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2018年度、医療・年金などの経費は6300億円増に抑え、29兆4972億円に—2018年度厚労省概算要求

2017.8.30.(水)

 厚生労働省は25日に、来年度(2018年度)予算の概算要求を行いました。年金や労働保険などの特別会計を含まない一般会計は31兆4298億円を要求する見込みで、前年度当初予算に比べて7426億円・2.4%の増額要求となります。

 このうち年金・医療など社会保障に係る経費については、前年度に比べて6300億円の増額要求を行っています。2018年度は、「2020年度におけるプライマリーバランスの黒字化に向けた集中改革期間(2016-18年度)」の最終年度に当たり、社会保障関係費の増額は3年度で1兆5000億円に抑えるよう指示されています。これから年末の予算編成に向けて、6300億円をどう圧縮していくのか、注目が集まります。

データヘルス改革やAI活用、がん対策などを重点分野に

 厚労省の2018年度予算概算要求の枠組みを見ると、▼年金・医療などに係る経費について、「高齢化などに伴う増加」として前年度から6300億円増を見込む▼義務的経費は前年度並み▼その他の経費(裁量的経費・公共事業関係費)は公共事業関係費などを前年度から10%削減する▼「新しい日本のための優先課題推進枠」(以下、推進枠)として別途2005億円を見込む—という形になっています。

また2018年度に予定される診療報酬改定・介護報酬改定・障害報酬改定などに関する経費は、今後の予算編成過程で検討することになります(12月下旬に改定率などが決定される)。

 2018年度に厚労省は、(1)働き方改革の着実な実行(2)質の高い効率的な保健・医療・介護の提供の推進(3)すべての人が安心して暮らせる社会に向けた環境づくり—の3つを重点分野に位置付け、各分野を推進することで「生産性の向上や、成長と分配の好循環を拡大していく」考えを打ち出しています。

このうち(2)の質の高い効率的な保健・医療・介護の提供について、具体的な項目を見てみると、▼データヘルス改革の推進(保健医療データプラットフォーム構築に向けた環境整備)92億円▼医療系ベンチャーの振興9.4億円▼医療分野などの研究開発の推進(AMEDにおける革新的医薬品創出などに向けた支援)661億円▼保健医療分野におけるAI開発の加速3100万円▼地域医療確保対策などの推進(医療介護総合確保基金による機能分化連携・基盤整備、小児・周産期医療体制の充実に向けた施設整備など)1091億円▼介護保険の保険者機能強化などによる自立支援・重度化防止に向けた取り組み推進6.7億円▼新オレンジプランの推進(認知症高齢者の見守りネットワークの普及・広域化など)94億円▼がん・肝炎・難病対策(がんゲノム情報管理センターや新たな難病医療提供体制の構築など)153億円―などが盛り込まれました。

また、推進枠(2005億円)の中では、生産性向上・人材投資に関する事業として▼介護事業所における生産性向上推進(サービスの種類ごとに経営の専門家による調査研究を行い、生産性向上・業務改善に向けたガイドライン作成など)9億円▼介護ロボット開発等加速化6億円▼医療従事者の勤務環境改善(医師も罰則付き時間外労働規制の対象となることを踏まえた、都道府県医療勤務環境改善支援センターによる支援)3億円ほか▼医師不足地域における若手医師のキャリア形成支援(休日代替医師の派遣、複数医師によるグループ診療、テレビ電話などを活用した診療支援などのモデル実施)8億円▼介護事業所におけるICT化普及促進3億円―なども要求される見込みです。

糖尿病性腎症の重度化予防など「予防・健康管理」を重視

 次に2018年度厚労省予算概算要求の主要事項のうち、医療・介護分野に関連の深い事項を拾ってみましょう。

 まず「予防・健康管理の推進」に向けて379億円が要求され、ここでは次のような事項が目を引きます。

▼糖尿病性腎症患者の重症化予防の取り組みへの推進(推進枠):6300万円(医療保険者と医療機関が連携した保健指導の推進)

▼後期高齢者医療広域連合における後発医薬品使用促進の支援(推進枠):3.5億円(後発品を利用した場合と、先発品を使用した場合とで患者負担がどれだけ変わるのかの「差額通知」送付など)

▼重複・頻回受診者などへの保健師などによる訪問指導、高齢者の低栄養防止などの推進(推進枠):12億円

▼医療等分野におけるID導入:43億円(2018年度から段階的運用開始、2020年度からの本格運用を目指す)

▼データヘルス改革における保健医療記録共有サービスの実証(推進枠):1.1億円(患者情報や健診情報などを、医療機関の初診時などに「本人同意」の下で共有できる『保健医療記録共有サービス』の2020年度からの本格稼働に向けた技術的課題の整理など)

▼データヘルス分析関連サービスの構築に向けた整備(推進枠):17億円(『保健医療データプラットフォーム』構築に向けたデータ分析環境の整備やセキュリティ検証など)

▼全国保健医療情報ネットワークのセキュリティ対策に係る基盤整備(推進枠):4.7億円

新専門医制度のスタート、特定看護師養成などにも注力

 また「質が高く効率的な医療提供体制の確保」として588億円が要求されており、ここでは次のような項目が盛り込まれました。

▼専門医に関する新たな仕組みの構築に向けた取り組み:4.8億円(新専門医制度の地域医療への影響をチェックする都道府県協議会の経費増、医師不足地域医療機関への指導医派遣経費など)

▼地域の医療政策を担う人材の育成:1400万円(地域における主体的な医療施策の企画立案能力の向上に向け、地域医療構想をはじめとする地域の医療施策や診療データ分析などに精通し、都道府県を支援できる専門家人材の育成)

▼特定行為に係る看護師の研修制度の推進(一部推進枠):4.3億円(指定研修機関の確保、研修修了者の計画的養成、指導者育成のための支援など)

▼在宅医療の推進:4300万円

▼人生の最終段階における医療の体制整備(一部推進枠):8300万円(人生の最終段階における医療に関する患者の相談に適切に対応できる医師・看護師の養成など)

▼在宅看取りに関する研修事業:2200万円(2016年6月に閣議決定された規制改革実施計画を踏まえた、「医師による死亡診断などに必要な情報」を報告する看護師を対象とした法医学研修などの実施支援)

▼医療安全の推進:11億円(医療事故調査・支援センターの運営に必要な経費などの支援)

▼救急医療体制の整備:4.2億円(救命救急センターなどへの財政支援)

▼小児・周産期医療体制の充実(一部推進枠):7.3億円(周産期母子医療センターのNICU・MFICUなどへの必要な支援、無産科2次医療圏などに新規開設する分娩取扱施設などへの施設・設備整備、産科医派遣費用の支援)

▼へき地保健医療対策の推進(一部推進枠):73億円(無医地区などから高度機能を有する医療機関への患者を長期輸送する航空機(メディカルジェット)運行経費や、へき地診療所への医師派遣経費の支援など)

▼災害医療体制の充実(一部推進枠):123億円(DMAT事務局体制の拡充や、JMATなど民間医療チーム養成の支援など)

 
 さらに「安心で質の高い介護サービスの高い介護サービスの確保」に向けては、次のような施策が行われます。

▼地域支援事業の推進:1569億円(高齢者の社会参加、介護予防に向けた取り組み、配食・見守りなどの生活支援体制の整備、在宅医療・介護連携、認知症高齢者への支援などを一体的に推進する)

▼介護・医療関連情報の「見える化」推進:3.1億円

▼自立支援・重度化防止に向けた科学的介護の実現に係る取り組みの推進(一部推進枠):5.6億円(「科学的に自立支援などの効果が裏付けられた介護」の実現に向け、システム開発経費を確保する)

 
 また「がん対策」として386億円が要求されており、具体的には▼がん予防180億円(個別のがん検診受診勧奨などの実施、子宮頸がん・乳がん検診の初年度対象者へのクーポン配布など)▼がん医療の充実179億円(がんゲノム医療中核拠点病院などの体制整備、希少がん中央機関への支援など)▼がんとの共生26億円(がん患者・経験者による相談支援の充実など)―が行われます。

 
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