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GemMed塾 看護モニタリング

病院薬剤師の確保推進に向け、診療報酬上の評価や地域医療介護総合確保基金での支援などを厚労相に要望へ—日病協

2023.6.26.(月)

病院薬剤師の確保が「喫緊」の課題となる中で、「診療報酬における病院薬剤師の業務評価を充実する」「地域医療介護総合確保基金で病院薬剤師確保支援を優先的に行う」「卒前・卒後教育の中で病院薬剤師の魅力をPRしていく」ことを求めていく—。

5月26日に開かれた日本病院団体協議会の代表者会議で、こうした要望書の内容がまとめられたことが、会議終了後の記者会見で山本修一副議長(地域医療機能推進機構理事長)と仲井培雄会長(地域包括ケア病棟協会会長)から明らかにされました。近々に加藤勝信厚生労働大臣に宛てて提出し、対応を求めていく構えです。

6月23日の日本病院団体協議会・代表者会議後に記者会見に臨んだ山本修一副議長(地域医療機能推進機構理事長、向かって左)と仲井培雄副議長(地域包括ケア病棟協会会長)

病院薬剤師が「医師働き方改革」の重要な鍵となるが、病院は薬剤師確保に難病

地域医療機能推進機構や地域包括ケア病棟協会、日本病院会など15の病院団体で構成される日本病院団体協議会(日病協)は、「診療報酬改定に向けて、病院団体で足並みをそろえ、統一した要望・要請・提言」を行うために組織されました。あわせて「病院が直面する諸問題」についても積極的に議論し、意見を発信しています。

日病協では、これまで「病院薬剤師の確保」をテーマに議論を重ねてきました。

従前より「病院に薬剤師が来てくれず、調剤薬局に流れてしまう」ことが問題視されています。日本病院会の調査では、例えば▼多くの病院が「薬剤師不足、薬剤師確保の難渋」を感じ、とりわけ「薬剤師業務を評価する診療報酬」(病棟薬剤業務実施加算や外来腫瘍化学療法診療料など)を取得する病院ほど「薬剤師不足」を強く感じている▼事態の改善に向け多くの病院では薬剤師の確保のため「学会や研修会への参加を経済的に支援する」「専門資格取得を経済的にも、その他の面でも支援する」などの取り組みを行っているが、それでもなお薬剤師不足に難渋している—ことなどが明らかになっています(関連記事はこちら)。

一般病院で薬剤師不足感が強い(日病・病院薬剤師確保アンケート調査5 220711)

大規模病院で薬剤師不足感が強い(日病・病院薬剤師確保アンケート調査6 220711)



また、2024年度からスタートする第8次医療計画でも「病院薬剤師の確保」が重視され、▼医療計画の中に「薬剤師確保」に関する記載を求める(現在は「資質向上」に関する記載のみ)▼各都道府県において「地域における薬剤師確保・配置状況」を把握したうえで、「薬剤師確保」策を推進していく(現在は、4割近くの都道府県が地域の薬剤師充足状況を把握していない)▼地域医療確保総合確保基金を活用し「地域医療機関で一定期間勤務することを条件に奨学金返済を免除する」などの薬学生支援が可能である旨をPRする—といった方向性が示されています(関連記事はこちら)。これを踏まえ厚生労働省は「薬剤師確保ガイドライン」と「薬剤師偏在指標」を公表し、病院薬剤師が「すべての都道府県で不足している」(目標値・必要数をクリアできていない)ことを確認したうえで、薬剤師の偏在解消に向けて、また病院薬剤師の確保に向けて、「3年を1期とする薬剤師確保計画」を作成し、これに沿って計画的・戦略的に薬剤師確保を進めるべきことを各都道府県などに求めています。

薬剤師偏在を計画的に解消していく1



さらに2024年度の次期診療報酬改定に向けた中央社会保険医療協議会論議の中では、医師働き方改革に向けて「薬剤師へのタスク・シフトが非常に効果的である」ものの、「病院では薬剤師確保に難渋している」ことが明らかにされました(関連記事はこちら)。

医師の負担軽減策の実施状況(入院・外来医療分科会(4)6 230608)



日病協でも「病院薬剤師確保に向けた取り組み」について議論を重ねてきており、今般、次の3点を加藤厚労相に強く要望していく方針をまとめました。

(1)診療報酬において「病院薬剤師が実際に活動している部分」の評価を充実する
→例えば▼退院時薬剤情報管理指導料(入院時に「当該患者が服薬中の医薬品等」を確認するとともに、当該患者へ「入院中に使用した主な薬剤の名称や副作用等に関する情報」をお薬手帳に記載し、退院に際し患者・家族等に「退院後の薬剤の服用等に関する必要な指導を行う」ことを評価する、退院日に90点)▼退院時薬剤情報管理指導連携加算(退院に際し、患者・家族等へ「退院後の薬剤服用等に関する必要な指導」を行った上で、保険薬局に「当該患者に係る調剤に際して必要な情報」等を文書により提供することを評価する加算、退院日に150点)—を回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟などでも算定可能とする
→例えば、転院時などにおける「薬剤管理サマリーなどの情報提供」を新たに評価する

(2)地域医療介護総合確保基金において「病院薬剤師確保に向けた取り組み」を優先的に支援する
→例えば、「奨学金の返済を病院が肩代わりする際の支援」「病院への薬剤師派遣に係る支援」「調剤業務のデジタル化支援」などに基金を優先的に活用可能とする

(3)卒前・卒後に「病院薬剤師業務の重要性を薬学部の学生や薬剤師資格保持者が認識できる」ようなカリキュラム上の工夫などを行う



近々に加藤厚労相に宛てて要望書を提出し、取り組みを求めていく構えです。



このほか6月23日の日病協代表者会議では次のような点も確認されました。

▽新型コロナウイルス感染症が沖縄県で再燃し、医療提供体制の逼迫が生じている。医療現場で警戒を強める必要がある(ただし、重症化リスクはそれほど高くないようである)

▽次なる新興感染症に向け、都道府県と医療機関との間で「新興感染症対応に関する協定」を締結していくが、「協定」であり「強制ではない」点を国から都道府県に指導徹底してもらう必要がある(関連記事はこちらこちらこちら

骨太方針2023(経済財政運営と改革の基本方針2023)では、2024年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定に関し「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う」考えが明示された。医療現場などの要望が一定程度受け入れられ感謝している。今後、予算編成等に向けて実効性のある対応がなされ、「形になって現れる」よう求めていく



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