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介護分野の用語標準化を進めよ、兵庫県の「巨大な県立病院」創設を牽制―医療介護総合確保促進会議

2020.11.16.(月)

医療・介護連携が重要性を増す中で、医療・介護の情報連携が必要不可欠である。ただし、介護分野では、同じ用語を使っていても、異なる内容を指していることが少なくない。まず介護分野で「用語の統一・標準化」を早急に進め、次のステップとして情報連携・共有を考える必要があるのではないか―。

兵庫県では「巨大な県立病院」の創設が進んでいるが、民間病院経営を圧迫していないか確認する必要がある—。

地域医療介護総合確保基金について、介護分野では「施設整備」よりも「人材確保」に重点的な財源配分を行うべきである―。

11月11日に開催された「医療介護総合確保促進会議」(以下、促進会議)で、こういった議論が行われました。

11月11日に開催された「第14回 医療介護総合確保促進会議」

医療介護情報連携に向けて、まず介護分野で「用語の統一・標準化」を進めよ

我が国では、公的医療保険制度・公的介護保険制度が整備されていることから、「質・制度が高く、かつ全人口のほぼすべてをカバーする量の健康・医療・介護データ」が存在します(例えばレセプトデータ)。これらのデータを有機的に結合し、分析することで、健康・医療・介護サービスの質を高めるとともに、かつ効率的な提供も可能になると考えられます。例えば、「Xという遺伝子に変異のあるがん患者にはA抗がん剤は効果的だが、B抗がん剤は効果が低い」という情報が広範に分かってくれば、患者の遺伝子変異に応じた効果の高い抗がん剤のみを投与することが可能になります。効果の低い抗がん剤投与による患者の身体的・経済的負担をなくすことができるとともに、保険財政の健全化にも役立ちます。

医療分野については、加藤勝信前厚生労働大臣が(1)EHR(全国の医療機関で、患者個々人の▼薬剤▼手術・移植▼透析―などの情報を確認できる仕組み)を構築し、2022年夏から運用する(2)(2)電子処方箋を2020年夏から運用する(3)PHR(国民1人1人が、自分自身の薬剤・健診情報を確認できる仕組み)について2021年に法整備を行い、2022年度早期から運用を開始する―方針を明確化。制度の詳細を詰める議論が、厚生労働省の検討会やワーキングで進められています(関連記事はこちらこちらこちら)。

EHRの仕組み(データヘルス改革推進本部2 200730)



一方、介護分野ではこうした取り組みが遅れており、「介護サービスの質を高める」ことや、「医療・介護分野でデータの連携・共用を進める」ことが難しいのが実際です。

そこで厚労省保険局医療介護連携政策課の山下護課長は、11月11日の促進会議で、▼患者・介護サービス利用者と、医療や介護に関わる者の間における情報共有をどう考えるか▼医療サービス提供者にとって、介護のどのような情報が必要か。介護サービス提供者にとって、医療のどのような情報が必要か▼患者・利用者が受けているサービス情報をどのように収集・管理し、関係者間で共有すべきか―という論点を議論するよう要請しました。

このうち介護サイドが欲する「医療情報」としては、▼介護的ケアにつながる情報(例えば骨折で入院した後に、回復期等にどのようなリハビリが行われたのか、維持期・生活期にはどのようなリハビリが好ましいか、など)▼患者の状態に関する情報(例えば、「この患者の状態はこのような経過をたどって衰えていく」「この薬剤の投与で、心身にこうした変化が出る可能性が高い」など)―などが要望されています。

こうした情報を、介護サイドが容易く入手できるようになれば介護サービスの質が格段に向上すると期待されます。例えば、将来的には、上述の「EHR」のような仕組みを介護事業所も含めて構築することが必要になるかもしれません。

もっとも、そこでは2つの点を考慮しなければなりません。

まず第1の論点として「EHRのような、全国規模の情報連携ネットワークを構築する必要があるかどうか」が浮上しました。

医療に関しては、例えば東京都に居住する人が、出張や旅行先で事故に会ったり、急病になったりして救急搬送された際に、搬送先の医療機関で「当該患者の過去の診療歴」が明らかになれば、効果的・効率的な診療を行うことが期待できます。また、疾病をかかえる人が、引っ越しなどをした際に、移転先で「過去の診療情報」を踏まえた継続した診療を受けるといったメリットなども考えられます。

一方、介護では、基本的に「1つの市町村内でサービスが完結」します(例えば「旅行先で、その土地の訪問看護サービスを利用する」ことなどは通常想定されない)。したがって、限られたエリアの中でサービス提供をする介護事業所・施設、加えて医療機関等で情報を共有できれば事足りるのではないか、とも考えられるのです。この場合、全国規模の情報連携ネットワークは、「極めてコストパフォーマンスの悪いお荷物」になってしまう可能性もあります。

まず、このように「全国規模の情報連携ネットワークの必要性」を十分に検討する必要がある旨の意見が促進会議では多数出されました。



また2つ目に、「用語などの統一化、標準化を進める必要があるのではないか」という論点も浮上しています。これは、上記の「全国規模の情報連携ネットワーク」ではもちろんですが、「地域の介護事業所・施設との連携」「医療分野との連携」においても不可欠な要素であり、「検討すべき」ではなく「実行すべき」フェイズに入っていると言えそうです。

例えば、現在、来年度(2021年度)の介護報酬改定に向けた議論が社会保障審議会・介護給付費分科会で進んでいますが、そこでは「褥瘡」について、「真皮までの損傷」と考える介護施設もあれば、「持続する発赤」で良いと考える介護施設も、また「皮下組織までの損傷」が必要であると厳格に考える介護施設もあることが分かりました。

褥瘡の捉え方1つをとっても、介護事業所・施設で大きく異なる(介護給付費分科会 201105)



このように介護事業所・施設によって、同じ「用語」でも、想定している状態やサービス内容が相当程度異なっている実態があるのです。これでは介護事業所・施設間の情報連携が難しいことはもちろん、医療機関との情報連携は不可能に近いでしょう。このため、まず「用語の統一・標準化」を進める必要があることが促進会議の共通認識になったと言えます。

さらに、「医療で一般に使われる用語」について、介護サイド向けの「翻訳」が必要であるとの指摘も山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)から出されています。例えば、医薬品1つをとっても、膨大な種類・銘柄があるだけでなく、医療機関によって「製品名」を使う場合もあれば、「成分名・一般名」を使うこともあります。同じ医薬品であっても介護サイドが「異なる医薬品のことをさしているのではない」と誤解するケースもあることでしょう。

また、介護サイドでは「ICTを使って情報連携できる」人がいる一方で、「ICTを使いこなすことが難しい」人も決して少数派ではありません。齋藤訓子構成員(日本看護協会副会長)は「情報の連携・共有に向けた教育」の重要性を強調しています。

なお、介護分野においても情報連携・共有の取り組みは始まっています。すでに▼介護DB(介護保険総合データベース、要介護認定・介護レセプト情報を格納)▼VISIT(リハビリデータを格納)▼CHASE(状態・ケアに関するデータを格納)―が構築・稼働し、データ入力やデータ活用を促すための介護報酬上のインセンティブ付与(リハビリテーションマネジメント加算(IV)など)も行われています。

しかし、介護現場からは「データベース入力の手間・負担が大きい」との指摘もあり、安藤伸樹構成員(全国健康保険協会理事長)や佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)らは「負担軽減」を進めるよう要請しています。



このように介護分野の情報連携・共有を進めるためには、医療分野とは異なる視点での検討が必要となります。もっとも「情報連携・共有」の重要性は誰もが認識しており、山下医療介護連携政策課長は「まず用語等の標準化を進め、そこから共有・連携を考えていくことになるのではないか」との考えを示しています。

兵庫県における「巨大県立病院」創設の動きに、構成員が「待った」

2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となるため、今後、医療・介護ニーズが飛躍的に増加し、また医療・介護双方の複合的なニーズを抱える高齢者の増加が予想されます。このため、2014年度から各都道府県に「地域医療介護総合確保基金」(以下、総合確保基金)が設置され、(1)地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設・設備整備(2)居宅等における医療提供(3)介護施設等の整備(地域密着型サービス等)(4)医療従事者の確保(5)介護従事者の確保—の5つの事業を活性化させていくことが求められています。

11月11日の促進会議には、基金の▼2019年度における執行状況▼2020年度における内示状況―などが報告されました。

この点、加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)は兵庫県の基金執行状況に注目。そこでは主に、県立の「姫路循環器病センター」と民間の「製鉄記念広畑病院」とを再編・統合した新病院「県立はりま姫路総合医療センター(仮称)」の創設に向けた整備等に充てられているといいます。

病院を再編・統合し、機能分化・機能集約・連携体制の強化を図ることは「効果的かつ効率的な地域医療提供体制の構築」に繋がるもので、兵庫県ではこうした取り組みを積極的に進めています。しかし、民間病院との意思疎通が必ずしも十分に進んでいない可能性があるようです。加納構成員は「莫大な公費を投入して巨大な県立病院を作る。しかも病床数の削減はほとんど行われない。これまで地域医療を守ってきた民間病院の努力を無にするものである」旨を強調。厚労省も兵庫県に状況を確認することを約束しています。

地域によって、医療資源の状況や地理的状況、人口構造・疾病構造が大きく異なることから、医療提供体制の再構築は「地域の状況を踏まえて実施する」ことが求められています。そこでは、上述のように「効果的かつ効率的な地域医療提供体制の構築」が求められて、病院の再編・統合は一般的に「その方向に合致する」ものと言えます。もっとも、地域医療の関係者が膝を突き合わせて議論し、「当該地域に最適な医療提供体制」を探っていくことが重要であることは、ここで述べるまでもありません。

介護人材の確保に財源を多く配分せよ、人材紹介会社の活用は好ましくない

また、介護分については「人材確保が急務であり、施設整備よりも人材確保に財源を手厚く配分すべきである。いかに施設を整備しても、人材が確保できなければ稼働できない」旨が東憲太郎構成員(全国老人保健施設協会会長)や安藤構成員から強く訴えられました。

2019年度の執行状況を見ると、全国ベースでは8割弱が施設整備に、2割強が人材確保に充てられていますが、東構成員は「逆の割合でも良いくらいである」と指摘しています。今後の各都道府県の取り組みが注目されます。

2019年度における地域医療介護総合確保基金(介護分)の交付状況(医療介護総合確保促進会議 201111)



なお、人材確保に関連して「人材紹介社会の活用をどう考えるか」という議論も行われました。地域によっては独自の人材確保が困難なために紹介会社を活用するケースもあるようですが、安藤構成員は「医療・介護ともに紹介会社の活用は好ましくない。その旨を明確にすべき」と強く要請しています。



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