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2025年4月からの医師臨床研修、都市部6都府県「以外」での研修が60.1%、大学病院「以外」での研修が64.7%に増加―厚労省

2024.10.25.(金)

来年度(2025年度)からの医師臨床研修に向けた今年度(2024年度)のマッチング結果を見ると、東京など6都府県を除く道県での内定割合が60.1%、大学病院以外の臨床研修病院での内定割合は64.7%となった。「地方での研修・大学病院以外での研修」がますます浸透してきている―。

このような状況が、厚生労働省が10月24日に公表した、今年度(2024年度)の「医師臨床研修マッチング結果」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら(マッチング結果の概要)こちら(マッチング協議会による結果発表資料)こちら(マッチング協議会による大学別状況)こちら(マッチング協議会によるプログラム別マッチング結果))。

2025年4月から臨床研修をスタートする医師、内定者は9062名

2004年度から新たな臨床研修医制度がスタートしています。例えば、「私は◯◯科の医院を継ぐので、他の診療科のことは知らなくて良い。その道の専門医師がそれぞれ対応すればよい」と行動することは許されず、将来、どの分野を専門とするかに関わらず「多くの診療科について基本的な診療能力を身につける」ことが求められているためで、「臨床に携わる医師は、2年間以上の臨床研修を受ける」ことが必修化されています【新臨床研修制度】。

新臨床研修制度は、▼研修医が研修先病院の希望を出し、公的なマッチング機構で研修先病院を決める▼基本的な診療能力を身につけるために、複数の診療科での研修を必須とする—ことなどが、旧来の仕組みと大きく異なる点です。もっとも、医療現場の実態(例えば医師偏在の是正など)とマッチさせるために制度の見直し(都道府県別の募集定員に上限を設ける、小児科、産婦人科、精神科に重点を置いたプログラムを認めるなど)が逐次、行われてきています。

今年度(2024年度)には、「来年(2025年)4月から臨床研修をスタートする医学生」等のマッチングが行われました。募集定員1万724名(前年度から171名減)に対し、採用内定者9062名(同94名増)となり、内定率(内定者÷登録者)は91.8%(同1.3ポイント上昇)となりました。

地方での研修医採用は増加傾向、医師偏在解消にどこまでつながるのか

内定状況を都道府県別に見ると、大都市を抱える東京都・神奈川県・愛知県・京都府・大阪府・福岡県の6都府県における内定者数が3615名で全体の39.9%(前年度に比べて64名減・1.1ポイント低下)、それ以外の41道県における内定者数が5447名・60.1%(同158名増・1.1ポイント上昇)となりました。

「6都府県以外で臨床研修を受ける医師」の割合の増加は、つまり「地方での研修を希望する医師の増加」→「医師の地域偏在の是正」につながります。今後も状況を注視する必要があります。

臨床研修における「6都府県での研修/それ以外での研修」の状況



このように臨床研修においては、大都市よりも地方を選択する医学生が多くなってきていますが、その背景には「都道府県別の募集定員上限」設定があると考えられます。従前「臨床研修医が大都市に集中している」との批判があり、都道府県別の定員上限(シーリング)を設け「地方へ臨床研修医を分散させる」という流れが生まれました。この定員上限は、大都市においては徐々に厳しくなっていくため、臨床研修医は今後さらに地方へ移動していくことになると思われます。

なお臨床研修終了後の新専門医研修(専門医資格を取得するための研修)では、再び「東京都などの大都市に医師が集中した」ことから、2020年度から「都道府県別・診療科別」の必要医師数を踏まえた新たなシーリングが設定されています(2025年度から新専門研修を受ける専攻医募集に係るシーリングの記事はこちら、専攻医募集スケジュール等に関する記事はこちら)。

これらが「医師偏在の解消」にどれだけの効果・影響を与えるのか、中長期的に見ていく必要がありますが、2016年と2020年を比較すると「医師偏在が助長されてしまっている」状況も明らかにされています(関連記事はこちら)。

なお、医師偏在の是正に向けて厚労省は、8月30日に「近未来健康活躍社会戦略」の中で「医師偏在対策総合パッケージの骨子案」を提示し、9月5日には「厚生労働省医師偏在対策推進本部」で総合パッケージに向けた論点を整理しました(関連記事はこちら)。

医師偏在対策(近未来健康活躍社会戦略2 240830)



これを受け、「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」では、「医学入学定員の在り方」(医師多数県で減員→医師少数県へ振り替え)や、「総合診療能力を持つ医師の養成」(総合診療専門医の養成、ベテラン医師へのリカレント教育など)を検討。

また「新たな地域医療構想等に関する検討会」では、(1)重点医師偏在対策支援区域の設定と医師偏在是正プランの策定(2)医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関の拡大、医師少数区域等での勤務経験期間の延長(規制的手法1)(3)外来医師多数区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請等の仕組みの実効性の確保、保険医療機関の管理者要件設定(規制的手法2)(4)経済的インセンティブの付与(5)中堅・シニア医師等と医師少数区域医療機関との全国的なマッチング機能支援等(6)都道府県と大学病院等の連携パートナーシップ協定—といった具体策の検討が始まりました。

さらに、「社会保障審議会・医療保険部会」では、医療保険制度で可能な対応の検討も始まっています。

今後の動向を十分に注視していく必要があります。



なお、前年度に比べて内定者数が増えた上位5県は以下のとおりです。
▼山口県:【2023年度】72名 → 【2024年度】99名(37.5%増)
▼大分県:【2023年度】53名 → 【2024年度】70名(32.1%増)
▼福井県:【2023年度】38名 → 【2024年度】50名(31.6%増)
▼宮崎県:【2023年度】47名 → 【2024年度】57名(21.3%増)
▼徳島県:【2023年度】37名 → 【2024年度】44名(18.9%増)
▼岐阜県:【2023年度】127名 → 【2024年度】151名(18.9%増)

厚労省の分析によれば、「臨床研修を受けた都道府県で、研修修了後も勤務する医師が多い」ことが分かっており(関連記事はこちら)、こうした地方での研修医が地元に定着していくよう、魅力的なキャリアパス構築などをさらに進めていくことが期待されます。

大学病院での研修が35.3%、臨床研修病院での研修が64.7%で、大学病院離れ進む

新臨床研修制度の実施前(旧臨床研修制度)には、卒業した医学部の附属病院で研修を受ける医師が圧倒的多数(大学病院での研修が7割超)を占めていました。

しかし新臨床研修制度では、大学病院以外の病院が「魅力ある研修プログラム」「研修医の処遇充実」などを打ち出し、「大学病院以外での研修」を希望する医学生が増加しています。「大学病院で研修を受ける医師」と「臨床研修病院(大学病院以外の病院)で研修を受ける医師」の比率は、新制度がスタートした2004年度には55.8対44.2になり、翌05年度には49.2対50.8と、臨床研修病院で研修を受ける医師のほうが多くなりました。

その後、2011年度からは臨床研修病院で研修を受ける医師の割合がさらに増加傾向を強まり、今年度(2024年度)は大学病院:35.3%(前年度に比べて0.2ポイント低下)、臨床研修病院64.7%(同0.2ポイント上昇)となりました。「臨床研修病院での研修を受ける医師」の割合がますます高まっています。

臨床研修における「大学病院/それ以外病院」の状況



なお、この点について全国医学部長病院長会議等では、かねてより「地方の大学病院における臨床医不足が、関連病院、つまり地域の病院等における医師の不足・偏在を招いている。臨床研修制度の見直しの検討が必要ではないか」と指摘しています(関連記事はこちら)。こうした指摘も踏まえ、臨床研修の中に「医師多数県の基幹型病院(連携元病院)に採用された研修医が、医師多数県における研修を中心としつつ、医師少数県等の臨床研修病院(連携先病院)においても一定期間研修する【広域連携型プログラム】を設ける」こととなっています(2026年度スタート)。

臨床研修制度における「広域連携型プログラム」の概要1

臨床研修制度における「広域連携型プログラム」の概要2



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

 

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