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人生の最終段階の医療、国民にどう普及啓発するか2017年度内に意見まとめ—厚労省検討会

2017.10.2.(月)

 自分が死を迎える際には、延命治療は行わないでほしい—。このように「人生の最終段階における医療」を自分自身で決めて、明らかにしておくことが重視されています。しかし医療の専門家でない一般国民にとって、「人生の最終段階における医療」を考える機会は十分に確保されておらず、自治体や医療機関からの支援体制は必ずしも十分には整備されていいません。

そこで厚生労働省は「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」を設置。▼国民への情報提供・普及啓発の在り方▼今後の課題の整理▼意思決定支援に必要な事項―を整理し、今年度内(2018年3月まで)にまとめる予定です。

9月29日に開催された検討会では、「人生の最終段階における医療」を考えるに当たり先進的な取り組みを行っている自治体、医療関係者から発表が行われました。

9月29日に開催された、「第2回 人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」

9月29日に開催された、「第2回 人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」

エンディングノート、宮崎市では「詳細な説明」と「手渡し」を基本に

 厚労省の調査によれば、「人生の最終段階における医療」を考えるためのパンフレットなどを作成した都道府県は11(23.4%)、市区町村は112(6.4%)、作成中の都道府県は1(2.1%)、市区町村は26(1.5%)にとどまっています。

都道府県の4分の1、医療機関の1割程度しか、人生の最終段階に関する普及啓発パンフレットなどの作成・配布は行っていない

都道府県の4分の1、医療機関の1割程度しか、人生の最終段階に関する普及啓発パンフレットなどの作成・配布は行っていない

 
この数少ない先進自治体の中で、宮崎県宮崎市では「エンディングノート」(わたしの想いをつなぐノート)プロジェクトを実施。すでに病気を抱えている本人だけでなく、家族、市民が「人生の最期の時間をどこで過ごし、どのような医療を受けたいか」を考えられるような情報提供・支援体制整備に力を入れています。

『わたしの想いをつなぐノート』には、回復の見込みがなく死期が迫った場合に▼最大限の治療(心臓マッサージや人工呼吸器)を行ってほしいか▼継続的な栄養補給をしてほしいか▼点滴などの水分維持にとどめてほしいか▼何も治療しないでほしいか▼痛みだけはとってほしいか—などを記載するほか、「どこで、誰と、どのように」最期を迎えたいかなどを自由記述します。

こうした「エンディングノート」は普及しつつありますが、医療の専門家でない一般国民にとっては「どのように書けばよいのか分からない」のが実際でしょう。そこで宮崎市では、エンディングノートを熟知した職員や、アドバイザー(医師、保健師、看護師、ケアマネジャーなど)が「治療を受けたいという希望を記載してもよいこと」「すべての項目を埋めなくてもよいこと」「いつでも書き直せること」などを説明した上で、『手渡し』することを原則としています。

松戸市、利用者の希望を医療関係者らが「共有」できるシステムを整備

また千葉県松戸市では、慶應義塾大学医学部や千葉健愛会あおぞら診療所が音頭をとり、「ふくろうプロジェクト」という意思決定支援に向けた取り組みを行っています。そこでは▼緊急時連絡シート(ふくろうシート)の運用▼ケアマネジャーによる「人生の最終段階における医療」への意思決定支援▼自宅・在宅療養支援病院・救急病院などの間のネットワーキングとローカルルールの運用▼市民啓発—の4つの取り組みを実施。

松戸市で推進されている「ふくろうプロジェクト」の概要

松戸市で推進されている「ふくろうプロジェクト」の概要

 
このうち「ふくろうシート」は、▼ケアマネ、地域包括支援センタースタッフが利用者とともに「人生の最終段階における医療」の希望を記載し、事務局で登録・QRコード化する▼利用者が救急搬送された場合、QRコードで利用者の希望を確認し、希望に沿った適切な医療を提供する—といった形で活用されます。利用者の希望は外からは分かりにくく、かつ時間とともに変化するため、QRコード化することで「最新情報を共有できる」ことになります。
最終段階医療に関する利用者の希望は「ふくろうシート」としてQRコード化され、共有可能な状態におかれる

最終段階医療に関する利用者の希望は「ふくろうシート」としてQRコード化され、共有可能な状態におかれる

共有された「ふくろうシート」の情報をもとに、当該患者が例えば延命治療を希望しているのかどうかなどを医療現場で判断することができる

共有された「ふくろうシート」の情報をもとに、当該患者が例えば延命治療を希望しているのかどうかなどを医療現場で判断することができる

 

糖尿病性腎症の重度化予防など「予防・健康管理」を重視

期医療、3学会が合同でガイドライン作成

松戸市のような取り組みが全国に普及するまでには、相当の時間がかかるでしょう。すると救急搬送され、医療関係者に利用者の希望が伝わらず、希望に沿わない延命治療などが施されてしまうケースもあるでしょう。この点について、▼日本救急医学会▼日本集中治療医学会▼日本循環器学会—の3学会が合同で、救急・集中治療領域における終末期の対応に関するガイドラインを2014年に策定しています。

具体的には、主治医を含む複数の医師で次の4項目を確認した際に「終末期」と判断し、延命治療について「継続するのか」「透析などの積極的治療を行うのか」「水分・栄養の補給制限や中止を行うのか」という選択を検討することになります。

▼不可逆的な全脳機能不全(脳死診断後や脳血流停止の確認後などを含む)であると十分な時間をかけて診断された場合

▼生命が人工的な装置に依存し、生命維持に必須な複数の臓器が不可逆的機能不全となり、移植などの代替手段もない場合

▼その時点で行われている治療に加えて、さらに行うべき治療方法がなく、現状の治療を継続しても近いうちに死亡することが予測される場合

▼回復不可能な疾病の末期、例えば悪性腫瘍の末期であることが積極的治療の開始後に判明した場合

日本救急医学会など3学会では、4点を複数の医師で確認し「終末期」であるかどうかを判断するとのガイドラインを作成

日本救急医学会など3学会では、4点を複数の医師で確認し「終末期」であるかどうかを判断するとのガイドラインを作成

終末期と判断された場合には、延命治療を終了するのかなどの検討フェーズにうつる

終末期と判断された場合には、延命治療を終了するのかなどの検討フェーズにうつる

 
 検討会では、今後、こうした先進事例も参考に「人生の最終段階における医療」の普及・啓発をどのように進めていくべきかについて今年度内(2018年3月まで)にまとめる予定です。

 あわせて国民や医療介護専門職(医師、看護師、介護職員)、施設(病院や介護施設など)のそれぞれで「人生の最終段階における医療」についてどのように考え、家族らと話し合い、どのような希望を持っているのかなどの調査も行い、意見とりまとめの重要基礎資料とする考えです。

最終段階の医療、患者の状態(がんや難病)やステージごとに考える必要

 ただし松原謙二構成員(日本医師会副会長)は、一律な設定をするのではなく、例えば▼ALSなどの難病患者▼末期がん患者▼認知症患者—などに区分して「人生の最終段階における医療」の考え方などを整理していく必要があると強調。また木澤義之構成員(神戸大学医学部附属病院緩和支持治療科特命教授)は「ステージ(健康な段階、死を意識した段階など)に分けて考えることが必要」と言った見解を示しています。

 例えば、ALSなどの難病患者では、極めて早期から「死」を意識する機会が多く、また自分で詳細な意思表示をすることが困難でしょう。この場合、早期から具体的な医療内容について、自分の代理で意思表示を行う人(家族など)と意見交換しておく必要がありそうです。

 また末期がん患者であっても、自分で意思表示できる場合には、自身の中で具体的な医療内容を検討しておくことになるでしょう。その際、がん医療に詳しい専門家との相談が重要となります。米国ではキャンサーナビゲーションシステム(がん患者に寄り添い、医療的・精神的なサポートはもちろん、経済的な支援を行う制度のあり方などを説明・紹介する医療・福祉の専門家)が構築されており、我が国における普及も待たれます(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

 さらに認知症患者であれば、代理人が本人の以前の考えなどを踏まえて意思を「推定」することになるでしょう。

 こう考えていくと、国民全員が「できる限り早期から、自分の最期の医療はどうあってほしいか。自分にとって重要な価値は何か」といった点を真剣に考えることが極めて重要であると再認識できます。

 
 ところで検討会では「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)が今後、極めて重要となる」という点で意見が一致しています。しかし「ACPとは何か」といった点について国民的な合意はできていないのが実際です。ACPは、「人生の最終段階の医療・療養について、自分自身の意思に沿った医療・療養を受けるために、家族や医療介護関係者らとあらかじめ、かつ繰り返し話し合うこと」と理解されていますが、分かりやすく表現した日本語への訳語を設定してはどうかといった意見が内田泰構成員(共同通信社生活報道部編集委員)らから出されています。国民全員が「自分のこと」として考えるためにも、分かりやすい訳語が待たれます。

 
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