Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
外来診療 経営改善のポイント 能登半島地震 災害でも医療は止めない!けいじゅヘルスケアシステム

424公立・公的病院等以外の病院も、機能分化やダウンサイズなど積極的に検討せよ―地域医療構想意見交換会

2019.10.30.(水)

機能分化やダウンサイジングなど含む「再編統合」について再検証を要請する424の公立・公的等病院が公表されたが、地域において「なくてはならない病院」も対象に含まれており、当該病院のスタッフはもちろん、地域住民も不安を抱えており、丁寧な説明を継続してほしい―。

424病院の対象とならなかった公立・公的病院等では、機能分化やダウンサイジングについて「我関せず」という後ろ向きな態度をとる可能性もあり、地域の医療提供体制改革は、地域の医療機関全体で考えていくべき旨について情報発信を十分に行ってほしい―。

厚生労働省が10月29日に開催した「地域医療構想に関する自治体等との意見交換会(関東信越会場)」で、自治体や医療関係者らからこういった意見が出されました。

厚労省医政局地域医療計画課の鈴木健彦課長は、「意見を1つ1つ受け止め、今後の地域医療構想推進に活かしていく」と確約しています。

10月29日に開催された、「地域医療構想に関する自治体等との意見交換会(関東信越会場)」

一部の誤った報道による「地域医療への不安」、厚労省が丁寧な説明で解消目指す

9月26日に開催された「地域医療構想に関するワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)において、「全国424の公立病院・公的病院等については、▼がん▼心疾患▼脳卒中▼救急、小児、周産期―医療などの診療実績が少ないことなどから、『公立・公的病院等でなければ果たせない機能を果たしているのか』について再検証を求め、必要に応じて機能分化やダウンサイジングなどを含めた再編・統合を地域で検討し、合意してもらう」方針が固められました(分析のロジックに関する記事はこちら)。



地域医療構想調整会議における議論の形骸化が指摘される中で、「調整会議の議論を活性化する」ことを目指すもので、これらの病院が「廃止」されるものでも、「機械的に機能転換やダウンサイジングが強制される」ものでもありません。再検証の結果、「当該医療機関・当該地域には〇〇といった事情・特殊性があり、現在の機能を維持・継続する」という結論が導かれることも十分に考えられるのです。

しかし、一部で「424の公立・公的病院等について、廃止または統合を求める」旨のショッキングかつ誤った報道がなされたため、「うちの病院が廃止されてしまう」「地域の医療提供体制が崩壊してしまう。過疎地が見捨てられた」などの混乱が地域であるようです。

そこで総務省と厚労省は10月4日に協議の場を開き、▼全国知事会社会保障常任委員会の平井伸治委員長(鳥取県知事)▼全国市長会の立谷秀清会長(福島県相馬市長)▼全国町村会の椎木巧副会長(山口県周防大島町長)―らと意見交換を行うとともに、全国でブロック単位の意見交換会等を開き、混乱の収拾に努めています。

10月29日の関東信越ブロックの意見交換会では、鈴木地域医療計画課長が「地域医療構想の目指すもの」「424公立・公的病院等において再検証を求める意図」などを懇切丁寧に説明。▼調整会議の論議を活性化するために、データを提供したにとどまること▼機械的に424病院について廃止や統合を求めるものではないこと▼データは高度急性期・急性期の診療実績を示すもので、他の機能を担っているなど、個々の状況を十分に勘案した議論が調整会議に期待されること―などを改めて訴えるとともに、今後も必要に応じて丁寧に情報提供していく考えを強調しました。

このため自治体・医療関係者からは「424病院の公表を撤回せよ」などの極端な見解は出されず、「地域、とりわけ過疎地の実情などを踏まえた議論を行ってほしい」との意見や、今後のデータ分析・提供等に関する要望などが多数出されました。

一部を紹介すると、次のような意見が注目されます。

▽診療実績の実数を用いた分析では、大病院が『診療実績が高い』と評価されやすい。ベッド数当たりの診療実績などを分析・評価してほしい
→対して鈴木地域医療計画課長は、「評価項目には含めていないが、稼働率のデータも示しており、調整会議でこれらも踏まえた議論を行ってほしい」と返答

▽今回のデータは「2017年度の病床機能報告」結果をベースにしているが、その後、病院の機能転換やダウンサイジングが進んでいるが、そこも勘案してほしい
→鈴木課長は「詳細な最新の動向は地域でなければ把握できない。調整会議で最新動向を踏まえて議論を進めてほしい」と返答

▽近く「民間病院のデータ」等も示されると聞くが、公表の仕方などには工夫をしてほしい
→鈴木課長は「今回のような混乱(誤った報道など)が生じないよう、公表方法・タイミングなどを検討していく」と返答

▽「民間病院のデータ」等も含めて、さまざまなデータが都道府県に示されるが、分量も多く、活用しきれていない。どうすればうまく活用できるのか、その方法についても詳しく示してほしい
→鈴木課長は「『データの量が多ければよいというものでもない』との指摘と受け止めた。データ活用について引き続き支援を行っていく」と返答

▽急性期以外の「地域でなくてはならない」機能を果たしている病院も再検証の対象となり、地域では「田舎には人間は住まないでよい」と言われたように受け止め、ダメージが大きい
→鈴木課長は「今回のデータは高度急性期・急性期のみの分析であった点は反省している。急性期以外の機能も地域医療においてもちろん必要かつ重要である」と返答

▽再編統合を進める場合、国が「貴院と貴院が統合してはどうか」などと示すべきではないか。現場レベルでは話が進みにくい
→鈴木課長は「国や都道府県が指示することはできない。まさに地域で、実情を踏まえて議論してもらう必要がある」と返答

▽個別病院の考えと、首長(公立病院)や病院本部(公的病院)との考えに齟齬があるケースも少なくない
→鈴木課長は「首長をはじめとする自治体や、病院本部(国立病院機構や日本赤十字社、済生会など)とも密接な情報提供・意見交換を進めており、風通しを良くしていく」と返答

▽2020年9月までに「再編統合に関する合意を得る」とされているが、厳しすぎるのではないか
→鈴木課長は「意見交換結果を十分に踏まえて、今後、再検証に関する『通知』等を発出するが、まずは意見交換を進める。詳細なスケジュールは現時点では固まっていない」と返答



自治体や医療関係者の意見を眺めると、全体としては「地域の実情を十分に勘案すべき」との要望が多いと言えます。前述のとおり、424病院の再検証は「機械的に進める」ものではありません。例えば、過疎地などにある病院では、診療実績が少なくとも「地域住民にとって、なくてはならない病院である」ケースもあります。ただし、こうした個別事情を国で把握することは難しく、424病院の議論を行ったワーキングでも「個別病院の事情は地域でしか把握できない。そうした事情は、地域の事情を十分に把握している地域医療関係者等が集う調整会議で詳らかにし、そこで再編統合(機能分化やダウンサイジングなどを含む)の必要があるのかどうかを、膝を突き合わせて議論する」ことが確認されています。

こうした点については、GemMedでは、可能な限り詳しく丁寧にお伝えしているつもりですが(関連記事はこちらこちらこちらこちら)、自治体・医療関係者サイドからは「マスコミ報道で地域が大きな不安を覚えている」との声も複数出ています。一部で、ワーキングの整理を理解しないままに、「424病院について廃止または統合を厚労省が求めた」などのショッキングかつ誤った報道がなされたためです。こうした報道受け、ある病院では、従前「初期臨床研修医のマッチング率は100%」であった(つまり、初期臨床研修の募集定員すべてを採用できていた)ところが、今回のマッチング(2020年4月からの研修スタート対象)では「1名のみ」に減少してしまったといいます。

この点、鈴木地域医療計画課長は「一般紙・地方紙向けに事前の説明会などを行い、424病院公表の趣旨などを説明してきたが、今回のような報道になってしまった」と忸怩たる思いを吐露するとともに、「今後に向けて、今まさにマスコミ向けの勉強会開催などを行っている」ことを明らかにしています。



なお、自治体・医療関係者からは「424の再検証対象に含まれなかった病院が、これまでダウンサイジング等を積極的に検討していたにもかかわらず、『我々の病院は再編統合やダウンサイジングの対象とならなかった。ダウンサイジングなどを検討する必要はなくなった』と、地域医療提供体制改革に後ろ向きな態度を取り始めている」ことも報告されています。

この考えも誤った報道等に基づく「まったくの誤解」と言え、ワーキングでは「424病院以外でも、積極的に機能分化やダウンサイジングを含めた再編統合の必要性を検討していく」ことを確認しています。地域の医療関係者が膝を突き合わせて▼当該地域の医療ニーズの動向(人口動態など)▼地域の医療資源―などを踏まえて、「この地域の医療提供体制を将来どうしていくか」を話し合い、合意を得て、各医療機関がその方向に進んでいくことが、地域医療構想の実現に向けて不可欠です。「自院は再編統合対象でないので、この議論に参加せずとも、機能分化やダウンサイジングなどを検討しねくともよい」ことにならない点に最大の留意が必要です。



今後、各地方ブロックの意見交換結果などを総括し、それら(上記の意見など)を十分に踏まえて、▼地方への更なる丁寧な情報提供▼424病院の再検証に関する通知等の発出(個別病院への再検証要請は都道府県が行うため)▼424病院の再検証の具体的な進め方(調整会議でどのような点に注意して議論を進めるべきか)▼民間病院等のデータ提供(公表方法や内容、タイミングなど)―について詰めていくことになります。

 
 
 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

424の公立病院・公的病院等の再編統合再検証、厚労省が地方に出向き趣旨等を丁寧に説明―国と地方の協議の場
機能分化やダウンサイジング等の必要性を改めて検証すべき424公立・公的病院等を公表―地域医療構想ワーキング
多くの機能で「診療実績が少ない」「類似病院が近接している」病院、再編統合を検討―地域医療構想ワーキング
公立・公的病院等の機能改革、「地域で求められる機能を果たしているか」との視点で検証を―厚労省・医療政策研修会

 
公立・公的等病院の「再編・統合」、地域医療提供体制の在り方全体をまず議論せよ―地域医療構想ワーキング
公立・公的病院等の再編・統合、国が「直接支援」する重点地域を2019年夏に策定―厚労省・医療政策研修会
公立・公的病院等の機能改革、「医師働き方改革」「医師偏在対策」と整合する形で進めよ―地域医療構想ワーキング(1)
公立病院等、診療実績踏まえ「再編統合」「一部機能の他病院への移管」を2019年夏から再検証―地域医療構想ワーキング
公立病院等の機能、▼代表的手術の実績▼患者の重症度▼地理的状況―の3点で検討・検証せよ―地域医療構想ワーキング
CT・MRIなどの高額機器、地域の配置状況を可視化し、共同利用を推進―地域医療構想ワーキング(2)
主要手術の公民比率など見て、構想区域ごとに公立・公的等病院の機能を検証―地域医療構想ワーキング(1)
公立・公的病院の機能分化、調整会議での合意内容の適切性・妥当性を検証―地域医療構想ワーキング
地域医療構想調整会議、多数決等での機能決定は不適切―地域医療構想ワーキング
大阪府、急性期度の低い病棟を「地域急性期」(便宜的に回復期)とし、地域医療構想調整会議の議論を活性化—厚労省・医療政策研修会
地域医療構想調整会議、本音で語り合うことは難しい、まずはアドバイザーに期待―地域医療構想ワーキング(2)
公立・公的病院と民間病院が競合する地域、公立等でなければ担えない機能を明確に―地域医療構想ワーキング(1)
全身管理や救急医療など実施しない病棟、2018年度以降「急性期等」との報告不可―地域医療構想ワーキング(2)
都道府県ごとに「急性期や回復期の目安」定め、調整会議の議論活性化を―地域医療構想ワーキング(1)

都道府県担当者は「県立病院改革」から逃げてはいけない―厚労省・医療政策研修会

 
424再検証病院の「急性期ベッド削減」に終わらせず、民間病院も踏まえた地域医療の再検証を―日病・相澤会長

「医療の質」を追求していけば、診療報酬のほうが病院を追いかけてくる―GHC15周年感謝祭(2)
厚労省の鈴木医務技監「医療機能の分化と資源集約を進め、働き方改革にも備えよ」―GHC15周年感謝祭(1)