介護従事者の3割は別の仕事を希望、「続けたい」は半数超―介護クラフトユニオン調査
2016.8.22.(月)
介護従事者の多くは介護や福祉の仕事に関心を持って介護業界に入り、「賃金や昇給額・一時金が思ったより低い」「思っていたよりも忙しい」などと感じているものの、半数超が現在の職場で同じ職種を続けたいと考えている―。
このような状況が、日本介護クラフトユニオン(NCCU)が17日に公表した「就業意識実態調査2016」から明らかになりました(関連記事はこちら)。
ただし、およそ3割の人は「賃金が低すぎる」「新たな仕事にチャレンジしたい」として、現在の仕事を続けたくないとも考えています。
月給制の介護従事者は「将来」、時給制では「適切なサービス」に不安を感じる
NCCUは、介護業界で働く人が加盟する労働組合で、介護従事者の処遇改善に向けて、さまざまな調査研究や研修会、フォーラムなどを開催しています。
今般の就業意識実態調査では、2940名(月給制の方1795名、時給制の方1145名)から回答を得ています。
まず現在の業務の状況を見てみると、2016年3月の1か月における労働日数・時間は、月給制では22.14日・179.81時間、時給制では18.99日・123.60時間となっています。年次有給休暇については、月給制の51.8%、時給制の66.3%が「取得できる」(いつでも、ある程度)と回答しています。また働く上で、月給制では「将来」(75.2%)、時給制では「適切なサービス提供」(63.5%)について不安を感じている人が多いことが分かりました。
介護業界に入った理由として、およそ4割の人(月給制では43.0%、時給制では38.2%)が「介護や福祉の仕事に関心があった」と答えています。
では、介護業界に参入してどのように感じているのでしょうか。今般の調査では、次のような状況が明らかになっています。
▽賃金、昇給額、一時金は思っていたよりも低い(月給制、時給制のいずれも)
▽1日の業務は、思っていたよりも忙しい(同)
▽肉体的、精神的疲労が思っていたよりもある(同)
▽月給制では、残業時間が思っていたよりも多い(時給制では、以前の他分野と違いなし)
一方、「休日出勤の回数」「資格の活用」「会社の研修制度」「職場内での教育・指導」「職場内の人間関係」「利用者・家族都の関係づくり」「仕事内容の適正」「会社や業界の将来性」については、月給制・時給制のいずれも「以前の他分野と違いはない」と感じていることも分かりました。
もっとも、こうした厳しい状況にもかかわらず、半数超の人(月給制では54.2%、時給制では65.9%)が、「現在の職場で同じ職種を続けたい」と考えています。
ただし、「賃金・一時金が少ない」(およそ3割)、「新しい仕事にチャレンジしたい」(およそ3割)という理由で、「現在の仕事を続けたくない」と考えている人もいます。
今後、厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会などで、介護従事者の処遇改善などに向けた検討が進められますが(関連記事はこちらとこちらとこちら、こうした現場の実態にも目を向ける必要があります。
【関連記事】
介護従事者の6割超が人手不足を感じ、「低賃金」や「仕事のきつさ」が原因と捉えている―介護労働安定センター
介護職員処遇改善加算Iを届け出た事業所、要件上回る1万3170円の給与増―介護給付費分科会
介護職員処遇改善加算、未届け施設の原因調査と加算施設との給与水準比較を―介護給付費分科会
処遇改善加算の職場環境改善要件、新たな取り組み内容を明示―介護報酬改定Q&A(Vol.2)
【15年度介護報酬改定答申2】医療ニーズ高い要介護者の在宅移行を推進、訪問看護に新加算