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介護医療院の転換促進のために、【移行定着支援加算】を2021年度以降も「延長」すべきか―社保審・介護給付費分科会(1)

2020.8.27.(木)

2023年度末移行は存続できなくなる介護療養型医療施設(介護療養)だが、3割は「将来は未定」とし、1割強がなぜか「介護療養にとどまる」と考えている―。

介護療養などの新たな転換先として、▼介護▼医療▼住まい―の3機能を併せ持つ「介護医療院」が創設され、転換促進のために【移行定着支援加算】が設けられている。この加算は2021年3月末で切れるが、延長すべきだろうか―。

また介護医療院は生活施設であることから、介護療養に比べて「プライバシー確保」や「排泄・食事の自立支援」に力を入れているが、これらを介護報酬の中でどう評価すべきだろうか―。

8月27日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、こういった議論が行われました。

介護医療院への転換促進、2021年3月末で切れる【移行定着支援加算】を延長すべきか

2021年度の次期介護報酬改定(3年に一度)に向けて、介護給付費分科会では精力的に議論を進めています。まず、横断的事項として▼地域包括ケアシステムの推進▼⾃⽴⽀援・重度化防⽌の推進▼介護⼈材の確保・介護現場の⾰新▼制度の安定性・持続可能性の確保▼新型コロナウイルス感染症をはじめとする「感染症対策・災害対策」―が重要ポイントとなることを確認(関連記事はこちらこちらこちら)。

その後、個別サービスに関する議論に入り、7月8日には地域密着型サービス(関連記事はこちらこちら)、同20日には通所系・短期入所系サービス(関連記事はこちらこちら)、8月19日には訪問系サービス(関連記事はこちらこちら)、について現状と課題の整理を行いました。

さらに8月27日には施設系サービス(▼介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)▼介護老人保健施設▼介護医療院▼介護療養型医療施設―)を議題としており、本稿では介護医療院と介護療養に焦点を合わせてみましょう。介護老人福祉施設・介護老人保健施設に関する論議は別稿でお伝えします。



介護医療院は、設置根拠が切れる「介護療養」や「4対1以上の看護配置を満たせない医療療養」の転換先候補の1つとして、2017年の介護保険法改正で創設され、2018年度の介護報酬改定で単位数や人員配置基準等の設定が行われました。▼介護▼医療▼住まい―の3機能をあわせもち、医療ニーズの高い重度の要介護者を受け入れる施設として大きな期待を集めています。

介護医療院の基本報酬と各種加算(介護給付費分科会(1)3 200827)

介護医療院の人員等基準、介護療養並みのI型と、転換老健並みのII型がある(介護給付費分科会(1)4 200827)



開設(転換・新設)状況を見ると、今年(2020年)6月末時点で515施設・3万2634床に増加し、また開設スピードが加速していることが分かります。

介護医療院の開設状況(2020年6月末)(介護給付費分科会(1)5 200827)



ただし、整備量は必ずしも十分ではなく、また「介護医療院への転換を躊躇している介護療養」なども少なくありません。介護療養については2023年度末で設置根拠が切れます(つまり存続できなくなる)が、28.9%は「未定」と答え、また12.2%は、なぜか「介護療養にとどまる」と答えています(介護療養は存続できなくなるため、とどまることは不可能である)。後者については「存続できなくなる」ことを知らないのか、あるいは「踏みとどまっていれば経過措置が延長される」と考えているのか不明ですが、いずれにせよ「介護医療院等への転換」を促進していく必要があり、厚生労働省老健局老人保健課の眞鍋馨課長もこの点を重要論点の1つに掲げています。

介護療養の転換意向(未定が3割、介護療養にとどまるとの声も1割強ある)(介護給付費分科会(1)1 200827)

医療療養の転換意向(介護医療院への転換は少数派)(介護給付費分科会(1)2 200827)



介護医療院への転換促進策としては、2018年度の介護報酬改定で創設された【移行定着支援加算】の行方が注目されます。介護療養や医療療養などから転換した介護医療院では、最初に転換した日から起算して1年間に限り、加算(1日につき93単位)を算定できることとし、かつ早期の転換を促すために算定期限を「2021年3月末まで」としています。したがって、【移行定着支援加算】をフル(1年間)取得するためには、2020年4月1日までに転換を完了させることが必要で、これが上述した「開設スピードの加速化」につながっていると見られます(逆に言えば、今後、特段の措置がなければ、開設スピードが上がることはない)。

2018年度改定で創設された介護医療院における【移行定着支援加算】(介護給付費分科会(1)6 200827)



この【移行定着支援加算】については「2021年度以降も延長・継続してほしい」と求める声が少なくありません。8月27日の介護給付費分科会でも、大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長、香川県高松市長)を始め自治体サイドから「延長」を求める声が強く出されています。介護医療院への転換インセンティブが消滅した場合には、整備が遅々として進まなくなるのではないか、と心配する声と言えるでしょう(関連記事はこちらこちら)。

ただし、【移行定着支援加算】を延長した場合、「延長されるのであれば早期に転換するまでもない。ゆっくり、じっくりと考えよう」となることも予想されます。井上隆委員(日本経済団体連合会常務理事)は「期限を切ってこそ、早期の転換促進効果がある」と述べ、予定通りの打ち切り(2021年3月末まで)とすべきとの考えを示しています。

他方、【移行定着支援加算】の趣旨に対する疑問の声も出ています。介護報酬は「サービスに対する費用」であり、良質であれば高い報酬が、質が伴わなければ相応の報酬が設定されます。しかし、【移行定着支援加算】はサービスの内容・質とは無関係であり、「移行促進のインセンティブを利用者負担に結びつけることはいかがなものか」との声が、河本滋史委員(健康保険組合連合会理事)や伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)から出されています。もちろん河本委員・伊藤委員ともに「介護医療院への転換促進」の必要性・重要性を指摘していますが、「利用者負担増につながる加算で行う」ことへの疑問を呈していると考えられます。

今後の第2ラウンドで、【移行定着支援加算】を延長すべきなのか、仮に延長するとしてどのような仕組みとすべきなのかが議論されることになります。

医療療養から介護医療院への転換、市町村代表は「実質的な財政措置」(=補助)を要請

介護医療院には、上述のように「看護配置4対1を満たさない医療療養」からの転換も期待されており、「総量規制」の対象外とされています。

ただし、医療療養から介護医療院への転換に関しては、小規模な自治体(町村)では、「医療保険財源を使う医療療養」から「介護保険財源を使う介護医療院」への転換によって、▼介護費の急増 → ▼介護保険料の高騰―につながってしまうため、「転換に極めて後ろ向きである」と指摘されています。

この点、社会保険全体で見れば費用が適正化されること、介護医療院は広域から入所するためにダイレクトに介護保険料増にはつながらないことなどを厚労省が丁寧に説明しています。併せて、7月27日に開催された社会保障審議会・介護保険部会において「医療療養から介護医療院への転換に伴って、介護費の増加→保険料の急騰が生じることを避けるために、『財政安定化基金の貸付』返済期間を9年間に延長し、保険者サイドのハードルを低くする」方針が固められました。

財政安定化基金からの貸付に対する返済について、特例的に9年間に延長する(介護保険部会2 200727)



ただし、8月27日の介護給付費分科会では、大西委員や椎木巧委員(全国町村会副会長、山口県周防大島町長)といった介護保険者(市町村)代表委員から「より実効性のある財政措置」を求める声が出ています。介護保険料の高騰を抑えるための補助等を求めるものと考えられ、介護給付費分科会ではなく、介護保険部会等で議論すべき事項ですが、今後、どのように議論が進むのか注目が集まりそうです。

なお、関連して武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、「介護医療院は、医師・看護師が配置された『看取り対応が可能な新たな介護保険施設』であり、10万床、少なくとも6万5000床程度(現在の2倍)の整備が必要と考える。しかし、十分に整備が進んでいるとは言えない。新型コロナウイルス感染症の影響で一般病棟のベッドが4割程度、空床になっていると聞く。一般病棟から介護医療院への転換を正面から認め、支援してはどうか」との考えを述べています。

介護医療院の「プライバシー確保」や「排泄・食事の自立支援」機能をどう評価すべきか

介護医療院は、前述のとおり▼介護▼医療▼住まい―の3機能を併せ持つ「生活施設」と定義されています。このため、介護療養などに比べて「プライバシーの確保」「排泄・食事の自立に向けた支援の強化」「地域貢献活動(地域のボランティア活動など)への参画」などにより積極的に取り組んでいる状況が伺えます。

生活施設である介護医療院における工夫(1、排泄・食事自立支援の強化)(介護給付費分科会(1)7 200827)

生活施設である介護医療院における工夫(2、プライバシー確保)(介護給付費分科会(1)8 200827)

生活施設である介護医療院における工夫(3、地域貢献活動の実施)(介護給付費分科会(1)9 200827)



眞鍋老人保健課長は、こうした点を介護報酬でどのように評価するのかも重要論点の1つに掲げています。



なお、介護療養に関しては、「介護医療院等への転換促進」が最重要論点と言えます。上述のとおり「将来を決めかねている」施設も少なくないためです。

この点について眞鍋老人保健課長は、「2020年度診療報酬改定における医療療養の評価見直しを踏まえ、介護療養の評価をどのように考えるべきか」との論点を掲げています。これは「介護療養の単位数を引き下げ、介護医療院などへの転換を促していく」方向と読むことができるでしょう。2023年3月までには、介護医療院をはじめとする他の介護保険施設や、医療保険の適用病床(医療療養や地域保活ケア病棟など)への転換をしなければなりません。介護療養にとどまり様子見をするメリットはないと考えるべきでしょう。河本委員も「適正化」、つまり報酬の引き下げを強く求めています。

ぽんすけ2020 MW_GHC_logo

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