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GemMed塾 短期間で効果を出せるコスト削減の手法とは ~パス改善と材料コスト削減~

地域ごとに「かかりつけ医機能の確保」を目指し、患者・国民が「かかりつけ医機能を持つ医療機関」の選択を支援する—社保審・医療部会(1)

2023.2.27.(月)

「かかりつけ医機能が発揮されるような制度整備」に向けて、関係法律の改正案が国会に提出されているが、これは「かかりつけ医を制度化し、例えば国民が1人のかかりつけ医を定め、それ以外の医療機関受診を制限する」ようなものではない—。

改正法成立後に、有識者によって「かかりつけ医機能とは何か」を議論し、地域で「かかりつけ医機能のうちどのような要素が充足し、逆にどのような要素が不足しているのか」を明らかにし、不足部分をどう充足していくかという議論につなげる—。

また、患者・国民が、「かかりつけ医機能を持つ医療機関」の情報も閲覧し、自分自身で「どの医療機関にかかればよいか」を選択する際の支援を行っていく—。

2月24日に開催された社会保障審議会・医療部会において、こういった議論が行われました。同日には「新興感染症対策」の議論なども行われており、こちらは別稿で報じます。

2月24日に開催された「第96回 社会保障審議会 医療部会」

患者・国民目線で「どの医療機関にかかればよいのか」を整理していくことが重要

Gem Medでも報じていますが、岸田文雄内閣は2月10日に「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための 健康保険法等の一部を改正する法律案」を決定し、今通常国会に提出しました。

そこには、医療保険部会で議論されてきた医療保険改革案(▼出産育児一時金を引き上げる▼高齢者にも一時金の一部を担ってもらうなどのために医療保険料負担を引き上げる▼医療費適正化計画を充実させる—など、関連記事はこちら)、社会保障審議会・医療部会で議論されてきた医療提供体制改革案(▼かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う▼医療法人の経営データベースを構築する—など、関連記事はこちら)などが盛り込まれています。

後者のうち「かかりつけ医機能が発揮できる制度整備」に関しては、大きく(1)国民が医療機関を選択する際の拠り所の1つとなる「医療機能情報提供制度」の刷新(2024年4月施行)(2)「かかりつけ医機能報告」制度の新設(2025年4月施行)(3)患者に対する説明の仕組み設置(2025年4月施行)—の3つの柱で構成されます(関連記事はこちら)。

かかりつけ医機能が発揮される制度整備1

かかりつけ医機能が発揮される制度整備2



まず(1)は、かかりつけ医機能(「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」と定義)を患者・国民が十分に理解した上で、自ら適切に医療機関を選択できるよう「医療機能情報提供制度で『かかりつけ医機能』を持つ医療機関」の情報提供を充実・強化するものです。

今後、法律成立後に有識者が中心となって、医療機関が報告すべき「かかりつけ医機能」を整理していきます。

医療機能情報提供制度の「かかりつけ医機能」情報を強化(医療部会(2)2 221128)



また(2)は、「慢性疾患を有する高齢者」「その他の継続的に医療を必要とする者」を地域で支えるために必要なかかりつけ医機能(日常的な診療の総合的・継続的実施、在宅医療の提供、介護サービス等との連携など)について、新たに一般クリニックを含めた全国の医療機関から都道府県知事に報告を求める「かかりつけ医機能報告」制度を法律に位置づけます。各道府県知事は、報告をした医療機関が「かかりつけ医機能の確保に係る体制を有する」ことを確認し、外来医療に関する地域の関係者との協議の場に報告するとともに、その状況を詳しく公表します。さらに、協議の場で「必要な機能を確保する具体的方策」を検討・公表していくことになります。地域ごとに「かかりつけ医機能の中で、どのような項目が充足されているのか、どのような項目が不足しているのか」を明らかにし、不足する項目の充足を図っていくことが重要な目的と言えます。

かかりつけ医機能報告制度(案)を新設(医療部会(2)3 221128)

地域の協議で「地域単位でかかりつけ医機能」を強化していく(医療部会(2)4 221128)



さらに(3)は、(2)で「かかりつけ医機能を持つ」と確認された医療機関に対し「慢性疾患を有する高齢者に、在宅医療を提供する場合など外来医療で説明が特に必要な場合であって、患者が希望する場合に、どのような内容の医療を提供するかを書面・電磁的方法で患者に交付する(説明する)こと」の努力義務を課すものです。インフォームドコンセントの強化を図っていくイメージとトラることができそうです。

患者とかかりつけ医との合意により「提供する医療内容」に関する書面交付の仕組みを設ける(社保審・会医療部会(1)2 221205)



これまでに医療部会で議論されてきた内容がベースとなっており異論・反論はでていませんが、委員からは「これがゴールではない。かかりつけ医の明確化・登録化を目指して議論をさらに継続すべき」(河本滋史委員:健康保険組合連合会常任理事)、「新制度の施行に当たっては、現場が混乱しないように十分な説明を行ってほしい」(内堀雅雄委員:全国知事会、福島県知事)、「すべての医療機関は、『かかりつけ医機能を持つ医療機関』あるいは『紹介受診重点医療機関など紹介患者中心の医療機関』となるのか、あるいは『かかりつけ医機能でも、紹介中心でもない医療機関』が存在して良いのか、などを明確化していくべき」(神野正博委員:全日本病院協会副会長)、「患者がどのようにかかりつけ医機能を持つ医療機関を受診していくのか、などを整理・啓蒙していくことも重要である」(楠岡英雄委員:国立病院機構理事長)、「一般国民が、どのような症状の時に、どの医療機関にアクセスすべきなのか、などを一度しっかり整理し、周知広報していくことが極めて重要である」(相澤孝夫委員:日本病院会会長)、「今後、有識者でかかりつけ医機能の内容を詰めていくが、法案成立前から有識者の議論に資するようなデータ・エビデンスを集積していくべきである。時間がない点を十分認識すべき」(島崎謙治委員:国際医療福祉大学大学院教授)といった、今後の施行準備に向けた提案・意見が多数出されました。

こうした意見も踏まえて、基本的には法律成立後に「施行に向けた準備」(有識者による「報告すべきかかりつけ医機能」の明確化など)を進めていくことになります。

なお、ここで留意すべきは、今回の法改正は「かかりつけ医の明確化、制度化」を目指すものではなく、「かかりつけ医『機能』の明確化、地域におけるかかりつけ医機能の確保」を目指しているという点です。

いわゆるフリーアクセスを確保したうえで、「地域のどの医療機関が、どのような『かかりつけ医機能』を保有しているのか」を明確にすることで、患者が自分自身で「このかかりつけ医を受診しよう」と選択できる環境を整備するものです。このため、例えば「国民がそれぞれ1つのかかりつけ医・かかりつけ医療機関を持ち、まずそこにファーストアクセスする」という仕組みが必要と考える論者にとっては、今回の改正法案は「物足りない仕組み」と映ることでしょう。しかし、前会長の永井良三氏(自治医科大学学長)は「我が国の医療は微妙なバランスで成り立っており、かかりつけ医の制度化がこのバランスを崩さないように最大限留意すべき」と強く訴えており(関連記事はこちら)、国民的な合理が得られないままに「1人の国民に、1人のかかりつけ医を定め、それ以外の医療機関受診に制限を加える」仕組みを設けることは大きな危険を伴います。

相澤委員も「医療機関をどのように受診すべきか」も含めて、患者・国民と同じ目線で「かかりつけ医・かかりつけ医機能」をじっくり腰を据え、継続して検討していくことが重要であると強く訴えています。今回の改正法が施行されたのち、患者の受療行動がどのように変化したのか、国民のかかりつけ医に関する意識がどう変化したのか、などの実態も把握したうえで、検討を継続していくことになるでしょう。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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