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診療報酬は「人員配置の評価」から「プロセス・アウトカムの評価」へ移行せよ、ICU5・6はタスク・シフトに逆行—全自病・望月会長

2025.2.17.(月)

勤務医の働き方改革の一環として、医師から「優秀な臨床工学技士や特定行為研修を修了した看護師、認定看護師など」へタスク・シフトを進めることが重視されている—。

しかし、特定集中治療室(ICU)において「医師から他職種へのタスク・シフト」を進め、医師が宿日直許可を得ると、低い点数の特定集中治療室管理料5・6を算定しなければならなくなる(関連記事はこちら)。「タスク・シフトを進めると病院の収益が下がってしまう」のでは、タスク・シフトは進まない—。

診療報酬については、「人員配置の評価」(structure評価)が中心だが、医師はもちろん医療従事者全体の働き方改革が求められ、また医療人材確保が難しい中では「プロセス評価・アウトカム評価」へ移行していくべきだろう。例えばICUでは「急変時などにすぐさま医師が対応できる」ことが重要であり、そこでは「ICUに常時勤務する医師が宿日直許可を得ているか否か」は関係ない。宿日直許可を得ている医師であっても、急変時にすぐさま対応できる場合には、適切な特定集中治療室管理料として評価すべきである—。

全国自治体病院協議会の定例記者会見が2月13日に開催され、望月泉会長(八幡平市病院事業管理者兼八幡平市立病院統括院長)ら幹部から、こうした考えが示されました。

なお、2024年度診療報酬改定で新設された【ベースアップ評価料】では、「医療従事者の給与引き上げ」に必要な財源を賄うことはとてもできず、多くの病院が対応に苦慮している状況も報告されています。

2月13日の定例記者会見に臨んだ、全国自治体病院協議会の望月泉会長(岩手県立中央病院 名誉院長・岩手県八幡平市 病院事業管理者)

2月13日の定例記者会見に臨んだ全自病幹部。左から田中一成参与(静岡県立病院機構理事長)、吉嶺文俊副会長(新潟県立十日町病院長)、松本昌美副会長(奈良県・南和広域医療企業団副企業長)、望月会長、小阪真二副会長(島根県立中央病院長)、野村幸博副会長(国保旭中央病院長)

「タスク・シフトを進めると病院の収益が下がってしまう」のでは困る

2024年度の診療報酬改定では、医師働き方改革を重視した、次のような特定集中治療室管理料の見直しが行われました(関連記事はこちら)。

▽ICU1-4について、「治療室内に常時勤務する専任の医師」は「宿日直を行う医師ではない」「治療室勤務時間帯 は、治療室以外での勤務・宿日直を併せて行ってはならない」ことを明確化する

▽ICU5・6を新設し、こちらでは「治療室内に常時勤務する専任の医師」の中に「宿日直を行う医師」を含めることを認め、SOFAスコアを用いた評価を行わない

▽ICU5・6では、「ICU1・2からの遠隔支援」を受ける場合に【特定集中治療室遠隔支援加算】で評価する



ICUの中でも「宿日直を行う医師」をユニット内の常勤・専任医師に含めている場合には、新設するICU5・6(低い点数設定となる)に移行しなければなりません。

(新設)【特定集中治療室管理料5・6】
▽7日以内:(新設)8890点(ICU1・2からは5516点低い、ICU3・4からは1000点低い)
▽8日以上:(新設)7307点(同じく5521点、1000点低い)

(新設)【特定集中治療室管理料6・広範囲熱傷治療管理料】
▽7日以内:(新設)8890点(ICU1・2からは5516点低い、ICU3・4からは1000点低い)
▽8-60日:(新設)7507点(同じく5521点、1000点低い)

2024年度診療報酬改定における特定集中治療室管理料の見直し1

2024年度診療報酬改定における特定集中治療室管理料の見直し2



この見直しについて全自病では、従前より「宿日直許可を得ているか否かで、ICU内に常時勤務する医師の業務は変わらない。宿日直許可を得ていない医師が、24時間、モニターを睨んでいるわけではない」と指摘しています(関連記事はこちらこちら)。

この点、「宿日直許可を取り下げ特定集中治療室管理料1-4の算定に取り組む」病院もありますが、病院によっては医師の確保が難しいために、こうした取り組みを行えず「収益が大きく減少してしまう」病院もあるようです。

望月会長は「宿日直許可を得ているか否かで、ICU内に常時勤務する医師の業務は変わらない。特定集中治療室管理料5・6は好ましくない」と改めて指摘。

あわせて小阪真二副会長(島根県立中央病院長)は、▼「タスク・シフトを進めると病院の収益が下がってしまう」のでは、タスク・シフトは進まない。厚生労働省内で整合性のとれた対応を行うべき▼診療報酬は「人員配置の評価」(structure評価)が中心だが、医師はもちろん医療従事者全体の働き方改革が求められ、また医療人材確保が難しい中では「プロセス評価・アウトカム評価」へ移行していくべきである。ICUでは「宿日直許可を得ていない医師の配置」よりも「急変時などにすぐさま医師が対応できる」ことが重要である。宿日直許可を得ている医師であっても、急変時にすぐさま対応できる場合には、適切な特定集中治療室管理料として評価すべきである—との考えを強調しました。2026年度の次期診療報酬改定に向けた病院からの要望項目に盛り込まれると考えられます。



また望月会長は、厚労省による医師働き方改革が地域医療に及ぼす影響に関する調査(2024年度医師の働き方改革の施行後調査)結果を紹介。そこでは、次のような状況が明らかにされています(47都道府県、5653医療機関が回答)(2024年3月までの準備状況に関する記事はこちら(第1回)こちら(第2回・第3回)こちら(第4回)こちら(第5回))。

▽医師働き方改革の施行に関連した「大学・他医療機関から派遣されている医師」の引き揚げ・減少は300医療機関(5.3%)で生じている

▽医師働き方改革の施行に関連した「自院の診療体制縮小」は266医慮機関(4.7%)で生じている
→このうち38医療機関(0.7%)が「地域医療に影響が出る」と考えている

▽「診療体制縮小」が「派遣医師の引き揚げ・減員」に関連しているのは82医療機関(1.5%)
→このうち15医療機関(0.3%)が「地域医療に影響が出る」と考えている

第5回準備状況調査で「診療体制縮小あり」と回答した457医療機関のうち、今回の施行後調査では397医療機関該当しており、▼医師働き方改革に関連する診療体制縮小は87で、うち17医療機関が「地域医療に影響が出る」と考えている▼「診療体制縮小」が「派遣医師の引き揚げ・減員」に関連しているのは30で、うち8医療機関が「地域医療に影響が出る」と考えている—

医師働き改革に関する「施行後」状況調査結果



さらに、この点に関連して、望月会長は次のような状況報告を行っています。今後も会員病院における「医師働き方改革」の状況などを詳しくウォッチしていくことになるでしょう。

▽全自病幹部(会長・副会長・常務理事)の意見交換では、「医師の意識改革ができ、医師働き改革は良い結果を生んでいる」との声もあれば、「例えば消化器科医師が地域で不足し、消化管出血患者などは基幹病院に搬送するため、基幹病院の医師が疲弊している」との声もある

▽看護師不足も深刻で、「病棟を一部閉鎖」している病院の報告も少なくない

▽スタッフの残業代計算で誤りを指摘され、追加の支出が生じている病院もある(残業代計算では一部手当を含める必要がある)ため、会員病院に周知・是正をはかる

▽自治体病院において、各都道府県の人事委員会の勧告に沿った賃上げを行うための財源として、【ベースアップ評価料】による収益はとても小さい(ベースアップ評価料では賃上げに必要な財源の「6分の1程度」しか賄えず、6分の5は病院が持ち出しをしなければならない)(関連記事は



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