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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

2021年からのオンライン資格確認等システム、支払基金サイトへ登録し情報収集を—社保審・医療保険部会

2020.7.10.(金)

2022年から健康・医療・介護データを連結し、例えば救急病院で「意識不明で救急搬送された患者の過去の薬剤情報や手術歴、移植歴、透析の有無などを確認し、効果的・効率的で安全性の高い治療を実現できる」ような仕組みを稼働する—。

こうした仕組みは、2021年3月から稼働する「オンライン資格確認等システム」をベースとする。オンライン資格確認等システムを円滑に進めるために社会保険診療報酬支払基金の特設サイトに登録し、カードリーダーの申請や補助金情報の確認などを行ってほしい—。

7月9日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、厚生労働省からこうした依頼がなされました。

7月8日にオンライン形式で開催された「第129回 社会保障審議会 医療保険部会」

健康・医療・介護データ利活用のベースとなるオンライン資格確認等、専用サイトに登録を

Gem Medでお伝えしているとおり、「健康・医療・介護情報の利活用方針」が固められています。これに沿って、今夏(2020年夏)に「健康・医療・介護情報利活用の絵姿と工程表」が策定されることとなり、加藤勝信厚生労働大臣は6月22日の経済財政諮問会議で次のような考えを示しています。

EHR(全国の医療機関で、患者個々人の▼薬剤▼手術・移植▼透析―などの情報を確認できる仕組み)を構築し、2022年夏から運用する(例えば、意識不明の状態で救急搬送された患者、認知症高齢者などの治療を行う際、過去の薬剤や手術歴を正確に確認することで、適切かつ安全な医療を、効果的・効率的に提供することが可能となる(禁忌薬剤の回避など))

日本版EHRの概要(経済財政諮問会議2 200622)



電子処方箋を2020年夏から運用する(医療機関が処方内容を電子的に登録し、保険薬局がその登録情報を踏まえて調剤をする)

電子処方箋の概要(経済財政諮問会議3 200622)



PHR(国民1人1人が、自分自身の薬剤・健診情報を確認できる仕組み)について2021年に法整備を行い、2022年度早期から運用を開始する(個人の乳幼児健診・学校健診・職場健診・特定健診(メタボ健診)など生涯の情報を自分で確認し、生活習慣改善等の動機付けを期待する)

日本版PHRの概要(経済財政諮問会議4 200622)



こうした仕組みのベースとなるのが、来年(2021年)3月からスタートする「オンライン資格確認等システム」です。

「オンライン資格確認等システム」は、医療機関の窓口で「患者がどの医療保険に加入しているのか」を瞬時に確認することを目指すもので(退職等で失効した被保険者証(保険証)を使って医療機関を受診する人が少なくない)、詳細は医療保険部会で検討されてきました(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

その大枠は、▼患者がマイナンバーカードを医療機関窓口でカードリーダにかざす→▼社会保険診療報酬支払基金(支払基金)・国民健康保険中央会(国保中央会)のデータに「当該患者がどの医療保険(健康保険組合や国民健康保険など)に加入しているのか」を照会する—というものです。言わば、支払基金・国保中央会で、加入者個々人の「医療保険の加入履歴」(いつどの医療保険に加入し、現在、どの医療保険に加入しているのか)が確認できる仕組みが設けられるのです。

2021年3月からオンライン資格確認等システムが導入される(健康・医療・介護情報利活用検討会1 200615)

オンライン資格確認等システム等において、医療等情報の共有の可否を患者自身が決定する(健康・医療・介護情報利活用検討会2 200615)



このシステムを活用して、上述のEHR・PHR・電子処方箋の実現を目指しており、例えば電子処方箋では「医療機関がオンライン資格確認等システムの中で、薬剤情報と連携して、処方箋を登録する。調剤薬局で、オンライン資格確認等システムにアクセスし、登録された処方箋情報に沿って調剤を行う」という仕組みが検討されています。

このオンライン資格確認等システムは、来年(2021年)3月から稼働しはじめ(当初は6割の医療機関等でスタート)、2023年3月には、ほぼすべての国民・医療機関等で活用可能となる見込みです。

マイナンバーカードを読み取るカードリーダーをすべての医療機関・調剤薬局の窓口に設置することが必要となりますが、この点については「社会保険診療報酬支払基金で買い上げ、個別の医療機関・調剤薬局に配布する」ことになります。この配付を受けるには、支払基金の特設サイト(ポータルサイト)に登録する必要があり、厚労省保険局医療介護連携政策課の山下護課長は「すべての医療機関、調剤薬局に登録をお願いする。登録してもらえれば、カードリーダー配付(いくつかの機器の中から自院等にマッチしたものを選択する)はもちろん、補助金(オンライン資格確認のためのシステム改修費)情報等の提供、医療機関・薬局サイドからの情報収集が可能になる」と強調しています(関連記事はこちら)。

この点、秋山智弥委員(日本看護協会副会長)は「訪問看護ステーションについても、2022年3月からの全面運用に合わせて、オンライン資格確認等システムの対象に含めるべき」と提案、また佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は前回に続き「オンライン資格確認等システムの利活用を拡張するのであるから、費用負担の在り方も改めて検討すべき」と要請しています。



またPHRに関しては、すでに民間事業者のサービスが稼働しており、今後、ルール作りを急ぐべきとの声が出ており、医療保険部会では「利益の還元は国民に行うべき」との声が多数出ています。例えば石上千博委員(日本労働組合総連合会副事務局長)からは「民間PHRでは、利益がどこに生まれるのかが見えにくい。国民へのメリットを分かりやすく示すとともに、民間PHRへのデータ提供等は慎重に検討せよ」と主張。また松原謙二委員(日本医師会副会長)は「民間事業者の事業のために健康・予防・医療データを提供していく議論があるが、本来の趣旨と異なるのではないか。あくまで健康・医療・介護データの集約・連結は国民のために実施すべきである」と訴えています。

2020年末にかけ、後期高齢者の自己負担2割化、大病院の定額負担などを議論

また、7月9日の医療保険部会では、「今年末(2020年末)に向けて、今後の医療保険制度の課題を議論していく」方針が確認されました。

政府の全世代型社会保障検討会議の最終報告が年末となることを睨み、医療保険部会でも歩調を合わせる格好です。例えば、▼後期高齢者の自己負担(医療機関での窓口負担)2割化▼紹介状なし大病院の特別負担拡大▼かかりつけ医機能の推進▼保険者努力支援制度(都道府県・市町村による予防・健康づくり・医療費適正化に向けた取り組みを、その実施状況に応じて支援するし組む)の抜本的強化―などが主な検討テーマとなります。この点、安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「新型コロナウイルス感染症の第2波、第3波により今秋・冬に、また医療保険部会論議がストップすることも予想され、早急に議論を進めるべきである」と提案しました。

また、検討テーマの1つである「後期高齢者の自己負担2割化」について、佐野委員は、「新型コロナウイルス感染症の影響で、いわゆる2022年度問題(2022年度から団塊の世代が後期高齢者となりはじめ、医療費が急増していくと見られる)が前倒しになる可能性がある、後期高齢者の自己負担(医療機関の窓口負担)2割化を先送りすることは許されない」と強調。これに対し、松原委員(日本医師会副会長)は「新型コロナウイルス感染症に対する不安を多くの国民、高齢者が抱えている。後期高齢者が安心して医療機関にかかれるよう、『原則1割負担』を維持すべきである」と反論しています。

なお、全世代型社会保障検討会議では、6月25日の第2次中間報告において「不妊治療(体外受精、顕微授精)に要する費用を助成するとともに、適応症と効果が明らかな治療には広く医療保険の適用を検討し、支援を拡充する」考えを打ち出しました。この方針に対する明確な反論は7月9日の医療保険部会では出ていませんが、慎重な検討が求められます。

NDBデータの第三者提供拡大に向け、医療保険部会の下に専門委員会を設置

2019年の健康保険法等・社会福祉法(介護保険法含む)の改正では、▼NDB(National Data Base:医療レセプトと特定健康診査データを格納)と介護DB(介護保険総合データベース:介護レセプトと要介護認定データを格納)との連結を可能とする▼NDBデータ・介護DBデータ・連結データについて、公益性の高い研究目的のために提供可能とする旨を明確化する—といった見直しが行われました。健康・医療・介護データを個人単位で連結解析することで、医療・介護サービス等の質を飛躍的に向上させることを目指すものです。

NDB・介護DBのデータは、従前から「公益性の高い研究」のために第三者提供することが可能ですが、▼法令上の規定は明確でなく、ガイドラインで運用されている▼第三者が国や大学研究者等に限られている—という問題点がありました。それを今般の法改正で、▼第三者提供を法令で明確化する▼第三者に民間事業者も含める(ただし公益目的での研究に限定)―という見直しが行われています(関連記事はこちらこちらこちら)。

この見直しを受け、医療保険部会は、下部組織として専門委員会(匿名レセプト情報等の提供に関する専門委員会)を設置することを7月9日の会合で了承。そこでは、▼第三者提供ルール(ガイドライン)の設定▼実際に第三者からデータ提供申請があった場合の、可否の審査—を行うことになります。

委員からは「専門委員会の審議内容について、可能な限り透明性を確保すべき」との意見が出されています。もっとも、個々の研究者における「研究の着想」を保護する必要もあり、個別審査については非公開で行われることになります。

なお介護DBデータ提供に関しては、別途、社会保障審議会・介護保険部会の下に専門委員会が設置され、そこでガイドライン策定・個別審査が行われます。さらに、NDB・介護DBの連結データ提供に関しては、両専門委員会(医療保険部会の下部組織である専門委員会と、介護保険部会の下部組織である専門委員会)が合同で審査等を行うことになります。

NDBデータ・介護DBデータ・連結データの提供の流れ(医療保険部会 200709)

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