骨粗鬆症治療薬イベニティ、過去1年以内に虚血性心疾患・脳血管障害の既往歴ある患者への投与は避けよ―PMDA
2024.8.5.(月)
骨粗鬆症治療薬「イベニティ皮下注105mgシリンジ」を投与した患者で、本剤との関連性は明確でないが▼投与後に心血管系事象(虚血性心疾患・脳血管障害)が発生する可能性がある▼転帰死亡を含む重篤な症例報告もある—。
「心血管系事象発現のリスクが高い患者」への投与は、本剤の骨折抑制のベネフィットと心血管系事象の発現リスクを考慮して、慎重に判断してほしい—。
特に、少なくとも「過去1年以内の虚血性心疾患または脳血管障害の既往歴のある患者」に対しては、本剤の投与は避けてほしい—。
他医療機関とも連携して、本剤投与の必要性を判断してほしい—。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は8月1日、製薬メーカーからの適正使用等に関する情報提供として「イベニティ皮下注105mgシリンジ適正使用のお願い—虚血性心疾患又は脳血管障害について」を公表し、こうした点への注意喚起を行いました(PMDAのサイトはこちら)。
他医療機関とも連携し、イベニティ投与の必要性判断を
「イベニティ皮下注105mgシリンジ」(一般名:ロモソズマブ(遺伝子組換え))は、「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」の治療に用います。
2019年3月に販売が開始されたから、本剤との関連性は明確ではないものの「本剤投与後の心血管系事象」(虚血性心疾患または脳血管障害)の報告が認めら、2019年9月に添付文書が改訂され、「『骨折抑制のベネフィット』と『心血管系事象の発現リスク』を十分に理解した上で適用患者を選択する必要がある」旨の警告追記が行われました(関連記事はこちら)。
さらに今般、推定累積投与患者数から虚血性心疾患・脳血管障害の報告率を算出したところ、顕著な傾向は認められず、本剤との因果関係は不明であるものの「転帰死亡を含む重篤な症例」が依然として一定数報告されていることが確認されました。
そこで製薬メーカー等は、本剤使用にあたって次の点に留意するよう医療機関に強く要請しています。
▽「心血管系事象発現のリスクが高い患者」への投与は、本剤の骨折抑制のベネフィットと心血管系事象の発現リスクを考慮して、慎重に判断してくだほしい
→特に、少なくとも「過去1年以内の虚血性心疾患または脳血管障害の既往歴のある患者」に対しては、本剤の投与は避けてほしい
▽他医療機関にて虚血性心疾患または脳血管障害の治療中、あるいはこれらの発現リスクが高い疾患の治療中である場合には、「医療機関同士で互いに連携し、本剤の処方の必要性を慎重に判断」してほしい
▽虚血性心疾患または脳血管障害の「徴候や症状を患者に説明」し、徴候や症状が認められた場合には速やかに医療機関を受診するよう、患者に指導してほしい
→心血管系事象について患者向け資材(患者カード)を用意しており、これらも活用してほしい
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