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「物価高騰等に柔軟に対応できる診療報酬上の新たな仕組み」「病院の災害、感染症対応力強靭化」を2025年度予算の中で最重視せよ—四病協

2024.6.18.(火)

来年度(2025年度)予算概算要求においては、「物価高騰等に柔軟に対応できる診療報酬上の新たな仕組み」や「病院の災害、感染症対応力強靭化」を最重視せよ—。

日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会が先頃、来年度(2025年度)予算概算要求に向けて、こうした内容の要望を武見敬三厚生労働大臣に提出しました(日本病院会サイトはこちら)。

物価や人件費のコスト高騰で病院経営は非常に厳しく、柔軟かつ抜本的な対応を

四病協では、まず「物価等の社会情勢に応じた診療報酬体系での柔軟な対応の確立」と「病院の災害面・感染対策面を含めた強靭化対策」の2点を最重点要望として掲げました。

物価や光熱費等、さらに人件費等の高騰が続いています。一般企業であれば、これらのコストを「商品価格に転嫁、上乗せ」して吸収することができますが、保険医療機関では収入の大部分を公定価格である診療報酬が占めているため、病院等が独自で「価格へのコスト転嫁を行う」ことはできません。このため保険医療機関等の経営は非常に厳しい状況に陥っていると現場から悲鳴が出ています(関連記事はこちら)。

こうした状況は今後も継続するとみられ、四病協では▼一時的な補助金や支援金では抜本的な解決はできない▼2年に一度の診療報酬改定は機敏に対応できない—ため、「2年ごとの改定を待たずに社会情勢の変化を診療報酬に反映させられる全く新しい制度の樹立」、例えば「各種産業界の価格改定に合わせて診療報酬も追随できるような、社会情勢を加味した新たな診療報酬制度」を提言、要望しました。

あわせて東日本大震災・熊本地震、能登半島地震など大きな地震、頻発する水害に予防的対応し、さらに新興感染症等に柔軟かつ速やかに対応できる医療機関づくりが必須であるとし、「病院の災害面・感染対策面を含めた強靭化対策」に十分な予算を要望。具体的には「建物の原状復帰」に加え、被災しないための建物の改修、新興感染症等に対応できる医療機関とするための改修に対する予算措置、ハザードマップ等で危険地域に所在する医療機関に対する建物の改修・設備等の更新や移転に対する予算措置、設備等の更新等の予防措置も行える補助金などを確保するよう強く求めています。



また、上記2点と合わせて下記2点を重点要望事項として掲げています。
(1)職員の待遇改善により人材確保に資する予算措置
→2024年度診療報酬改定において医療従事者の賃上げに対応した財源が確保されたが(関連記事はこちらこちらこちら)、人材不足解消のためにも今以上の賃上げが必要である。病院経営が逼迫している中、その原資を確保することは困難であり、賃上げ・人材確保・育成に関する診療報酬とは別の財源(調整基金創設等)を要望する

(2)医療DX推進に対する予算措置
→DXは、これからの医療に欠かせないインフラであり、一刻も早い実装が求められる。しかし、医療DX推進のためには電子カルテや医事システム等の改修や入れ替え、サイバーセキュリティ対策等が必要となり、それには費用が発生する。国民の保健医療の向上を図るとともに、最適な医療を実現するための基盤整備を推進するための予算措置を要望する(関連記事はこちら



このほか来年度(2025年度)予算概算要求に向けて、次のような要望も行っています。
▽新たな新興感染症に対する予算措置
▽医師の働き方改革に伴う医療人材確保と養成に係る予算措置(地域医療を維持するためには医師増員が必要であり、診療報酬以外に医師の人件費に相当する部分への予算措置を要望)
▽病院における看護補助者(介護職)の処遇改善への予算確保(介護報酬では介護職への処遇改善が加算で行われている。病院介護職の処遇改善に向けた予算措置を要望)
▽外国人技能実習生受け入れ事業への補助
▽ケアマネジャー(介護支援専門員)の処遇改善
▽病院で働く医師の総合的診療能力開発支援(総合的診療能力の獲得を促すキャリア支援事業に参加する医師や、医師が所属する医療機関等への経費補助を実施するための予算措置を要望)
▽地域医療介護総合確保基金の十分な財源確保と公私の隔たりない配分
▽地域医療構想推進のための病床ダウンサイジング支援の充実
▽病院給食に関する構造の転換に係る補助、抜本的な構造の転換に係る研究のための財政的支援(セントラルキッチン方式や急速冷却調理・加工機を使用する新調理システムの導入や、さらに効率的な給食システムの研究等に向けた財政的補助を要望)
▽医療情報化支援基金による、電子カルテの標準化等にかかる初期導入経費への補助(関連記事はこちら
▽病院のサイバーセキュリティ対策への公的補助(関連記事はこちら
▽医療人的資源を補完するICT・AI等導入への財政的補助
▽電子処方箋導入に伴う補助金拡充(上限額(2023・24年度に導入完了した大規模病院には事業額上限486万6000円の4分の1である121万7000円をに、大規模病院以外の病院では事業額上限325万9000円の4分の1である81万5000円を上限に補助)の引き上げ等、関連記事はこちら
▽地域医療充実のためのオンライン(遠隔)診療補助
▽電子カルテの導入・維持にかかる費用に関する調査研究のための財政的補助
▽精神保健指定医の業務を評価し、精神保健福祉法に基づく業務に対する報酬に充てるための予算措置
▽公衆電話の代替電話機設置に関する補助
▽災害派遣精神医療チーム(DPAT)関連予算の一層の拡充
▽災害拠点精神科病院整備費の一層の拡充
▽震災・火災時等に備えた医療機関の非常用設備の保守・整備に係る経費に対する財政的支援
▽病院の耐震化対応のための補強工事や建替えに対する財政的支援
▽震災・火災・水害等の災害からの復旧・復興への継続的な支援、適時適切な支援を実施するための仕組み作りに関する予算の確保
▽医療機関における省エネルギー設備投資に係る財政的補助

ほか、「病院の消費税問題」「キャッシュレス決済などの事務手続き多様化への対応」については、要望項目に入れないものの「今後も検討を継続すべき課題である」とコメントしています。



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