2021年3月からのオンライン資格確認に向け、ポータルサイトで医療情報化支援基金等の受け付け開始へ—厚労省
2020.6.25.(木)
2021年3月からスタートするオンライン資格確認等システムに向けて、医療機関や薬局の受付窓口に「顔認証付きカードリーダー」を設置することになる。カードリーダーは社会保険診療報酬支払基金に申し込むことで配布される(「医療情報化支援基金」から費用補助がなされ、医療機関の負担は生じない)こととなり、その申し込み等のためのポータルサイトが7月に開設される—。
また、オンライン資格確認に伴う医療機関のシステム改修についても、医療情報化支援基金で費用補助が行われる—。
厚生労働省は6月23日に事務連絡「医療情報化支援基金に関するポータルサイト開設のお知らせについて」を発出し、こうした点について情報提供を行いました。
マイナンバーカードなどを活用したオンライン資格確認を2021年3月からスタート
Gem Medでお伝えしているとおり、2021年3月から「オンライン資格確認等システム」が稼働します。
医療保険制度は、病気やケガといった保険事故に備えて加入者(被保険者)が保険料を納め、事故に遭遇した際に、保険から給付(年齢や所得に応じて医療費の7-9割を給付、さらに高額療養費制度などによる手厚い給付も行われる)が行われる仕組みです。
保険医療機関等では、治療等を行った患者本人に医療費の1-3割の支払いを求め(窓口負担)、残りの7-9割を患者が加入している医療保険に請求します(ただし事務の効率化や審査の整合性を確保するために、社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会に請求する)。このため、医療機関の窓口で「患者がどの医療保険に加入しているのか」を被保険者証(保険証)で確認することが極めて重要となるのです(資格確認)。
ところで、例えば「企業で働いていたサラリーマンが、退職後にも在職中の被保険者証(保険証)を返還せずに使用して診療を受ける」という事例が少なからずあります(1か月当たり30-40万件)。この場合、医療機関はその被保険者証を発行した保険者(健康保険組合や協会けんぽなど)に請求を行いますが、その人は既にその医療保険から脱退しているため、「医療機関への支払いが行われない」あるいは「保険者が退職者分(その人は保険料を支払っていない)の医療費を負担する」という不合理が生じてしまいます。
こうした不合理を解消するため、厚生労働省はマイナンバー制度のインフラを活用した「オンライン資格確認等」システムを2021年3月から導入します。支払基金・国民健康保険中央会(国保連の中央組織)で全国民の資格履歴を一元的に管理し、医療機関が、患者の提示したマイナンバーカードや被保険者証をもとに、窓口で即時に「患者がどの医療保険に加入しているか」などを即時に確認できる仕組みを構築するものです。政府は、▼2021年3月末には6割の医療機関等で▼2022年3月末には9割の医療機関で▼2023年3月末にはほぼすべての医療機関で―オンライン資格確認が実施可能な体制を整備する予定を組んでおり、この予定には新型コロナウイルス感染症の影響が生じない見込みです。
医療機関の窓口では、患者の提示したマイナンバーカードのICチップをカードリーダーで読み取り、オンラインを通じて「この患者がどの医療保険に加入しているのか」を確認することになります(被保険者証に記載される個人単位の被保険者番号を入力して、確認する方法も併存する)。患者が「医療保険に加入していない」ことが分かった場合には、医療機関は患者に医療費全額を請求する(患者側からすれば10割負担となる)ことになります。
このためには、各医療機関に「顔認証付きカードリーダー」と「資格確認端末」が設置されていなければなりません。この点、厚労省は昨年度(2019年度)予算で公費300億円規模を投じた「医療情報化支援基金」を設置し、こうした機器設置費用を補助する仕組みを整備(2020年度予算では国費768億円を積み増し)。さらに、2019年12月25日に開催された社会保障審議会・医療保険部会では、効率性を考慮し「社会保険診療報酬支払基金が一括して機器を購入し、それを個別医療機関に配付する」(個別医療機関がそれぞれ機器を購入し、それを補助するのではない)形が決定されました(関連記事はこちら)。
今般の事務連絡では、この「医療情報化支援基金」の詳細をポータルサイトが7月に開設され、▼顔認証付きカードリーダーの申し込み▼オンライン資格確認の利用申請▼医療情報化支援基金の補助申請―の受け付けがスタートすることが明らかにされました。ポータルサイトに登録(アカウント登録)を行うことで、カードリーダーの申し込み等が可能となります。またオンライン資格確認を医療機関で行うためのシステム改修費用についても「医療情報化支援基金」から補助が行われ、詳細はポータルサイドでも明確に説明されます。
◆社会保険診療報酬支払基金の「医療機関等向けポータルサイト」(※本記事掲載時点では未開設)
なお、医療情報化支援基金では「標準化された電子カルテシステムの導入補助」も行われます。現在、厚労省で「電子カルテの標準仕様」(コア部分の標準化、それ以外はベンダーによる独自開発が可能となる見込み)の検討が進んでおり、近い将来、こちらの補助金にも注目が集まることでしょう。どういった形で補助が行われるのか、どのような内容の補助が行われるのかなどは現時点では未定ですが、情報収集に向けたアンテナを高めるためにも、上記のポータルサイトで情報収集を行うことが重要となってくるでしょう(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
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