2016年11月に報告された医療事故は30件、全体の45%で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2016.12.15.(木)
今年(2016年)11月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は30件。昨年(2015年)10月の制度発足からの累計で453件の医療事故が報告されており、うち45%に当たる204件では院内調査が済んでいる。また遺族や医療機関からのセンターへの調査依頼は累計で18件となった―(前月の状況はこちら)。
こうした状況を、日本医療安全調査機構(日本で唯一のセンター)が9日に公表しました(機構のサイトはこちら)。
医療機関からセンターへの相談は、「手続き」に関するものが増加
昨年(2015年)10月に始まった医療事故調査制度は、医療事故の再発防止を目指し、「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のうち「管理者が予期しなかったもの」すべてをセンターに報告するものです。事故が発生した医療機関で原因を調査し、その結果をセンターや遺族に報告。センターでは事例を集積して再発防止策などを練ります(関連記事はこちら)。
今年(2016年)11月には、医療事故が新たに30件報告され、制度発足からの累計報告件数は453件となりました。
11月の報告は病院からが29件、診療所からが1件で、診療科別に見ると▽外科8件▽内科4件▽消化器科4件―などとなっています。
制度がスタートしてから1年以上が経過しますが、医療現場には「死亡事例が発生してしまったが、これは報告すべき医療事故なのか?」「医療事故が生じたが、どのようにセンターに報告を行うのか?」といった、また遺族には「家族が病院で死亡したが、医療事故として報告されない。なぜなのか?」といった疑問が絶えません。そこで、センターでは医療機関や遺族からの相談にも対応していますが、今年11月に新たにセンターに寄せられた相談は163件で、制度発足からの累計は2153件となりました。内訳を見ると、医療機関からが84件、遺族などからが70件、その他9件となっています。
医療機関からの相談内容としては、「医療事故報告の手続き」が42件と最も多く、次いで「院内調査について」31件、「医療事故に該当するか否かの判断」16件などとなっています。制度の浸透によって、報告すべき事故か否かの判断に関する相談は減ってきており、この背景には、今年6月から実施されている「医療事故に該当するか否かの判断におけるバラつきを是正のための運用改善(支援団体等連絡協議会の設置など)」の効果もあると考えられます(関連記事はこちらとこちら)。
また遺族などからの相談では、「医療事故に該当するか否かの判断」が47件と多くなっていますが、この中には「制度開始前の事例」「生存事例」など報告対象外のものも少なくなく、今後、国民全体に対して医療事故調査制度をさらに周知していくことが必要と言えそうです。
医療事故が発生した医療機関では、まず院内で原因究明に向けた調査を行います。今年11月に新たに院内調査が済んだ事例は21件で、制度発足からの累計で204件となりました。報告された全453件のうち45.0%で院内調査が済んでいる状況です。前月までに43.3%で院内調査が完了しており、院内調査のスピードが向上している状況が伺えます。
なお、遺族の中には院内調査結果に満足がいかない、あるいは院内調査がおそすぎると考える人も出てくることでしょう。また診療所など小規模の医療機関では、マンパワー不足などから院内調査を十分に行えない可能性もあります(医師会や病院団体などの支援団体がサポートを行う仕組みもある)。こうしたケースに備え、遺族や医療機関がセンターに調査を依頼できる仕組みも用意されています。今年11月にセンターへなされた調査依頼は2件で、いずれも医療機関からの依頼でした。制度発足からの累計では18件(遺族から13件、医療機関から5件)で、このうち16件では「院内調査結果報告書の検証中」(適切に院内調査が行われたかのチェック)、2件では「院内調査の結果待ち」となっています。\
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