有床診の減少続き、ベッド数は2019年末に9万床を切り、施設数は2020年3月に6500を割る勢い―医療施設動態調査(2019年9月)
2019.12.6.(金)
有床診療所の減少は依然としてハイスピードで続いており、現在のペースが続けば今年(2019年)12月末にベッド数が9万床を切り、来年(2020年)3月末に施設数は6500を割る—。
こうした状況が、厚生労働省が11月29日に公表した医療施設動態調査(2019年9月末概数)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
有床診の施設数、1か月当たり24施設強ペースで減少
厚労省は、毎月末の病院・診療所の施設数・病床数を「医療施設動態調査」として公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら)。
今年(2019年)9月末の状況を見ると、全国の医療施設は17万9442施設で、前月末から61施設増加しました。
うち病院の施設数は、前月末から8施設減少し8300施設となりました。病院種類別に見ると、▼一般病院:7246施設(前月から7施設減少)▼精神科病院:1054施設(同1施設減少)—などという状況です。一般病院のうち、「療養病床を有する病院」は3662施設で前月末から8施設減少、「地域医療支援病院」は617施設で前月末から変わりません。
地域医療支援病院に関しては、今夏(2019年8月)に厚労省の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」で承認要件の見直し内容が固められました。現在は、(1)紹介患者への医療提供(かかりつけ医への逆紹介も含む)(2)医療機器の共同利用(3)救急医療の提供(4)地域の医療従事者への研修の実施―という4つの役割・機能が求められ、それぞれが「承認要件」に落とし込まれています(すべての要件を満たさなければ地域医療支援病院として承認されない)。ここに「地域(都道府県)の判断で、医師の少ない地域への医師派遣実施などのプラスアルファ要件を追加(厳格化)できる」方向が固まっています。早ければ来年(2020年)にも医療法改正案が国会に上程され、改正法成立後には、地域医療支援病院数に大きな変化(減少)が生じる可能性もあります。
一方、診療所に関しては、医科診療所は10万2631施設で、前月末から80施設増加しています。無床の医科診療所が増加(前月末から98施設増加)を続ける一方で、有床診療所は前月末から18設減少し、6644施設となりました。
有床診療所の施設数は、2年前(2017年9月末)には7317(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2018年9月末)には6934(厚労省のサイトはこちら)であったので、2017年9月末から2018年9月末までの1年間で383施設減少、そこから今年(2019年)9月末までの1年間で290施設減少しています。有床診療所の施設数は、2018年9月末以降、次のように推移しています。
▼2018年9月末:6934施設
↓(25施設減)
▼2018年10月末:6909施設
↓(16施設減)
▼2018年11月末:6893施設
↓(26施設減)
▼2018年12月末:6867施設
↓(31施設減)
▼2019年1月末:6836施設
↓(30施設減)
▼2019年2月末:6806施設
↓(32施設減)
▼2019年3月末:6774施設
↓(44施設減)
▼2019年4月末:6730施設
↓(24施設減)
▼2019年5月末:6706施設
↓(9施設減)
▼2019年6月末:6697施設
↓(16施設減)
▼2019年7月末:6681施設
↓(19施設減)
▼2019年8月末:6662施設
↓(18施設減)
▼2018年9月末:6644施設
この1年間は、1か月当たり「24施設強」のペースで減少が続いています。現在のペースが続くと仮定すれば、来年(2020年)3月末に6500施設を割る計算です(先月までと同じペース)。
有床診のベッド数、1か月当たり336床弱のペースで減少
医療施設の病床数(ベッド数)を見てみましょう。医療施設全体のベッド数は、今年(2019年)9月末には162万97床で、前月末から2975床の大幅減少となりました。
このうち病院の病床数は152万9215床で、前月末から2732床減少。医療法上の病床種類別に見ると、▼一般病床:88万7847床(前月末から1098床減少)▼療養病床:30万8444床(同1183床減少)▼精神病床:32万6666床(同443床減少)—などとなっています。
また有床診療所の病床数は前月末から243床減少し、9万825床となりました。2年前(2017年9月末)には9万9531床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2018年9月末)には9万4853床(厚労省のサイトはこちら)であったので、2017年9月末から2018年9月末までの1年間で4678床減少、そこから今年(2019年)9月末までの1年間で4028床減少しています。2018年9月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。
▼2018年9月末:9万4853床
↓(352床減)
▼2018年10月末:9万4501床
↓(231床減)
▼2018年11月末:9万4270床
↓(374床減)
▼2018年12月末:9万3896床
↓(379床減)
▼2019年1月末:9万3517床
↓(448床減)
▼2019年2月末:9万3069床
↓(470床減)
▼2019年3月末:9万2599床
↓(669床減)
▼2019年4月末:9万1930床
↓(320床減)
▼2019年5月末:9万1610床
↓(112床減)
▼2019年6月末:9万1498床
↓(212床減)
▼2019年7月末:9万1286床
↓(218床減)
▼2019年8月末:9万1068床
↓(243床減)
▼2018年9月末:9万825床
この1年間では、1か月当たり「336床弱」のペースで減少が続いています。現在のペースが継続すると仮定すれば、今年末(2019年12月末)には9万床を切る計算です(先月までと同じペース)。
厚労省は、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定で、有床診療所を(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、後者の『地域包括ケア型』について「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」といった課題に直面していることを重視。有床診経営をサポートするために、次のような報酬見直しを行いました(関連記事はこちらとこちら)。
▼診療報酬での対応:介護サービスを提供する有床診では、高い入院基本料(入院基本料1-3)の要件を緩和し、さらに要介護者の受け入れを【介護連携加算】(新設、1日につき38点または192点)として評価する
▼介護報酬での対応:利用者専用病床を1床確保すれば、看護小規模多機能型居宅介護の「宿泊室」の設備基準を満たしているものとみなす
しかし、医療施設動態調査では、これらの効果については不明瞭です。2020年度の次期診療報酬改定に向けては、中央社会保険医療協議会において▼「有床診療所の機能やスタッフ配置状況などを勘案した評価(例えば加算の新設や拡充など)」を行う▼「急性期病棟からの転院患者受け入れを評価する初期加算」の引き上げ等を行う▼「他医療機関等の管理栄養士と連携した栄養指導」を評価する―などの方針が示されています。
山間地域や島しょ部などでは、地域包括ケアシステムの構成要素としてはもちろん、重要な「入院医療機関」として有床診が非常に重要です。その経営を下支えするために、2020年度の次期診療報酬改定の効果がどう出るのか、今後の状況を詳しく見ていく必要があります。
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