6情報(傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査(救急、生活習慣病)、処方)であるが、その性質等に応じて「誰がどの情報を閲覧できるようにするか」を整理していく—。

また、情報共有の仕組みについて、「必要に応じて医療機関に情報を探しに行く」形とすべきか、「診療情報を蓄積しておき、そこから引っ張り出せる」形とすべきかを、コストや実際の運用面を踏まえて整理していく—。

11月28日に開催された健康・医療・介護情報利活用検討会の「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」(以下、ワーキング)でこういった議論が行われました。

11月28日に開催された「第5回 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」

全国の医療機関で共有する情報、情報項目ごとに「誰」が閲覧・共有可能とするかを整理

Gem Medで報じているとおり、「全国の医療機関で診療情報(レセプト情報・電子カルテ情報など)を共有する」仕組みの構築・運用が進められています。この仕組みには、次の2つがあります(関連記事はこちらこちら)。

(A)「レセプト」情報を共有・閲覧可能とする仕組み
(B)各医療機関の電子カルテ情報を共有・閲覧可能とする仕組み

医療情報の共有・閲覧に向けて2つの仕組みが動いている(医療部会(2)2 211209)

全国の医療機関での電子カルテ情報共有するにあたり「オンライン資格確認等システムのインフラ」を活用する方針を決定(医療情報ネットワーク基盤WG1 220516)



(A)のレセプト情報共有はすでに稼働しており、▼薬剤▼特定健診情報▼基本情報(医療機関名、診療年月日)▼放射射線治療▼画像診断▼病理診断▼医学管理、在宅療養指導管理料▼人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜灌流—の情報を、患者同意の下、全国の医療機関で共有・確認することが可能な環境が整ってきています(ただし、オンライン資格確認等システムを活用すること、情報の蓄積には一定の時間がかかることなどの制約が現在はある、関連記事はこちら)。

一方、(B)の電子カルテ情報共有の仕組みについては、現在、ワーキングを中心に議論が進められており、これまでに▼情報共有は(A)と同じくオンライン資格確認等システムのインフラを活用する共有する情報は3文書(診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書)・6情報(傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査(救急、生活習慣病)、処方)とする、ただしこのうち「健診結果報告書」は別にテキストべースでの共有が検討されている▼情報共有に当たっては、広範に用いられている「HL7FHIR」という規格を採用する標準規格(HL7FHIR)により情報の出し入れが可能な電子カルテの開発を進め、これを導入する医療機関には医療情報化支援基金を用いた補助を行う—などの下準備が行われてきています。ワーキングや親組織(健康・医療・介護情報利活用検討会)で「本年度内(2023年3月まで)に意見を固める」予定で議論が精力的に進められています。

全国の医療機関で電子カルテ情報を共有する仕組み(上段)の概要と、全国の医療機関でレセプト情報を共有する仕組み(下段)の概要(医療情報ネットワーク基盤WG1 221128)



11月28日の会合では、▼共有する情報(3文書・6情報)を誰が閲覧・共有できることとするか▼情報共有方法の大枠をどう考えるか—という議論を行いました。なお、電子カルテ情報の共有により、「国民・患者」や「医療関係者」「保険者」のそれぞれがメリットを享受することになると考えられ、メンバーの強化(国民・患者代表、病院代表、保険者代表の参画)が行われています。

まず「共有する情報(3文書・6情報)を誰が閲覧・共有できることとするか」という点を考えてみましょう。

「過去の診療情報を、現在の治療に活かす」など医療の質向上という視点に立てば「多くの人が情報を共有できる」とすることが有用です。しかし、▼患者に提供することを前提としていない情報もある(例えば、患者の心理的負担を考慮して「傷病名」を告げないケースもある。また紹介先医療機関への診療情報提供書などは患者に見せる運用はなされていない)▼機微性の高い情報であり、開示された場合の患者の不利益なども考慮する必要がある—という側面もあります。

厚生労働省医政局の田中彰子参事官(特定医薬品開発支援・医療情報担当)(医政局特定医薬品開発支援・医療情報担当参事官室長併任)は、こうした両面を踏まえて、例えば下表のように、情報の性質に応じて切り分け「どの情報は誰に公開する」という設定ができるのではないかとの提案を行いました。

3文書・6情報の閲覧範囲案(医療情報ネットワーク基盤WG2 221128)



「傷病名」については、例えば「がん患者などに、心理的負担に鑑みて敢えて伏せる」ケースや、「難しい病名のため、あえて一般的な病名として伝える(異なる病名を伝える)」ケースなどもあるとされ、(A)のレセプト情報共有においても、▼患者への告知を前提とする▼レセプト上で告知状況を確認できる方法を十分に議論し、あらためて提供の仕組みを検討・実装する—こととなっています。(B)の電子カルテ情報についても、同様の考え方が示されたと言えるでしょう。なお「医師であれば、関連情報(レセプトであれば【医学管理】の点数など、電子カルテであれば検査情報など)から病名を推測できる。治療への弊害は極めて小さい」との議論が行われています(関連記事はこちら)。

こうした厚労省の提案に対して、明確な反論は出ていませんが、▼すでに全国各地で地域医療連携ネットワークが動いており、好事例を参考に検討を進めるべき(長島公之構成員:日本医師会常任理事)▼情報共有は「患者の同意」が前提になると思うが、「一度の同意ですべて共有可能とする」のか、「情報ごとの同意とする」のか、「医療機関単位での同意とする」のかなど、丁寧に考えていくべき。また患者が自身の情報を確認する際には「丁寧な説明」があると良い(古川裕子構成員:ささえあい医療人権センターCOML委員)▼患者・国民の信頼を得るために、「情報をどのように活用しているのか」という点の情報開示も進めるべき(宮田裕章構成員:慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授)—などの意見が出ています。

今後、上表のとおり「退院時サマリーの中で、どの情報を共有するべきか」などの研究・検討も併せて、「共有する情報(3文書・6情報)を誰が閲覧・共有できることとするか」を、年度末(2023年3月)に向けて詰めていくことになります。

全国の医療機関で共有する情報、情報項目ごとに「誰」が閲覧・共有可能とするかを整理

次に、「情報共有方法の大枠をどう考えるか」を見てみます。【提供元医療機関(X医療機関とする)】→【電子カルテ情報交換サービス(仮称)】(オンライン資格確認等システムのインフラを活用)→【提供先医療機関(全国の医療機関)】という流れが固まっています(下図参照)が、大きく次の2つの考え方があります。

全国の医療機関で電子カルテ情報を共有する仕組み(上段)の概要と、全国の医療機関でレセプト情報を共有する仕組み(下段)の概要(医療情報ネットワーク基盤WG1 221128)



(a)X医療機関が診療情報(3文書・6情報)を都度、電子カルテ情報交換サービスに蓄積し、全国の医療機関が必要に応じて蓄積された情報の中から情報を検索・閲覧する(x医療機関にとっては「プッシュ型」と言える)

(b)電子カルテ情報交換サービスに情報は蓄積せず、全国の医療機関が必要に応じて、X医療機関の診療情報(3文書・6情報)を、電子カルテ情報交換サービスを介して取得する(全国の医療機関にとって「プル型」と言える)

プル型・プッシュ型の概念整理(医療情報ネットワーク基盤WG3 221128)



前者(a)のプッシュ型の仕組みとした場合には、「既存のオンライン資格確認等システムのインフラを活用できる」「情報を即座に閲覧・共有でき、救急・災害時などに有用である」というメリットがありますが、「データ蓄積のコストがかかる」「画像などの大きなデータ蓄積が難しい」などのデメリットもあります。

一方、後者(b)のプル型の仕組みを採用した場合には、「オンライン資格確認等システムと異なる別の仕組みを開発しなければならない」「マイナポータルを活用して患者が自身の3文書・6情報を確認することが難しい」というデメリットがあるものの、「画像など大きなデータの共有・閲覧もできる」というメリットがあります。

田中参事官は、こうした両面を考慮し、例えば▼3文書のうち「診療情報提供書」はプッシュ型で共有する▼6情報についても、救急・災害時対応を考慮して「プッシュ型」での共有を基本とする▼コストなどを考慮し、情報の蓄積期間(電子カルテ情報交換サービスに情報を蓄積しておく期間)は半年程度とし、その後はプル型を活用する—などの提案を行いました。

3文書・6情報の共有方法について(医療情報ネットワーク基盤WG4 221128)



この提案に対しては、▼全国の地域医療連携ネットワークを見ても、「情報の蓄積期間」は長いほど良い点を考慮すべき(長島構成員)▼頻繁な情報更新が行われる薬剤情報は電子処方箋を活用すればよい(長島構成員)▼プル型の仕組みを全国の医療機関に導入することは非現実的であるが、画像データをすべてプッシュ型で蓄積しておくことも難しい。民間サービスも含めた全体で考えていく必要がある(松村構成員)▼プッシュ型情報は「不完全なもの」となりかねない点に留意が必要である。薬剤情報は電子処方箋を活用すればよい(松田晋哉構成員:産業医科大学公衆衛生学教授)▼プッシュ型の場合、患者同意のないままに「情報が電子カルテ情報交換サービスに蓄積される」ことになるが、個人情報保護法に照らし問題がないのかなどを整理すべき(長島構成員)—など、さまざまな意見が出されました。さらに「プッシュ型・プル型で、それぞれ開発コスト・維持コストはどの程度になるのかも見て考えていくべき」(伊藤悦郎構成員:健康保険組合連合会常務理事)などとの指摘も出ており、今後、様々な点を考慮し「どの情報をプッシュ型で共有し、どの情報をプル型で共有するのか」を詰めていくことになります。



なお、「3文書・6情報を全国の医療機関で共有する」ことは既に決定していますが、▼薬剤禁忌・アレルギー情報はセットで確認・共有可能とした方が分かりやすいのではないか(松村泰志構成員:国立病院機構大阪医療センター院長)▼薬剤情報は電子処方箋の活用が可能である(松田構成員、長島構成員)—などの意見も出ており、「3文書・6情報をどのような形で共有するか」という具体論は今後、様々な形で展開していくことが予想されます。



このほか田中参事官は、下表のような今後の検討テーマを提示。来春(2023年3月まで)に向けて精力的にワーキングで議論を行っていくことになります。田中参事官は「電子カルテ共有のメリットを国民が感じられるようになることが極めて重要である。医療機関だけでなく、国民・患者自身が自身の診療情報を確認できるようにする(いわゆるPHRの整備)など、国民・患者に寄り添った仕組みを構築したい」と改めて強調しています(関連記事はこちら)。

今後の論点(医療情報ネットワーク基盤WG5 221128)



なお、上述のように「共有すべき情報の範囲を3文書・6情報とする」「HL7FHIRという規格で情報を共有する」ことが決まっており、電子カルテを開発するメーカー(ベンダー)では「既存情報をHL7FHIR規格で標準化するツール」や「HL7FHIRで情報を出し入れできる電子カルテ」の開発を進めています。こうしたツールや電子カルテを導入する医療機関には医療情報化支援基金などによる補助が行われることになります。このような電子カルテ等が全国の医療機関に普及すれば、「全国の医療機関で電子カルテ情報を共有できる仕組み」を国が整えた暁に円滑な情報共有が進み、医療の質が向上することでしょう。

ベンダーによる開発、医療機関での標準化ツール・電子カルテ導入が早急に進むことに期待が集まります。



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